2019年06月03日

乾汽船がけっこう大変な状況

乾汽船は現在、アルファレオホールディングス合同会社という会社に25.06%の株式を保有されています。そして乾汽船は「乾汽船が買収防衛策を再導入」でお伝えしたとおり、一度廃止した買収防衛策を再導入しました。しかし、買収防衛策のトリガーは30%です。一般的なトリガーは20%ですから、アルファレオにある程度買われている状況での再導入なのでトリガーを30%程度に設定する必要があったのでしょう。

本日アルファレオが提出した乾汽船にかかる変更報告書は「保有目的の変更」です。以前の保有目的は「純投資が基本であるが、状況に応じて経営陣への助言や重要提案行為等を行う。」でしたが、以下のような長~い目的に変更されました。

乾汽船株式会社(以下「当社」)の取締役は注意義務・忠実義務を尽くしていないこと、及び敵対的買収防衛策の導入には合理的な理由がなく、取締役の自己保身であると認められることから2019年6月21日の当社定時株主総会にて取締役の再任案及び買収防衛策導入案に反対する。

(1)脆弱な経営体制:2014年10月の経営統合前は常勤の取締役を創業家以外からも登用していたが、統合後は兄弟である乾康之・乾隆志のみが常勤の取締役である。このような体制が継続してきたのは、ガバナンスの観点から見て問題である。

(2)不公平な取締役報酬制度:2018年3月期有価証券報告書によれば、取締役報酬は2名で8,200万円であり総人件費の約17%を占めている。これは同業他社と比較しても2倍以上の水準である。また、同報告書の人件費給料手当から単純計算をすれば従業員1名当たりの平均給与は約200万円である。また、取締役報酬算定の重要な要素に営業キャッシュフローの前年対比が採用されている。他方で株主還元である配当は最終利益を基準としている。当社は船舶及び不動産の減価償却費が多額であるため、2019年3月期の営業キャッシュフロー2,960百万円に対し、当期純利益639百万円となっている。従業員給与及び株主還元よりも偏頗的に取締役に有利な報酬体系である。

(3)重要な財務情報の不開示:2019年3月期期初業績予想では、大幅な増益増配を予想していたが、バラスト水処理装置の計上方法を資産から費用としたことにより第2四半期の予想と実績に差異が生じた旨が2018年11月8日に発表された。この会計上の計上方法の変更は同年5月23日の取締役会で決議された。これは業績に多大な影響を与える重要な財務会計の変更であるにも関わらず、6か月もの間開示されなかった。これは重大な不開示である。 

(4)合理的な理由のない敵対的買収防衛策:提出者は、短期的な利得のみを目的とする売買を行ったことはなく、むしろ当社に対して長期保有を明言し、中長期的な企業価値の向上に向けた提案を行ってきた。また、現状、提出者以外に30%の保有比率に達しうる株主は存しない。かような状況下で買収防衛策の導入を試みることは、取締役の自己保身目的と言わざるを得ない。

なお、更なる詳細を提出者のウェブサイトに掲載することがある。

長いですね。さてどうなるでしょうか?

 

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