2020年01月21日

改めて買収防衛策について考えてみませんか?

今の世の中では買収防衛策は否定的に捉えられています。なぜかと言うと、買収防衛策は経営者の保身であり、コーポレート・ガバナンス強化の流れに逆らっている施策だ、と世の中では言われているからです。

果たして本当にそうでしょうか?皆さんは買収防衛策とはどういう施策なのか、買収防衛策導入企業が公表しているプレスリリースを読んだことがありますか?弁護士が作成している内容ですし、内容に穴があってはいけないので、非常に読みにくい内容です。でも一度読んでみてください。

読んだらわかります。「これって買収防衛策なの?単に20%以上の株式を取得したいという買収者に、買収する場合の詳細条件などの情報やそれらを検討するための時間を提供してくれと言っているだけじゃないの?」ということがわかるのです。

よく言われるのが「買収防衛策のルールでは無制限に情報提供を要請することができる。いつまでたっても情報が足りないと対象会社が買収者に要求し、買収者が疲弊することを期待しているに違いない!時間をかけて買収提案がなかったこにするつもりだ!」という意見です。そういう使い方ができる設計の買収防衛策もあります。

しかし今の世の中でそんな使い方ができると思いますか?これだけ安定株主比率が低下し、コーポレート・ガバナンス強化と言われている中、市場株価に高い値段を上乗せしたTOBを提案されている状況で、経営者の保身のために買収防衛策を利用できると思いますか?できませんよ。

「現に過去、買収防衛策導入企業に対する買収提案は実現しなかったではないか!」という指摘もあります。あれらは対象会社のせいではありません。対象会社が買収者に「買収するな!」と主張した訳ではなく、買収提案時に比べて環境が変化したせいで、買収者の方が自主的に買収提案を取り下げたのです。対象会社が駄々をこねたから買収者があきらめたわけではないのです。

買収防衛策は誰にとって必要な施策でしょうか?経営陣や従業員にとってはもちろん必要ですが、本当は株主にとって必要なんです。皆さんは投資先の企業価値を正確に分析していますか?市場株価に30%のプレミアムが付いたTOBが実施されたら即応募してしまいませんか?仮にそれがBPSを下回る価格であったとしても。

そういった市場株価にプレミアムはついているけど正当な企業価値に比べて割安で買おうとしている買収者に対して、買収提案の詳細な情報と時間を確保することによって、TOB価格を引き上げさせるための交渉ツールとして活用できるのが買収防衛策なのです。株主にとって必要な施策なのです。

これまで成功した敵対的TOBにおいては、情報と時間がもっとあればTOB価格を引き上げさせることができたのではないかという事例は実際にあります。株主は目の前にぶらさげられたニンジンにすぐに食いつきがちですが、もっと情報と時間を確保できれば、もらえるニンジンが増えるかもしれないのです。

株主の皆さんはそろそろ買収防衛策はいかなる買収提案をも阻害するような施策ではないということに気付いていただきたい。

そして上場会社の皆さんは、買収防衛策をこの機会にちゃんと整備していただきたい。廃止した会社は再導入していただきたいと思います。

本当に明日貴社に対して敵対的TOBが実施される可能性があるのですから。東芝機械だって、本当は「ちょっとした工夫」をして買収防衛策を継続しておけば、こんなことにはならなかったのですから。

皆さんの会社が経営の独立性を確保し企業価値を向上させていくためには、買収防衛策や企業防衛の議論が必要だと私は考えます。

 

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