2020年09月08日

大戸屋、今日がTOB最終日~会社は誰のモノか?~

コロワイドによる大戸屋への敵対的TOBですが、今日が最終日です。ただ、コロワイドは前回、TOB最終日の18:15に下限の引下げと期間延長を公表しています。

https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200825485386.pdf

もし今回もTOBの下限までの応募がなかったらどうするのでしょうか?下限をさらに引き下げて再度延長するのか、それともあきらめるのか?私は「コロワイドは絶対にあきらめない」と読みます。理由は以下のとおりです。

No.869 では大戸屋は助かることができるでしょうか?

No.863 一敗したらゲームセットという言葉の重さを知るアドバイザーかどうかが重要

No.855 大戸屋の総会結果から今後のコロワイドの敵対的TOBの可能性を分析!

大戸屋はコロワイドに実質支配される可能性が非常に高くなっています。なぜこんな状況になってしまったのでしょうか?皆さんが大戸屋のような状況にならないようにするにはどうすればよいのでしょうか?以下、上記コラムから少し抜粋します。

敵対的TOBの世界においては、圧倒的に攻める側が有利です。株主提案は逆です。守る側の方が有利です。いずれのケースにおいても過半数を取るのは難しいのですが、40%程度を取るのは簡単です。そして、株主提案では40%しか取られなければ勝ちですが、敵対的TOBでは40%取られたら負けです。

コロワイドの野尻社長がおっしゃるとおり、買収者側が「勝つまで何度でもチャレンジする」と腹をくくりさえすれば敵対的TOBは成功します。敵対的TOBはペナントレースではありません。負けたから次がんばろうではないのです。負けた時点でアウト。独立した上場会社としての経営は失われます。

ですから、大戸屋やソレキア、デサント、前田道路などは、敵対的TOBを甘く見ていたと思いますし、アドバイザーもです。これらの会社は、敵対的TOBの予兆がありました。大戸屋は創業家とのもめごとが始まった時点で「あ、いつか同業やファンドに売られる」と気づくべきでしたし、ソレキアは敵対的TOBを仕掛けられる前に、フリージア・マクロスに株を取得されていました。デサントももめていましたし、前田道路だって普段の前田建設とのやり取りから「いつか前田建設が仕掛けてくるかも」と思うときがあったのではないでしょうか?

そういう予兆があったときに、経営陣は適切なアドバイザーに相談すべきでした。ほとんどの会社は買収防衛策を導入することができましたし、買収防衛策で時間をかせぎ、稼いだ時間でいろいろな対抗策を打ったり、材料をもって交渉したりすることもできました。たぶん、アドバイザーに相談するタイミングが遅かったのか、アドバイザーに知恵がなかったのか、アドバイザーが極悪人だったのかのどれかです。

皆さんは買収防衛策について真剣に考えたことがありますか?「2005年頃真剣に考えたよ」 本当ですか?真剣に貴社にとっての必要性を考えたのではなく、単に「みんなが導入しているから」「流行っているから」考えたのではないでしょうか?

現在、日本で敵対的TOBが増えています。2005年頃とは状況が違います。あのころはアクティビスト・ファンドの動きが活発化したことで買収防衛策の導入をみんなが検討しましたが、現在増えているのは事業会社による敵対的TOBです。危険度合いが全然違います。本当に真剣に買収防衛策のことを考え、必要に応じて導入しないと、皆さんの会社が皆さんの会社ではなくなってしまうのですから。

ちなみに、買収防衛策は買収防衛策などではありません。株主、従業員、取引先、地域社会といった会社を構成するステークホルダーが買収提案に本当に応じてよいのかどうかを検討するための、時間と情報を確保するためのルールです。

会社は株主のモノ、ではありません。そもそも会社はモノなどではありません。モノではない会社の価値、利益をどう守るのか?役員の皆さんが真剣に考えるべき問題です。

 

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