2020年10月22日

DCMは1年前にTOBを仕掛けていたらニトリは出てこなかった

今日の日経2面に以下の記事が掲載されています。

ニトリ・DCM、島忠争奪戦へ 実施中のTOBに対抗

企業の争奪戦となる事例は相次いでいる。19年にはドラッグストアのココカラファインとの経営統合を巡り、マツモトキヨシホールディングス(HD)がスギHDに競り勝った。東芝が上場子会社のニューフレアテクノロジーにTOBを提案した際はHOYAが対抗TOBに乗り出し、その後撤退している。

背景には日本企業の株価が割安に放置され、買収のハードルが下がっていることがある。東証1部企業のうちPBR1倍未満は49%。米国のS&P500種株価指数(16%)より見劣りする。

企業の争奪戦となる事例が相次いでいる背景として確かに株価が割安であることも一因ではあると思われます。ただ私はそれよりも「敵対的TOBを仕掛けても乗っ取り屋などと批判されることはなくなった」ということが大きいのではないかと思っています。

2017年2月に佐々木ベジさんがソレキアに敵対的TOBを仕掛けました。富士通がホワイトナイトとして登場しTOB合戦に発展するも、佐々木ベジさんがTOB価格で競り勝ちました(まあ、富士通は自社の株主構成を考えたら、富士通が考える合理的ではない価格を提示することができないので仕方がないのですが)。

2019年1月には日本を代表する総合商社である伊藤忠商事がデサントに敵対的TOBを仕掛け成功しました。そして、エイチ・アイ・エスによるユニゾHDへの敵対的TOB(2019年7月)、コクヨによるぺんてるへの敵対的買収(2019年11月)、HOYAによるニューフレアテクノロジーへの敵対的TOB提案(2019年12月)、村上ファンドによる東芝機械への敵対的TOB(2020年1月)、前田建設工業による前田道路(2020年1月)への敵対的TOBが起きました。

そしてつい最近、コロワイドが大戸屋に対して敵対的TOBを実施し成功しました。たぶんですけど、DCMによる島忠へのTOBが2年前に実施されていたら、ニトリはカウンターTOBを仕掛けてこなかったのではないでしょうか?(まだ仕掛けていませんが)ここ1~2年で敵対的TOBは経営戦略の選択肢となってしまいました。

今回ニトリがカウンターTOBを仕掛けるのは、敵対的TOBが当たり前の時代になりつつあるからです。コロワイドが大戸屋に敵対的TOBを仕掛けても、誰からも批判されていません。そして成功しています。ニトリと同じBtoCの企業が敵対的TOBを実施しても顧客離れなど起こすこともなく(これから起きる可能性は否定できませんが)、乗っ取り屋などと批判する人はいませんでした。

だからニトリも「うちが島忠にカウンターTOBを仕掛けても誰からも批判されることなどなく、むしろTOB価格次第では称賛されるだろう」と考えたのかもしれません。ニトリは2019年まで買収防衛策を導入していた企業ですから、自社が敵対的TOBを仕掛けることもちゃんと検討していたのかもしれませんね。

これからの時代、敵対的TOBやカウンターTOBはドンドン当たり前になっていくでしょう。現時点で検討している会社もたくさんいらっしゃるかもしれません。2020年1月には旧村上ファンドが東芝機械に敵対的TOBを仕掛けた直後に、前田建設工業が前田道路に敵対的TOBを仕掛けました。ニトリに続く企業がドンドン出てきても何ら不思議なことではありません。

これから日本企業は本格的な敵対的買収時代を迎えます。そのうちオーナー系企業以外の企業も敵対的TOBを開始するでしょう。海外の名だたる企業が日本企業をターゲットにしてくるでしょう。そんな時代を迎えるに当たって、きちんと企業防衛のことを検討しておかないと貴社が餌食になってしまいます。

 

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