2020年04月17日

コロワイドが大戸屋に「株主提案」を行う真意

東洋経済に以下の記事が掲載されています。

コロワイドが大戸屋に「株主提案」を行う真意 なぜ役員刷新か、野尻社長120分インタビュー

興味深いので、気になる箇所を抜粋しながらコメントします。

――どうして大戸屋に株主提案に至ったのですか。

きっかけは、昨年11月に発表された大戸屋の2020年3月期の第2四半期決算だった。既存店売上高が思わしくなく、業績も前期と比べてさらに悪化していた。これに対して大戸屋は、「経営改善計画」を発表し実行するとしていたが、その実行可能性や原資についてはなはだ疑問が残るものだった。株を取得して筆頭株主になってから半年以上、経営改善が何も進んでいない。このままではまずいと思った。

・・・勝手に買ったんですよね?2019年の10月に。

そもそも当初は、業務提携と資本提携(M&A)の両にらみだった。業務提携の範囲でコロワイドのインフラやシステムを使い、メリットを感じてもらうつもりだった。ところが、あまりにも危機感が乏しいため、昨年12月27日に大戸屋の窪田健一社長と面談した。「従来は業務提携とM&Aの両方を選択肢と考えていたが、M&Aにかじを切って考える」と申し上げた。それに対し、窪田社長の返事は「独自性・独立性を維持したい」と明確な拒否だった。

これ、大戸屋の経営陣や一般的な上場会社にしてみれば「順番が違う!」という話だと思いますよ。業務提携と資本提携の両にらみなのであれば、まずは株を買わずに大戸屋の経営陣に対して真摯に提案すべきだったのでは?いきなり株を買われて「業務提携と資本提携の両にらみだ!」と言われても、大戸屋の経営陣は不信感しか抱かないのでは?

――「買収するぞ」と強く迫ったのでは?

そんなことはない。われわれは事前に手の内を包み隠さず明かすなど、紳士的に対応してきた。というのも、大戸屋の方々に協力してもらわないと、再建できないと考えているからだ。

いやいやいやいや。株を19%も買ったことこそが大きな圧力です。買収するぞとは言っていないのかもしれませんが、言っているのも同然ですよ。

そういう意味では、今年2月20日に第3四半期の決算説明を受ける際、コロワイドが考えるM&Aの中身についても説明している。具体的には、51%の株式取得を目指し、シナジーを出すためにも連結子会社化すること。スキームとしては、大戸屋の再生原資を確保するためTOB(株式公開買い付け)と第三者割当増資のセットとすること。そして、最長で3年間は社長を含め数人の役員を派遣すること、その後は経営を任せることができる人材がいればプロパーの方にお任せすることも検討すること、などだ。

・・・「買収するぞ!」と強く迫ったと捉えられても不思議はありません。すくなくとも大戸屋の経営陣は「脅されている」と捉えた可能性があります。

にもかかわらず明確な答えがなかった。3月19日に役員に問いただしたところ、「(コロワイドが)創業家から株式を取得する際に事前承諾を取らなかったことなど、感情的な問題が大きくM&Aは受け入れられない」との返答だった。

そりゃそうでしょうね・・・。感情的な問題というよりは、信頼関係の問題だと思いますよ。これから一緒にビジネスをやっていこうとする相手が、突然相手先の了承なし株式を取得して「連結子会社にする」と言い出したら、信頼関係なんて作れないでしょ?

「プロキシーファイト(委任状争奪戦)にもつれ込んだらどうしますか」と聞いたら、「勝てますよ、負けたら役員の多くは退任します」との答えだった。これ以上話し合いを続けても合意できないと判断して、株主提案を決意した。

これを言われた大戸屋の経営陣は「完全に脅されている」と捉えたのではないでしょうか?そりゃ大戸屋の経営陣も「勝てますよ」と言わざるを得ないでしょう。

――株主提案を決定する前の3月23日、大戸屋の株主を対象に、大戸屋がコロワイドグループに入ることに賛成か反対かという2択のアンケートを配布しています。その理由は?アンケートの回答者に食事券を送付する手法にも疑問の声が上がっています。

アンケートは、あくまで大戸屋の株主に聞くという「インナーサークル」を対象にしたものだ。われわれは筆頭株主であり、どういう行動を取るか、そしてそれについてどう思われるかを、他の株主の方々にも聞いておくのが筋だろうと考えた。

こんなアンケートまで実施されたら、大戸屋の経営陣の不信感は高まる一方ですね。

それより驚いたのは、アンケート送付後の4月1日になって、「TOB及び第三者割当増資に関する正式な条件提示がない」との書面が送られてきたことだ。M&Aについては門前払い同様に拒絶していたにもかかわらず、このタイミングで急に「条件提示がないから」というのはおかしい。現経営陣が保身を図るために時間稼ぎをしているのだと感じた。

???TOB価格や実施時期、具体的なシナジー、第三者割当増資の引受価格、発行株数、資金使途などの具体的条件を示したんでしょうか?そのような具体的な条件の提示がないのであれば、大戸屋も「条件提示がない」と言うでしょうね。時間稼ぎではなく、事実を言っているだけではないでしょうか?

取締役会の過半を握りたいと思っているのは確かだが、今回候補にさせていただいた人たちは、コロワイドの言うことをそのまま素直に聞くようなメンバーではない。そういう意味では、大戸屋を征服したい、われわれの思うままにしたいといった思いではなく、あくまで企業価値を上げたいという思いから選んだメンバーだ。

企業価値を誰のために上げたいと考えているメンバーなのでしょうか?

――実質的な創業者、故三森久美氏の長男である智仁氏が取締役候補に入っていることには違和感があります。いわゆるお家騒動の当事者です。

大戸屋には確かにお家騒動はあった。しかし、智仁氏、そして(故三森久美氏の)妻である三枝子氏も、われわれに株式を売却した後は大戸屋になんの未練もない。智仁氏は自身の会社を立ち上げて経営していることもあり、打診したところ断られたくらいだ。

智仁氏は実質的な創業者の長男で、先代の理念や大戸屋のDNAを知り尽くしている。そんな人材は彼しかおらず、「お父さんが言っていたことを話してくれるだけでいいから」とお願いして候補に入ってもらった。

お父さんの理念や大戸屋のDNAは現経営陣や社員がよくわかっていると思いますけど。

――コロワイドのセントラルキッチンの稼働率を上げたいからではないかという指摘もあります。また、店内で調理するからおいしいのであって、セントラルキッチンにしたら大戸屋の良さが失われるのでは?

そんなことはない。現在、工場はフル稼働だ。大戸屋のために新たな工場が必要になると考えている。店内調理に関しても、大戸屋側は「調理方法は最高機密だ」などといっているが、アルバイトや日雇いのスタッフに鍋をふらせておいて何が最高機密だというのか。しかも、現在の経営陣になって冷凍食品も使っており昔とは違う。確かに、われわれはセントラルキッチンでやっているが、すべて工場で作って運んでいるわけではなく、店内でも調理している。われわれがやった方が確実に品質は向上する。

これは言い過ぎでは?アルバイトや日雇いスタッフであっても、一生懸命鍋をふり、お客様に真摯に商品を提供しているのではないでしょうか?これを読んだ大戸屋の経営陣や従業員は「本当にコロワイドの連結子会社になったとしても、うまくやっていけないのではないか?」と思うのではないでしょうか?

コロワイドはこれまで多くのM&Aを手掛けてきたが、経営再建にあたっては基本、プロパーの社員に任せてきた。コロワイドのインフラを使って、自分たちで再建してくれという方針だ。したがって、大戸屋にもそうしてもらうつもり。良さを失われないようにするためだ。

コロワイドは通常のM&Aはたくさんやっていらっしゃると思いますが、敵対的TOBは初めてではないでしょうか?通常のM&Aと敵対的TOBはまったく違います。思わぬ戦略が飛び出てくることもありますからねえ。

大戸屋の経営が苦しくなっているのはガバナンスのせいだ。商品が出てくるまで時間がかかり、マーケティングもしていないためメニュー開発どころか、品質の低下も招いている。合理化を進め、良さをさらに引き出せば、現在250憶円くらいの売り上げを、約2.4倍の600億円にまで持っていける。そんな状況を客観視できず、改善できていない今の経営陣は、株主として刷新すべきだ。

ガバナンスって言葉が最近、いろんな意味で使われていますね。本来は「企業統治」でしょうか?今の大戸屋の業績がよくないというのは、ガバナンスのせいではなく、正確には経営陣のせい、ですね。であれば、コロワイドの経営に変わればよくなるということなのでしょうか?現在、19%しか持っていないコロワイドに大戸屋の株主は経営をまかせたいと考えるのでしょうか?それとも、19%しか持っていないのに実質的に経営を支配しようなんてけしからん、一般株主の利益を軽視している、と捉えるでしょうか?

19%しか持っていないのに、株主提案で経営陣を入れ替えて、コロワイドにとってメリットのある経営をすると見なされるかもしれませんよね?それってガバナンス的にはどうなんでしょうか?きちんと100%買収したほうがよいのではないでしょうか?

少なくとも、もうすでに連結子会社化する方向なのであれば、本来、先にTOBを仕掛けたほうがよいのではないでしょうか?

最近大戸屋行ってないから、明日にでも行ってみようかな。あ、緊急事態宣言が出ていますね。不要不急の外出は控えます・・・。

 

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