2021年03月23日

機関投資家の皆さんに誤解してほしくないことは

買収防衛策を導入している日本企業のほとんどは「買収防衛策を発動することはまずない」と考えているということです。当然ですが、企業価値・株主利益を毀損するような買収提案、買収者に対しては発動しますが、そういった露骨な買収提案や買収者は現実的にはそう多くありません。まあ、いることはいますし、私も「こういう買収者には発動を視野に入れるべき」とアドバイスします。

最近、日邦産業と日本アジアグループが買収防衛策の発動を決議しました。日邦産業が発動するのはよくわかります。だって明確なルール違反ですから。フリージアマクロスが「オレたちを狙い撃ちにした買収防衛策だ!」と言っていますが、日邦産業が買収防衛策を導入した時点におけるフリージアマクロスの保有割合は11%です。トリガーである20%までまだ9%ほど余裕があります。あの時点でフリージアマクロスを狙い撃ちにしたわけではありません。

日本アジアグループについては・・・ちょっとどうかとは思います。600円でMBOをしようとしながら、旧村上ファンドが登場したらTOB価格を倍の1,200円に引き上げました。会社の内部情報を最も知っている経営者が当初は600円で株主から株を買い取ろうとしたわけですよね?そして旧村上ファンドが登場したらなぜTOB価格を倍の1,200円にするのか?あきらかに当初TOBは株主から不当に安く買いたたこうとしていたということではないでしょうか?だからMBOってイヤなんですよねえ。

そして特別配当で旧村上ファンドの敵対的TOBをしのいだと思ったら、「旧村上ファンドがまたTOBをしかけたり、市場で買い増したりする可能性が高いので、有事導入型の買収防衛策を導入しまーす!」って、どういうこと?と思います。

日本アジアグループはどうかと思うものの、日邦産業の行動は当たり前です。シナジーがあるのかどうかもわからないし、そもそもTOBで取得する株式は7%程度です。でもフリージアマクロスが27%もの株式を握ったら、役員を送り込んでくるかもしれないし、実質的に支配される可能性があります。ですから、株主、従業員、取引先、地域社会といったステークホルダーの利益を守るために、一度は廃止したけど、時間と情報を確保するための事前警告型ルールが必要と考えて再導入したのでしょう。非常にまっとうで勇気のある経営者だと思うし、正しい経営判断ではないでしょうか?

機関投資家の皆さんには、なぜ日本企業が買収防衛策を導入するのかをよく考えてほしいと思っています。そして日本企業は機関投資家に対してIR面談の場で、なぜ買収防衛策を導入し続けるのかを本音で説明すべきだと思います。まっとうな機関投資家や事業会社の敵対的TOBに対して、買収防衛策を発動したり、有事導入型の買収防衛策で対抗したりすることを日本企業の経営者は考えていないのです。

そもそも、島忠がニトリの敵対的TOBに対して有事導入型の買収防衛策で対抗しましたか?大戸屋はどうでしたか?デサントは?前田道路は?機関投資家の皆さんも普通に考えたら、日本企業が買収防衛策を導入する理由がわかると思います。そして日本企業がちゃんと説明したら機関投資家の皆さんはわかってくれると私は信じております。
 


 

 

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