2019年11月20日

今こそ企業防衛について考える

今年に入っていきなり、エクセレントカンパニー伊藤忠商事がデサントに対して敵対的TOBを仕掛けました。出資比率を30%から40%に引き上げることが目的ですから、当然、成立します。重要な点は、エクセレントカンパニーである伊藤忠商事が敵対的TOBを選択したということです。世間から非難されるリスクがあるにもかかわらず、です。

そしてエイチ・アイ・エスがユニゾHDに対して敵対的TOBを仕掛けました。失敗しましたけど(もしかしたらまた仕掛ける可能性もあるのかもしれませんが)、大きな意義があったと思います。エイチ・アイ・エスは個人消費者を顧客にしている会社ですから、レピュテーションを人一倍気にする会社ではないでしょうか?そのような会社が「乗っ取りだ!」と批判される可能性のある敵対的TOBを選択したということには大きな意義があると思うのです。

そしてコクヨがぺんてるに対して敵対的買収を仕掛けました。もう今年は起きないだろうと思っていたタイミングでした。コクヨも個人消費者を顧客にしている会社っぽいですね。でも敵対的買収を選択しました。

名だたる投資家であるブラックストーンもユニゾに対して敵対的TOBを実施する可能性があります。もう、日本企業に対してタブーはなくなったのではないでしょうか?

オアシスが島忠の大量保有報告書を提出し、アセットバリューインベスターズがパソナグループの大量保有報告書を提出しました。次は最強投資家エリオットがあたりがどこかの大量保有報告書を提出してくるのではないでしょうか?

以前、日経の記事で物言う株主、日本に攻勢 統治・還元に改善圧力というのがありました。記事に「企業統治改革の流れで持ち合い株主が減る一方、国内機関投資家が株主総会で会社側議案に反対票を投じるようになった。」とあります。安定株主が減り、これまで会社議案に賛成してくれていた国内機関投資家までアクティビストを支持するようになったのです。実際には今に始まったことではなく、実は10年位前にも国内の機関投資家がアクティビストの株主提案に賛成することもありましたが、顕著になってきたのは最近のことでしょう。

日本企業に対する包囲網が出来上がってきつつあります。これから他のアクティビストも上陸してくる可能性があります。そんな状況にどう対処していくかがこれから問われます。株価をどう上げるか、ROEをどうするか、ガバナンスは・・・。いろいろと考えなくてはならないことが多いです。買収防衛策もその一つです。

反対意見が多い買収防衛策ですが、導入すれば効果はあります。現に、買収防衛策を再導入した日邦産業や乾汽船は、特定株主による買い増しはストップしています。私は買収防衛策にこだわっています。それは買収防衛策は実は買収防衛策ではなく、単に買収提案を検討するための、もしくは、代替案を提示するための時間と情報をくれといっているルールだからです。反対する株主は多いと思われますが、実際には株主にとってメリットのあるルールです。

敵対的TOBは「持っている株を売ってくれ」という意味においては、株主に対して提案されているものです。ただし、株主は持っている株を売ってしまえば会社との関係は切れますが、株主以外のステークホルダーは会社との関係は切れません。ほぼ永続的に続きます。買収防衛策は株主にとっても重要な策であり、株主以外のステークホルダーにとっては更に必要な策です。

買収防衛策は買収提案を阻害するための策ではなく、単に会社の危機管理の観点から必要な策であると思います。危機管理のための策が必要でない会社などどこにもありません。日本企業による敵対的TOB・買収が今年3件も起きたこと、世界中のアクティビスト・ファンドが日本企業をターゲットにしていることを契機に、会社の危機管理体制をきちんと見直してみることが重要ではないかと思います。

 

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