2021年05月24日

緊急の買収防衛策に待った!!!

今日の日経に以下の記事が掲載されています。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO72126470R20C21A5TCJ000/

詳しくはコラムでまとめたいと思いますが、記事中の以下!

「日本は買収者に優しい国だと分かった」。国内外の買収防衛に詳しい専門家が、皮肉っぽくつぶやいた。この専門家が注目したのは、再生可能エネルギー事業などを手掛ける日本アジアグループが発動を発表した買収防衛策に関し、4月に東京地裁・高裁が差し止めを命じた判断だ。

そうですよ。日本は買収者に対して非常に優しい国なのです。欧米はもっと厳しいですよ。どうしてこれまで日本で敵対的TOBが起きにくかったのか?簡単です。日本企業は安定株主で守られていると海外のアクティビストや事業会社が勘違いしていたから、です。

実際に日本の安定株主比率は過去高かったと思いますが、それでも敵対的TOBを本気で仕掛けたら、だいたいの会社を攻め落とすことは可能でした。難しいのは株主提案を可決させることです。この点、詳しくはコラムで。

記事では平時導入型の買収防衛策と有事導入型の買収防衛策を論じていますが、私は買収防衛策と呼ばれている事前警告型ルールはその名のとおり「事前警告型」なのですから、平時にきちんと導入しておくべきだと考えます。ただし、その導入方法は株主総会決議なのか取締役会決議なのかは、どちらでもよいと考えます。現に長い間、取締役会決議で平時導入型の買収防衛策を継続している会社はあります。エーザイやGMOです。そもそも平時導入型の買収防衛策は取締役会決議で導入されていました。

また、平時導入型の買収防衛策は事前警告型ルールであって、買収防衛策ではありません。事前警告型ルールは買収提案がなされる際において、詳細な情報提供と検討のための時間を確保することが目的であり、買収提案の実現を阻害することを目的としていません。一方で有事導入型の買収防衛策は買収防衛策なのです。買収防衛策を発動して買収提案の実現を阻害することを目的にしています。

両者は、プレスリリースを見ると似た仕組みになっていますが、その目的はまるで違います。そこをはき違えないことが重要です。

平時の買収防衛策=事前警告型ルールについては、私はすべての上場会社にとって必要な施策であると考えます。ただしその導入について反対する株主が多いのも現実です。しかし、だからと言って導入をあきらめるのはよくありません。事前警告型ルールとは何を守るためのルールなのでしょうか?それは「会社」を守るためのルールです。

では「会社」とは何か?役員、従業員、取引先、金融機関、地域社会、国、株主の協力によって生み出される利益の集合体であると私は考えます。「会社」は特定のステークホルダーの「もの」ではありません。そもそも会社はものではない。

あらゆるステークホルダーの利益を守るためのルールが事前警告型ルールであり、株主が反対したとしてもきちんと説明し理解を求めなくてはなりません。それでも反対する株主については、継続して理解を求めていく必要があるでしょう。反対するからと言って無視するのはよくありません。その意味で行くと、これからもっと戦略的なIRを平時からしておく必要もあるでしょう。

買収防衛策のことを考えるのって、とても大事なのです。けっしてディフェンスのことだけを考えているのではなく、オフェンスを考えることにも通じています。廃止する企業が多くなっている買収防衛策ですが、私はいずれ復活すると思っています。

 

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