2020年03月24日

今後村上さんたちは攻め方を変えてくるだけです

東芝機械の有事導入型買収防衛策が成功したとして、平時の事前警告型買収防衛策をやめて東芝機械と同じことをすればよいのでしょうか?たぶん今後、村上さんたちは投資先に対するアプローチや攻撃方法を変えてくると思います。村上さんたちの狙いをよーく考えてみてください。

村上さんたちが今回東芝機械に批判された点は何でしょうか?ISSがなぜ対抗措置発動議案に賛成推奨したのでしょうか?「村上さんたちが明確な経営方針を示さないから」でしょうね。そして「部分的買収であり、残存株主が村上さんたち主導の経営が行われることで悪影響を被る恐れがある」でしょうか?だとしたら、こういう批判がなされない攻撃方法を選択すればよいだけです。

例えば、今回、東芝機械に多額の配当や自社株買いを本音ではやらせたいと考えて、その方法としてTOBを仕掛けることで圧力を加えようとしたとします。村上さんたちは今回、明確な経営方針を示さず、TOB後の所有割合も最大で約44%です。簡単ですね。明確な経営方針を示し、TOBで集める株式を100%にしてしまえばよいだけです。ま、明確な経営方針についてはどう書けばよいのか私も専門家ではないのでわかりませんが、そもそも100%集めるのであれば、株主にとってはTOB後の経営方針など関係ありません。だってもう株を売ってしまっているのですから。極端な話ですが、100%集めるTOBであればTOB後の経営方針を示さなくてもよいと考えることもできます(ただ、発動に関して裁判になったときは経営方針の有無も裁判所が重視する点になる可能性はあります)。

今回村上さんたちが仮に失敗するとしたら、それは単に部分的買付にしてしまったからではないでしょうか?全株買収であれば、ISSが賛成推奨したとは思えません。TOB価格が焦点になったのではないでしょうか?そう考えると、本当は村上さんたちも全株買収という条件でTOBを仕掛けたかったのかもしれませんが、そこまでのお金はなかったのでしょうかね。

いざとなったら有事導入型買収防衛策で対抗すればよいという考え方は危険です。そう考えてしまうと、常日頃から買収防衛策や企業防衛、危機管理について何も考えなくなってしまうからです。常日頃から企業防衛について何も考えていない会社が、いざというときにハイレベルな有事導入型買収防衛策を使って会社を守ることなど不可能です。また、有事導入型買収防衛策で守れるのは、限られた買収提案のみです。もちろん平時の事前警告型買収防衛策にも限界があるのは事実ですが、そもそも、確保できる情報と時間には大きな差があります。有事導入型買収防衛策で守れるのは、相手があきらかに濫用的買収者で、かつ、経営方針を何も示さず、部分的な買収提案という条件を満たしたときだけではないでしょうか?

もう一つ重要な点があります。仮に今回臨時株主総会で対抗措置発動議案が普通決議で可決されたとしても、村上さんたちはTOBを撤回すると言っています。また、どうも発行差止請求をしないようにも見えます。そうなると、今回の対抗措置発動に関する裁判所の判断がまだわからないということです。

できる限りの努力をして平時の事前警告型買収防衛を継続すべきと考えます。そもそも有事導入型買収防衛策は有事における苦肉の策であり、平時の事前警告型買収防衛を導入していれば、そもそも有事にならない可能性がありますので。

 

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