2023年12月14日

当方のコメントが東洋経済さんに掲載

当方のコメントを東洋経済さんが掲載してくださいました。ありがとうございます。これ、すごくいい記事だと思うので、ぜひご覧ください。無料で閲覧できるようなので、私のコメント部分を抜粋しながら少し解説いたします。

https://news.livedoor.com/article/detail/25526705/

12月8日、日本経済新聞にコスモエネルギーホールディングスの大々的な広告記事が掲載された。「未来を変えるエネルギー」をうたい、QRコードを読み込むと山田茂社長のインタビュー記事に飛ぶ、力の入った仕立てだ。

だがそこに「岩谷産業との協業」などの文字はない。「記事は12月14日の臨時株主総会に備えたものだったのだろう。皮肉にも岩谷産業の株取得が寝耳に水だったことを浮き彫りにしている」。こう話すのは、企業の買収防衛などに詳しいIBコンサルティングの鈴木賢一郎社長だ。

ここ、上手に書きますよねえ。さすがプロだなあと思いました。12月8日、日経新聞を読んでいたところ、ふと広告が目にとまりました。以下です。

https://ps.nikkei.com/cosmo2023/vol1.html

これを見た瞬間「なるほど、臨時株主総会向けに準備した株主向けのメッセージだな」と思いました。コスモは臨時株主総会に向けてこういう準備をしていたということです。つまり、臨時株主総会で戦う気まんまんだし、当然発動を可決するぞという意気込みで戦っていたわけです。旧村上ファンドに勝利すべく士気旺盛なコスモが、そしておそらく「勝てる!」とふんでいるコスモが、岩谷産業に「ホワイトナイトになってくれ!」とお願いするわけがないのです。

もちろん私はこの広告だけで岩谷産業がコスモのホワイトナイトではないと判断したわけではなく、もろもろの材料を見た結果そう判断しました。以下は有料ですが、私の判断をまとめています。

2023年12月03日 No.1645 岩谷産業はコスモのホワイトナイトなの???

また以下のコメントにもある通り「コスモ優勢との観測」もあったと思いますし、ISSもコスモの発動議案に賛成推奨しています。

岩谷産業は、一見コスモにとって「救世主」にも見える。だが、鈴木氏は「臨時株主総会ではコスモ優勢との観測もあった。その矢先に株を買い取った岩谷産業はホワイトナイトではない。旧村上ファンドは高値で売り抜けることが目的だが、岩谷産業は事業会社だ。村上氏以上に手強いストラテジックバイヤー(戦略的買収者)になる」と話す。

以下はコスモの開示資料です。

2023年11月29日 当社臨時株主総会の上程議案に関する議決権行使助言会社ISS社の賛成推奨について

そして以下の日経記事。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF0212L0S3A201C2000000/

「コスモHDに株取得の方針を伝えたのは直前の11月下旬だ」とあります。岩谷産業がコスモ株の取得を公表したのは12月1日(金)です。11月下旬に伝えたとありますが、これ、11月30日に伝えたのでは?11月30日に伝えたと言うと「前日じゃん!これ、協議せずに勝手に買ったんじゃん!」となるけど、下旬って言うと「協議した感」が出ますから。

そして以下はコスモの開示です。

臨時株主総会開催中止に関するお知らせ

また、当社は、2023年12月1日付けで、岩谷産業がシティインデックスイレブンス及び大規模買付者から、その保有する当社株式のほぼ全てを譲り受けた旨の「コスモエネルギーホールディングスの株式追加取得及び資金の借入に関するお知らせ」と題するプレスリリースを開示していることを確認いたしました。

岩谷産業は当社の年のお取引先であることに加え、当社と岩谷産業は、2022年3月から水素事業の協業に関する検討を開始し(当社HP掲載の2022年3月8日付け「コスモエネルギーホールディングスと岩谷産業、水素事業での協業検討に関する基本合意書を締結」ご参照)、2023年2月及び同年11月には、共同出資者として水素事業に関する合同会社を設立する等、友好的かつ信頼関係の深い協業パートナーであることから、当社としては、本譲受けを前向きに捉えております。

これを見ても、コスモが株取得を認識したのはほぼほぼ開示を受けてか、その直前であったであろうことがうかがい知れます。そしてコスモは「本譲受けを前向きに捉えております」と書いてありますが、そう書かざるを得なかったのではないでしょうか?「当社は事前に聞いておりません」などと書いたら、また招かれざるお客様たちが寄ってくるかもしれませんから。アクティビストはもめ事があるところに寄ってきますので。

また、8月には経済産業省から「真摯な買収提案に対して真摯に検討」を促す行動指針が発出されたことも岩谷産業の背中を押した可能性がある。「コスモが『敵対的』と声を上げにくい状況で株を買い取った。岩谷産業の巧みな戦略が垣間見える」と鈴木氏は言う。

コスモと岩谷産業がこれからどうなるかはわかりません。案外友好的にことが進んで、うまく行く可能性もあります。そのあたりの読みは以下の有料コラムにまとめています。

2023年12月05日 No.1646 今後の岩谷産業・コスモのシナリオを予想!

コスモにとっての最初の山場は年明けでしょうね。

経済産業省の指針は大きな影響を与えますよ。買収者側の心理に与える影響も大きいですし、対象会社に与える影響も大きいのです。買収者は「指針が後押ししてくれている」と

捉えるでしょうし、対象会社は「もう抵抗できないんじゃないか?守ってはいけないんじゃないか?」と誤解します。

これから敵対的買収が増えることは間違いないですし、敵対的買収まではいかないものの、対象会社の事前同意なしに株式を取得する事例も増えるでしょう。アクティビストの動きも活発化します。こういう提案も来るかもしれません。

米メーシーズに投資家グループが買収提案=関係筋

名立たる会社がアクティビストのターゲットになっています。一昔前ならターゲットにならなかった会社が、です。そして名立たる会社が経営戦略の一つとして敵対的買収・同意なき買収を選択しています。第一生命も、同社は「敵対的ではない」と否定しますが、現時点でベネフィット・ワンやパソナと事前協議をしていない状況で買収提案をしているという意味において、敵対的だし同意なき買収だと私は考えています。

明日アクティビストのターゲットになるかもしれない、今日、貴社に対する敵対的買収が公表されるかもしれない。そんな時代になったと言うことです。そんな時代を乗り切るためには、ちゃんと平時から「うちがアクティビストのターゲットになる可能性はないのか?」「狙われないようにするにはどうすればよいのか?」をちゃんと考え、準備しておかなくてはなりません。否定的に言われている買収防衛策や持ち合いだって、会社のステージによっては検討しなくてはなりません。

 

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