2020年01月21日

日経ビジネス:村上さんのインタビュー記事

日経ビジネスに村上さんのインタビュー記事が掲載されました。気になるところを抜粋してコメントします。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/012101030/?n_cid=nbpnb_mled_epu

Q)今回は東芝機械側がTOBの通告を受けた、と発表しました。TOBが仕掛ける側ではなく、受ける側から明らかにされるのは異例のことです。

A)私もなぜ会社が1月17日にTOBの通告を受けたと発表したのか分かりません。とても気になります。結果的に1月20日の東芝機械の株価は大きく動いてしまいました。理論上はまだTOBをやらない可能性だってあったわけで、会社の対応は理解できません。この株価のアップダウンで損をした人がいたら、それは会社の責任です。こんなことをする人たちにはもう今後、事前の交渉はできません。

TOBを通告したんですから、そりゃ東芝機械さんが公表する可能性は容易に想像できたのではないでしょうか?会社の責任というのは言い過ぎです。それは「村上さんが株主のために適切なTOB価格をきっと提示してくれるに違いない!だって村上さんは株主の見方だもん!!」と考えて株を買った投資家の自己責任です。そもそもなんでTOBを事前通告したんですか?そっちのほうが理解できないんですけどね。事前通告しちゃったから、東芝機械さんに買収防衛策っぽい対応方針を導入されたんですから。佐々木ベジさんを見習ったほうがよいです。

Q)東芝機械は1月17日、TOBの通告に対して有事導入型の買収防衛策を導入すると発表しました。取締役会や株主総会での判断材料になる情報開示という名目で、TOBの60営業日前までに買い付けの狙いを提出するよう求めました。これに従うと1月21日からのTOBはできません。またこの求めに応じないでTOBを開始した場合は、社外取締役で構成する独立委員会の意見を聞きながら、村上氏側が事実上使えない新株予約権を株主に割り当て、TOB実行者の持ち株比率を低くすることができるとしました。この対応をどう感じましたか。

A)これは絶対にやってはいけないことです。コーポレートガバナンス(企業統治)に対する冒涜(ぼうとく)です。東京証券取引所や経済産業省、金融庁などがこれまで一体となって、この国のあるべき上場企業の姿を追求してきました。そして様々なルールを作ってきました。それなのに今回の買収防衛策がまかり通れば、この二十数年間、東証や役所は何をしてきたのか、ということになります。コーポレートガバナンスの根幹を揺るがすのです。

嫌なやつに対しては取締役会で勝手に新株予約権を出すことができる。そういう前例を絶対に作ってはいけません。村上がいいか悪いかではなく、こういう前例を作ってはいけないのです。

どうして絶対にやってはいけないことなんですか?東芝機械さんは単に村上さんに対して「株主をはじめとしたステークホルダーのために買収提案に関する情報と検討するための時間を提供してほしい。ルールを守ってくれたら、株主意思確認総会で承認を取らない限り対応措置は発動しません」と言っているだけです。ルールを守りさえすれば、東芝機械は取締役会決議で対抗措置を発動できません。どうしてそんなに株主をはじめとしたステークホルダーに対して情報と検討期間を提供するのがイヤなのでしょうか?コーポレートガバナンスを冒とくなどしていません。

それと、嫌なやつに取締役会が勝手に新株予約権を出す訳ではありません。ルールを守ったら対抗措置は発動しないと言っています。ルールを破って、株主をはじめとしたステークホルダーが買収提案に応じるかどうかを検討するための情報と時間すら与えてくれない買収者に対して対抗措置を発動すると言っているのです。特に今回村上ファンドが提示したTOB価格は3,456円です(覚えやすい価格でいちいち届出書を見なおさなくていいからラクです)。BPSと同額です。村上ファンドも公開買付届出書で「解散価値と等しい株価純資産倍率(PBR)1倍である本公開買付価格であれば十分に割安な取得価格」と考えているとおっしゃっていますよね?そんな価格で本当に株主がTOBに応じてよいのかどうか、検討するための情報と時間が必要ではないですか?

東芝機械は村上さんが嫌なやつだから対抗措置を発動する訳ではありません。東芝機械が発動するかどうかはまだ決めていないと思いますが、発動するとしたらルールを破って株主らに対して情報や時間を提供せずにTOBを強行したからです。これは明らかに誤解を生じさせる表現ですから訂正したほうがよいと思います。

Q)仮に買収防衛策が発動されたら、差し止め請求はするのでしょうか。

A)もちろんやります。コーポレートガバナンスは私のライフワークです。自分の人生をかけてやってきました。ですから今回の買収防衛策をどうやったら阻止できるかを徹底して考えます。コーポレートガバナンスに人生をかけている人間として、ありとあらゆる手段を使って、そして二度とこんな悪弊が行われないように頑張ります。

???

コーポレートガバナンスがライフワークなんでしたっけ?コーポレートガバナンスに人生をかけているんでしたっけ?知りませんでした。

あと悪弊じゃないですよ。今回の東芝機械さんがとった対応方針はあくまで株主らのために買収提案を検討するための情報と時間をくださいと言っているルールに過ぎません。村上さんがルールに従って、株主らのために情報と時間を提供したら、少なくとも取締役会決議で対抗措置が発動されることはありません。

Q)日本で有事導入型の買収防衛策が発動されたことはほぼありません。思い浮かぶのは2007年に米ファンドのスティール・パートナーズから買収を仕掛けられたブルドックソースが発動した事例ですが、このときは裁判で適法とされました。今回はどうなのでしょうか。

A)そもそもブルドックの件があったから、買収防衛策を導入するにはきちんと事前に株主総会で承認を取りましょうね、となったはずです。さらに言うと、そうした買収防衛策を導入した企業は多く出ましたが、今は逆に激減しています。

ブルドックは株主総会で特別決議を成立させて導入しました。今回は私が21日からTOBを開始したら、株主総会を開かずに取締役会と第三者委員会で導入を決めようとしています。これは絶対にやってはいけないことです。

会社が私に質問したいことがあるなら、金融商品取引法に基づいてTOB期間中でも質問できます。なんなら日経ビジネスの媒体をお借りして、東芝機械の社長と公開討論しても構いません。聞きたいことがあるなら答えますし、こちらも聞きたいことはたくさんあります。そのためならシンガポールから帰国します。

ブルドックソースの件があったから買収防衛策を導入するにはきちんと事前に株主総会で承認を取りましょうねってなりましたっけ?村上さんがおっしゃっているのは、東芝機械さんが公表した対応方針のP20にある「経済産業省企業価値研究会2008年6月30日付報告書「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策のあり方」の提言内容のことでしょうか?↓これを読んだほうがいいですよ。

https://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g80630a01j.pdf

ちなみに日本技術開発事件において裁判所は「取締役会は、株主が適切に・・・判断を行うことができるよう、必要な情報を提供し、かつ、相当な考慮期間を確保するためにその権限を行使することが許される」とし、「必要な情報 提供と相当な検討期間を得られないことを理由に株主全体の利益保護の観点から相当な手段をとることが許容される場合も存する」と判示しているらしいですよ!!!

そもそも株主総会にはからず取締役会決議で買収防衛策を導入している会社はありますよ(例:エーザイ、GMO)。企業価値研究会は取締役会決議での買収防衛策導入を否定していませんよね?ヨロズの裁判所の判断でも引用されてませんでしたっけ?

また「これは絶対にやってはいけないことです」っておっしゃってますけど、単に東芝機械さんが設定したルールを守ればいいだけでしょ?なんでそんなにルールを守るのがイヤなんですか?特に今回のTOB価格はBPSと同額なんですから、株主こそちゃんと検討するための情報と時間が必要なはずなのですから。

あと金商法で認められた質問権ですが、あれは機能しません。だって理由を付ければ回答しなくていいんですからね。機密に該当するから答えられないとか質問が具体的じゃないから答えられないって回答でもいいんですから。機能しない質問権を行使しても株主らのために十分な情報が得られないと考えた東芝機械さんが苦肉の策として今回の対応方針を公表したんじゃないですか?だったら株主らのためにもルールに従って十分な情報と検討するための時間を提供したらいかがですか?

買収防衛策とはいかなる買収提案の実現をも阻害するための施策などではありません。株主らが買収提案に応じてよいかどうかを検討するための情報と時間を確保するための施策です。皆さん、誤解しないようお願いしますね。

ところで東芝機械さんはもう大人の対応をしてあげてもよいのではないかと思います。詳しくは以下のコラムで!!!皆さん、ごめんなさい。これは有料です(笑)

No.750 東芝機械vs村上ファンド~僕ならこう戦います~

 

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