2020年06月26日

大戸屋が勝利した要因は?創業精神の正当性やセントラルキッチンだけではありません

今日の日経11面の記事です。抜粋しながらコメントします。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60815810V20C20A6TJ1000/

定食店チェーンの大戸屋ホールディングスは25日に定時株主総会を開いた。役員選任を巡る大戸屋HDと筆頭株主である外食大手コロワイドの争いは、大戸屋に軍配が上がった。成長戦略に加え、創業精神の継承の正統性を巡る議論に決着がついた格好だが、対立解消には遠い。

大戸屋経営陣にとっては「創業精神の継承の正当性を巡る議論」が争点だったのかもしれませんが、大戸屋の株主にとってそれはどうでもいいことでは?大戸屋の「合理的」な株主はそんなことを気にしてはいないでしょう。

大戸屋HDによると、議決権を行使した株主(コロワイドを除く)の8割強が同社が提案した既存の経営陣を中心にした役員選任案に賛成した。経営陣の刷新を求めるコロワイド側の提案は否決された。

それだけ賢く、合理的な株主が大戸屋にはたくさんいたということですね。

今回争われたのは両社による大戸屋の成長をかけた役員選任案だが、互いが創業精神の継承を掲げ、その正統性を争う構図ともいえた。

「ともいえた」かもしれませんが、今回の争点は「コロワイドはどういう条件で大戸屋を子会社にするのか?その条件が明らかにされていない現時点ではコロワイドの株主提案に乗れない」と個人株主が考えたからではないでしょうか?

筆頭株主になったコロワイドは役員選任案に智仁氏を入れた。創業家を迎え「日本一の定食屋にする」という久実氏の理念を伝える狙いがあったという。

これは大失敗だったと思いますよ。株主って高齢の方が多いですよね?「苦労もせずに上場会社の取締役になるなんてけしからん」と考えた人もたくさんいたのではないでしょうか?戦略ミスです。

経営面では大量の食材を工場でまとめて調理するセントラルキッチン方式の導入によるコスト削減を主張。焼肉店「牛角」や居酒屋「甘太郎」など幅広い企業を持つグループの仕入れ力を生かせば、食材の原価も低減できると考えた。

一方、大戸屋は今回の争いをホームページなどで「町のごはん屋VS工場」と訴えていた。「大戸屋の未来を守るため、店内調理は絶対に変えない」。株主総会で大戸屋HDの窪田健一社長は創業以来の店舗のあり方を守る重要性を繰り返し訴えた。

今回の株主提案ではこれで勝てました。しかしこの戦い方が敵対的TOBでも通用するかどうかです。ちなみに、コロワイドはすでに大戸屋株を19%も保有しています。あと少し買えば、かなりの影響力です。多くの会社が旧村上ファンフォに30%~40%の株式を取得され、ヒーヒー言ってましたよね。その程度の保有割合まで引き上げるのは、そう難しいことではないのでは?

役員選任案の勝負を分けたのが株主の約6割を占めるとされる個人投資家だ。株主からは「ほどよい値段で、おいしい日本料理をたべられて大ファンだ」「現在のメニューが好き。コロワイドという会社はよく分からない」など、店内調理というやり方を支持する声が目立った。

一定程度のファン株主もいるでしょうし、「コロワイドって誰?」と思った株主もいるでしょう。しかしそのコロワイドがこのような個人株主に対して「あなたが持っている大戸屋株を〇〇円で売ってくれませんか?」とTOBwお提案してきたらどうするでしょうかね。

株主からも「今回は大戸屋に入れたが、経営陣はあまり評価していない。コロワイドがTOB(株式公開買い付け)で良い条件で示せば売ってもよい」(60代男性)との声も聞かれる。コロナ禍でも株主が納得できる成長路線を示さないと、再び経営が混乱に陥る可能性が残されている。

こういう株主も当然います。というかこれが株主です。「いくらで買ってくれるんだ?」ということを重視するのが株主です。機関投資家であれ、個人投資家であれ同じです。株主が重視するのは価格です。コロワイドが大戸屋株主に対して魅力的な条件のTOBを提示してきたらどうでしょうか?

敵対的かどうかは関係ありません。株主にとって魅力的な条件を提示してきた買収者は、敵対的買収者ではありませんから。これ、皆さんも同じです。同じことが皆さんの会社でも起きる可能性があります。これからの時代は。

 

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