2024年04月17日

No.1740 株主判明調査をやってどうするのか?という話

みなさん、株主判明調査をやってますか?最近は多くの会社がやっているのかもしれませんが、こんな無料で閲覧できるサイトがあるのをご存じですか?そして株主判明調査をやった結果、みなさん、どうでしたか?

https://app.tikr.com/markets?fid=1

「おかげでアクティビストに株を買われていることが分かって助かったよ~」っていう会社、ありますか?ないでしょ?株主判明調査って、いったいいくらかかっているんですか?数百万円かかってますよね?本当にその価値、ありますか?別に業者のビジネスのジャマをしたくてこのコラムを書いている訳ではありません。上場会社のみなさん、そのお金、誰のお金ですか?という話です。

株主判明調査の結果、アクティビストの存在がわかって、適切な対応をして助かったという会社に私は出会ったことがありません。そして株主判明調査をやっておいて本当によかったよ、とおっしゃる会社にもです。そんな発言を聞いたことがないのです。でもどうしてみなさんは株主判明調査をやっているのでしょうか?それは・・・

「念のため」と「みんなやっているから」でしょう。失礼な言い方ですみません。でもこれ、真実だと思うんですよ。みんな株主判明調査をやっているけど、やっておいてよかったよねえ、っていうシチュエーションを経験したことがないはずです。というか、株主判明調査をやっていたけど、オアシスや旧村上ファンドに買われていたけどわからなかった、という会社の方が多いのでは?旧村上ファンドはわかりようがありません。株主名簿をしめてみてわかるか、大量保有報告書を提出されるか、向こうから面談依頼がないとわかりません。オアシスも香港の投資家なので(たぶん)わかりません。

上記は経済産業省の「諸外国における実質株主の開示制度」です。どこかの会社に調べさせたものだと思います。これ、ネットで検索しても出てきません・・・。一応、PDFは手元にあります。

これを見てもわかる通り、一定規模以上の機関投資家しかわからないし、米国外はわかりません。ただ、例えば大日本印刷などは「あかん!エリオットにもたれとるやないかい!」ってわかったかもしれませんが、実際にはエリオットから「IR面談してもらえますか?」っていう連絡がきて「え?エリオット、うちの株持っているの?」っていう形で判明したのでは?だいたいアクティビストって株主判明調査で存在がわかるのではなく、向こうから「面談してほしい」という連絡が来て存在が発覚するパターンが多いと思いますよ。

で、ここからが大切なことで・・・「アクティビストの存在がわかったからといって何かしますか?」という話です。大日本印刷は対応策を練って結果大規模株主還元を選択したのかもしれませんが、大半の会社は「とりあえず様子を見よう」という選択をするでしょう(もちろんちゃんと対応している会社も私は知っています)。そして大半の会社は「どうか買い増しをしませんように!」とお祈りするだけでしょう。

大方の上場会社のコストのかけ方が、私は間違っているんじゃないのか?と思っています。結局、開示でアクティビストに保有されていることがわかるのは珍しく、通常、既述の通りアクティビストのほうから「面談したい」とアプローチしてくることが多いと思います。村上さんもそうです。別に彼らも株を買ったことを隠しているわけではないです。突然登場する場合ももちろんあるでしょうが、まともに「お話を伺いたい」とアプローチしてきます。

ですから、わざわざ株主判明調査に多額のお金をかけることにどれほどの意味があるのか、と私は常々思うのです。ようはアクティビストの保有が「いつわかるか」だけの話であり、そしてわかるかどうかもあやしい、ということです。

ちなみに既述の無料サイトで大日本印刷を検索してみましたが、以下の通りエリオットの存在は把握できますね。登録すれば無料で閲覧できるのでデータの貼り付けはしません。

https://app.tikr.com/stock/ownership?cid=874054&tid=20216211&ref=s2ahcp

既述の通り、こういうサイトでアクティビストの存在が判明する前にアプローチされていることが多いと思います。

私は「株主のお金なんだから大事に使え!」と言っているわけではなく、そのお金は株主や従業員、役員が一生懸命大切にためてきたお金なのでしょう。だからちゃんと効果を考えたうえで使う必要があるんじゃないか?と言っています。

僭越ながらそのお金、当社に使っていただいて平時からのトレーニングをしたほうがだいぶ効果的だと思っております。

 

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