2020年03月23日

買収防衛 問われる正当性

本日の日経13面に買収防衛、問われる正当性 対策後出し、投資家に賛否 資金流出で株主に不満もという記事があります。記事を抜粋しながらコメントします。

「こんなことがまかり通っていいのか。コーポレートガバナンス(企業統治)の根幹に関わる」。投資家の村上世彰氏は1月下旬、憤りを隠さなかった。村上氏の系列ファンドが東芝機械に発行済み株式の最大4割強を取得するTOB実施を通告した直後、東芝機械が条件次第で新株予約権を株主に無償で割り当てる対抗策を「事後的」に打ち出したからだ。

確かにおっしゃるとおりです。平時の事前警告型買収防衛策を廃止した会社が突如、村上さんたちを対象にした買収防衛策を導入し、発動すると主張しているのですから。ただ、こんなことがまかり通ってもよいと思われます。東芝機械が今回の買収防衛策を発動せず、村上さんたちによるTOBの条件交渉に使うのだとしたら、です。現在村上さんたちは東芝機械株を3,456円というBPSと同額で発行済みの4割強を買うとしています。見方によっては、BPSと同額という割安な価格で4割強しか買わないけど、実質的には東芝機械を支配することができます。例えば、TOB価格が安すぎるし、部分的買収だ!こんな条件で実質買収するというなら買収防衛策を発動するぞ!と脅し、村上さんたちにTOB価格や取得株数を引き上げさせることに買収防衛策を使うのであれば、まかり通ってもいいのではないかと思われます。

防衛策の内容はTOBの60営業日前に趣旨説明書を公開した上で総会を開くなどのルールを守らない場合、発動して持ち分を薄めるというものだ。村上氏側はルールは東芝機械が独自に定めたもので投資家側が従う必要はないと批判している。

確かに東芝機械が勝手に決めたルールなので従う必要はないですが、発動される可能性があります。その場合、発行差止請求をして裁判所がどう判断するかはわかりません。

防衛策は27日の臨時株主総会で諮られる。可決の要件は過半数だ。村上氏側は可決されても賛成比率が3分の2未満なら有効性を裁判で争うとしていたが、9日になって方針を転換。可決されれば、TOBを撤回する可能性を表明した。

やはり可決されたら裁判にはならないのですかね。争ってヘタに村上さんたちに不利な決定が出たら、今後の投資活動に悪影響が出るからでしょうか?それとも裁判対応をするコストがもったいないと考えているのでしょうか?それとも昨今のコロナショックの影響で株価が大暴落しており、本音ではTOBを撤回したいと考えているからでしょうか?

市場関係者からは異論もある。東芝機械が事前警告型を廃止していた経緯もあり、取締役会での導入は「経営者の保身に見えやすいのは確か」(みずほ証券の菊地正俊氏)との声がある。

保身に見えやすいのかもしれませんが、東芝機械の経営陣は決して保身のために今回の買収防衛策導入・発動を決定したわけではないと思われます。保身のためにこんな複雑でわかりにくいこと、大々的に目立つことをしません。本当に保身を考えているのであれば、もっとわかりやすく、世間で目立たない方法を取ったでしょう。そんな方法はいくらでもあります。今回の東芝機械の判断は経営陣の保身ではなく、会社の中長期的な利益を確保、向上するためのものです。少なくとも東芝機械の経営陣はそう考えているはずです。外部からどう見えるかは別として。

総会で議決権を行使する運用会社は、防衛策を経営者の保身につながるとして原則反対と定めるところも多い。ただ事前警告型を想定したものが多く「有事導入は個別の判断」(国内運用大手)になるとみられる。

米議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は今回、東芝機械の防衛策に賛成を推奨した。ファンドによる部分買い付けという手法を問題視し、異例の判断となった。

事前警告型買収防衛策に対して反対するスタンスを機関投資家にはあらためていただいたほうがよいと思います。事前警告型買収防衛策を経営者は保身のために利用できません。保身を排除できる仕組みになっています。少なくとも事前警告型買収防衛策の導入を機関投資家は認めてあげたほうがよいと思います。そうしないと、東芝機械のような対応をする会社が今後増える可能性があります。

機関投資家と経営陣は相互にリスペクトしあう関係であってほしいと思います。機関投資家は経営陣に対して一方的な要求が多く、経営陣がなぜ持ち合いを継続するのか、事前警告型買収防衛策を導入するのかを本気で聞いてあげようというスタンスがないように思います。株主として経営陣に尊敬してもらいたかったら、きちんと経営陣の本音を聞いてあげてはどうでしょうか?買収防衛策はダメ!と杓子定規に決めるのではなく、経営陣が何を守りたいと考えているのか?この経営陣であれば保身に使わないのではないか?そういった本音の議論をしてあげてはどうでしょうか?

杓子定規に議決権行使ガイドラインで「買収防衛策はダメ!」って決めちゃったら、誰も皆さんと議論しなくなると思います。事前警告型買収防衛策で経営陣が保身をするのはムリなんです。「時間をかせぎまくって買収提案がなかったことにするんだろ?」 そんなことはできません。稼げる時間には実質的に限界があります。企業価値研究会だってむやみやたらと時間をかせぐなって言ってますよね?

米国では防衛策を取締役会決議で導入するのが一般的だ。これは話し合う時間を確保する意味合いが強く、実際に発動した事例はないとされる。

おそらくそうでしょうね。話し合うというよりは「交渉する」ためのツールかな、と。発動したケースもありませんね。クラウンゼラーバックという会社が発動しましたが、すぐに消却したと記憶しています。なにぶん古い話なので私もあまり覚えていません。

ただ、米国企業は本当に買収防衛策で守っていないのでしょうか?そんなことないと思いますよ。本当に会社を守るための、日本企業が導入している事前警告型買収防衛策よりも強力な買収防衛策を導入している会社が増えているのではないでしょうか?

のちほど!

 

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