2019年12月13日

HOYAのニューフレアテクノロジーに対するTOBは敵対的TOBですね

マスコミは対象会社の経営陣が反対を表明した時点で敵対的と報じますが、私は対象会社の経営陣の賛同を得ていない状態である場合は敵対的TOBを判断しています。

HOYAのプレスリリースを見ると「現在、東芝デバイス&ストレージが対象者株式に対する東芝デバイス&ストレージ公開買付けを実施してい る状況に鑑み、当社が本公開買付けを公表する前に東芝グループ及び対象者に対して本公開買付けに関する協議を 申し入れることは、公開買付けのプロセスの透明性の観点から、東芝グループ、対象者及び当社並びにその株主に とって望ましくないと考え、本公開買付けの実施について、本公開買付けの開始予定の公表に先立って対象者との 協議は行っておりません。そのため、現時点では、対象者が本公開買付けに賛同するか否かは確認できておりませ んが、当社は本日以降、対象者と、本公開買付けについて協議を行わせていただきたいと考えております。」とあります。

HOYAはTOB予定を公表する前に東芝グループやニューフレアテクノロジーに対して事前に協議はしていません。突然TOBを実施する予定と公表した訳です。これは敵対的TOBです。

ニューフレアテクノロジーの株式については、東芝デバイス&ストレージが52.35%、東芝機械が15.78%保有しています。HOYAはTOBに下限を付ける予定で、7,634,000株、所有割合66.67%集まらないと不成立という条件です。つまり、東芝デバイス&ストレージの応募がないと成立しません。HOYAは「魅力的な条件だから応募してくれると思っております」といったことを言っています。

今回のHOYAのTOBが成立するかどうかは、東芝の株主であるエフィッシモやエリオット、キングストリートなどのアクティビストがどう動くか、また、東芝機械の株主である村上ファンドがどう動くかにかかっていますね。

本件を見て思うのは、やはり株主構成は重要だということです。東芝があのような事態に陥らず、アクティビストに増資をお願いすることになっていなければ、おそらくHOYAはニューフレアテクノロジーに敵対的TOBを仕掛けることはしなかったでしょう。東芝にある程度の安定株主がいる状態であれば、アクティビストが大勢いなければ、東芝がHOYAのTOBなんて検討すらしないでしょうから。でも今の東芝は検討せざるを得ない株主構成なのです。

自社の株主構成を考えることは、何も企業防衛だけの観点に限ったことではないのです。本当にアクティビストが東芝の事業のことをわかっていると思いますか?「12,900円ならニューフレアテクノロジーをHOYAに売ってしまえ!そして株主還元を強化せよ!」 2~3年ならそれでも東芝はいいかもしれませんが、10年、20年先の東芝のことを考えたら、本当にそういう判断でよいでしょうか?目先の株価は高くなっても、10年、20年先の企業の競争力が落ちる可能性があります。

10年、20年先の会社のことを考えられるのは皆さん経営陣しかいないのです。株主はそんなに先のことまで考えていませんし、事業の専門家ではないから考える能力がありません。10年、20年先のことを考えた上で今の株主構成をどうしておくか?こういうことを考えるのも大切な時代になりました。

 

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

カテゴリからニュースを探す

月別アーカイブ