2020年03月16日

村上さんたちにとっても事前警告型買収防衛策は必要でしたね

日経ビジネスの焦る東芝機械、余裕とジレンマの村上氏側 新型コロナで戦況変化という記事は非常に興味深い内容です。特に、

今の株価状況がTOB最終日の4月16日まで続き、村上氏サイドがTOBを撤回しない場合、TOBには上限の44%まで応募が集まる可能性が高い。一度発動したTOBは制度上、簡単には撤回できない。しかし村上氏サイドは3月に入り、買収防衛策が可決された場合は事前に申請した撤回条項に該当するためTOBを撤回する、と開示資料で明言した。

TOBを撤回すれば高コストで東芝機械株を買わなくてもよくなるが、それには臨時総会で買収防衛策が可決されることが条件となる。コーポレートガバナンスの改善をライフワークとする村上氏にとって、買収防衛策の発動を認めるのは本来、許しがたいことのはず。しかしそうならないとTOBを撤回できない。果実を得たはずの村上氏側にとっても、ジレンマを抱えるという皮肉な展開になっている。

というところ。村上さんたちが本音では「もうTOBを撤回したい・・・」と考えているのだとしても、対抗措置発動議案が可決されない限り撤回はできないでしょう。「村上さんたちも対抗措置発動議案に賛成する可能性があるのではないか?」 うーん、さすがに厳しいでしょう。理由は後ほど。

では東芝機械が昨年事前警告型買収防衛策を廃止せずに、努力と工夫をして継続できていたとしたらどうなっていたでしょうか?まず、村上さんたちがTOBを提案してこなかった可能性があります。買収防衛策が導入されていると、情報のやり取りなどに時間や手間がかかりますので、村上さんたちが「だったら買収防衛策を導入していない会社をターゲットにしよう」と考えた可能性があります。

一方、事前警告型買収防衛策を継続していたとしてもTOBを提案されていた可能性はあります。「TOBを提案」です。TOBを実施ではありません。買収防衛策のルールを破って突然TOBを実施することは考えにくいので、まずは事前警告型買収防衛策のルールに則ってTOB提案をしたでしょう。ではこのコロナショックで相場が大混乱している状況において、村上さんたちはTOBを実施してくるでしょうか?

たぶん実施してこないでしょうな。事前警告型買収防衛策のルールに則って情報のやり取りをしているときに、コロナウイルスショックが起き相場が大混乱している状況であれば、村上さんたちは理由を付けて「TOB提案」を撤回した可能性があります。TOBルールに則って実施している訳ではないので法律に縛られません。あくまで提案している状況ですから、撤回はできます。

東芝機械にとっても、村上さんたちにとっても、事前警告型買収防衛策は必要だったということです。

 

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