2022年05月27日

なぜセントラル硝子は100億円の自社株買いを公表したのか?

さきほどアップした以下のニュースでも述べましたが、私は旧村上ファンドが出ていくことを確約していない状態でセントラル硝子が株主還元強化という対抗策を打ち出すことはないと考えていました。でもセントラル硝子は100億円の自社株買いを公表しました。自社株買いを公表したのは5月11日です。自社株買いだけではなく決算の内容なども好感されたのか株価は上昇しました。

旧村上ファンドが出ていくことを期待したのだろうと想像しますが、結果は逆のことが起きました。皆さんご存知のとおり、旧村上ファンドはセントラル硝子株を保有するシルチェスターから相対で株式を取得しました。取引があったのは5月20日(金)です。2,345,200株(5.46%)を市場外で2,620円/株で取得しました。4月15日に旧村上ファンドが提出した変更報告書によると保有割合は19.28%だったので、シルチェスターから相対で取得したことでおそらく25%くらい保有することになったと想定されます。

おそらく旧村上ファンドは本日5月27日(金)に変更報告書を提出するでしょう。たぶん16:00過ぎくらいに提出するでしょう。

どうしてセントラル硝子はこのような自社株買いを公表したのでしょうか?当然、旧村上ファンドが出て行ってくれるだろうと考えて最善の策を取ったのでしょうけど、売らないことも想定したはずです。でも「出て行ってくれるんじゃないか?」という期待が勝ってしまったのでしょう。ではどうして期待が勝ってしまったのでしょうか?

「出て行ったケースがあるんですよ!」とアドバイザーがアドバイスしたのではないかと私は想像します。ではその出て行ったケースとは?

マクセルHDです。旧村上ファンドに株式を取得されたマクセルHDは特別配当を出して対抗した結果、旧村上ファンドは株式を売却しました。このケースの詳細についてはここでの説明を省きますが(当HPでマクセルと検索していただくといくつか無料記事があると思います)、マクセルのときって旧村上ファンドはすんなりと出て行ったわけじゃないと思いますよ。いったん売却したけど、またちょっと買い戻したり、なぜかUBS証券がマクセル株を旧村上ファンドから買ったりと、外部から見ていると「なんでだろ?」と思う行動がいくつかありました。

なぜセントラル硝子がマクセルを参考にしたのではないかと私が考えた理由は、セントラル硝子とマクセルの四季報上の主幹事って日興さんなんですよね。あくまで私の想像にすぎませんが、マクセルのFAも日興さんで、セントラル硝子のFAも日興さんなのではないか、と。本当にあくまで想像です。

もちろんFAがセントラル硝子にどういうアドバイスをしているのか私にはわかりませんが、今回のケースを見るとマクセルを参考にしたんじゃないかと見えるのです。同じようなケースで三信電気もあったことは確認しなかったのだろうか。三信電気は一度目の自己株TOBで失敗しています。旧村上ファンドが売却するも出て行けず、再度買い増し、二度目の自己株TOBを実施しました。時価総額を考えると、とんでもない金額を使いました。

セントラル硝子はこういう状況で勇気のある決断をしたと私は評価しますが、いかんせん過去のケースの分析を誤ったのではないかと想像します。あくまで想像です。

では皆さんがセントラル硝子と同じ状況に追い込まれたとき、どうやって戦いますか?有事型買収防衛策で対抗しますか?でも旧村上ファンドはすでに20%近い株式を保有しており、セントラル硝子は「買収防衛策を発動しようにも普通決議を取れないかもしれない」と悩んだと思いますよ。非常に悩ましい状態にセントラル硝子は置かれていたのです。

セントラル硝子も含めて皆さん、何を守りたいかが明確になっていないと私は思うのです。守りたいものを明確化しないから防衛手法がぐらつくのです。しっかりと守りたいものを明確化すれば、守る方法はあるんです。

ちなみにセントラル硝子にもう助かる方法はないのか?さらに株主還元を強化しないとダメなのか?そんなことはありません。まあ自社株買い100億円だけで守り切るのはちょっと難しいと思いますが、まだ道は残っています。

「島津の退き口作戦」です。全員が一丸となって必死の覚悟で戦えば勝機はあります。つまりセントラル硝子の覚悟があればまだ勝てるということですよ。

こういうことを考えるのが防衛アドバイザーのお仕事です。なお、島津の退き口と書きましたが、セントラル硝子の防衛スキームで守るのは大将の首ではありません。守るべきは別の大切なものです。あ、もちろん大将の首も守りますよ。

 

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