2020年01月31日

東芝機械はブルドックソースのケースを誤解していませんか?

ブルドックソースはスティールパートナーズに敵対的TOBを仕掛けられた際、定款を変更したうえで新株予約権無償割当を株主総会の特別決議で実施しました。今回、東芝機械は、定款変更をせず新株予約権無償割当を株主総会の普通決議で実施しようとしています。

東芝機械の株主構成や上位株主を見る限り、あまり安定株主比率は高くなさそうですし、そもそも東芝機械は平時の買収防衛策継続を、村上ファンドに買われている状況にもかかわらず、断念しています。これは「普通決議での継続に自信を持てなかったからか?」と見えます。

ブルドックソースのときと状況や時代が違うことも認識されているでしょうか?当時、スティールパートナーズの代表であるウォーレン・リヒテンシュタインは来日したときのマスコミインタビューに対し「日本の経営者を教育するためにやってきた」と豪語しました。日本の経営者から総スカンを食らいましたし、個人株主ですらも「なんじゃ、こいつ?」という感想を持った人もいたことでしょう。なによりブルドックソースの個人株主はブルドックソースが好きで株主になっている人たちです。ブルドックソースの応援団だったのです。

加えて当時のブルドックソースの社長は池田さんという女性の方でした。スティールパートナーズというアクティビスト・ファンドに対して女性が戦っている姿を見た個人株主は「応援しなくては!」と考えた方もいらっしゃったことでしょう。東芝機械にはこのような応援団がいるでしょうか?

あの時代は「アクティビスト・ファンド=悪」でした。だから個人株主も応援してくれました。会社の業種も影響します。しかし今の時代は「アクティビスト・ファンド=株価を上げてくれる善人株主」であり、かたや「旧態依然とした日本の経営者=株価を意識しない悪人経営者」と見なされているかもしれません。時代が違います。

東芝機械は安定株主の票だけではおそらく発動できないでしょう。そして外国人機関投資家や国内機関投資家は、おそらく全員が対抗措置発動議案に反対するでしょう。そりゃそうです。平時の買収防衛策議案ですら反対する人たちなんですから、有事の対抗措置発動議案に賛成する訳がありません。となると、東芝機械は安定株主+個人株主の票で戦わなくてはなりません。議決権ベースで25%くらいの個人株主のうち、どれだけ安定株主がいるのでしょうか?その安定株主である個人株主はまだ株を持ってくれているのでしょうか?

もしかして個人の安定株主以外の中立な個人株主からの賛成票を期待しているのでしょうか?それもムリではないでしょうか?そもそも個人株主は敵対的買収時においては安定株主にはなり得ません。個人株主は株価が高くなったら売る株主ですから、平時の株主提案においては白票で投じてくれるサイレント株主ですが、敵対的買収時には機能しません。今回、中立な個人株主は対抗措置発動に反対票を投じる可能性が高いと思われます。どうやって中立な個人株主を説得するのでしょうか?「村上ファンドは会社を食い物にしようとしています。どうか対抗措置発動に賛成してください!」でしょうか?中立な個人株主は「やなこった。高い値段で買ってくれる村上ファンドを応援するよ」って言うでしょうね。どうやって説得するのでしょうか・

※安定株主比率はあくまで外部に公表されている開示資料から推測したものです。もしかしたらすんごい高い安定株主比率なのかもしれませんので。そんなことはないでしょうけどね・・・。

 

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