2020年05月26日

大戸屋 窪田社長のインタビュー記事(日経ビジネス)

以下、日経ビジネスに大戸屋の窪田社長のインタビュー記事が掲載されています。

「不誠実なコロワイドには寄り添えない」大戸屋HD・窪田社長

ちょっと抜粋しながらコメントします。

窪田氏:店内調理を絶対に変えるつもりはありません。手作りのおいしさには必ず違いがあります。例えば幼少期に食べた母親の料理って作り置きで冷めたものでもおいしいでしょう。手作りだとお弁当にして冷めてもおいしいのです。手作りのおいしさを提供することが我々の役目です。

店内調理を変えないとか、おいしさとかははっきり言いますと、どうでもいいことです。株主にとっては、です。当然ですが、大戸屋の経営陣は自社の経営理念を大事にすべきでしょうし、理念にそった経営をしていくことが大切なのでしょう。しかし今回の株主提案は、コロワイドと大戸屋現経営陣にどちらを経営を任せるか、が焦点なのです。

理念については株主もわかっていますし、大事にすればいいことです。ただ、それを重視した結果、これまでの業績がどうだったのか、部分的にでもセントラルキッチンを活用したほうが業績がよくなるのではないか、といったことも問われています。

「手作りだー!」だけでは株主がついてきません。しかも窪田社長は絶対に主張しなくてはならないことをインタビューでちゃんと主張していません。今回のコロワイドの株主提案の問題は何でしょうか?それは19%にすぎない株式しか持っていないコロワイドが、これからTOBをしかけて子会社化するにもかかわらず、その条件を明示せずに大戸屋の取締役会を支配してもよいのか?という点です。

株主に対しては、コロワイドが大戸屋の取締役会を支配したら、その後に実施されるかもしれないTOBは友好的TOBとなり、さほどのプレミアムが支払われないリスクがあるということを訴えなくてはなりません。しかも報道によると第三者割当増資も組み合わせる可能性があるそうです。株価の重しになる可能性もありますね。

株主には、いったいいくらで買い取ってもらえるのか、部分的買収で一部しか買い取ってもらえないのではないか、という状況で本当にコロワイドに大戸屋の取締役会を支配させてよいのかを検討してもらう必要があるのです。この点を大戸屋は大いに主張すべきなのです。反対意見表明で主張はしているものの、味、店内調理、手作り、創業者の理念、セントラルキッチン反対、で焦点がぼけており、本当の問題点が浮き彫りになっていません。

窪田氏:当社の株主は個人が大半で、その多くはお客様でもあります。我々が店内調理を守り抜き、今の味を変えずに経営するという姿勢が伝われば、我々を支持してもらえると思います。

ムリです。そういう株主も一部いらっしゃるかもしれませんが、株主と言うのは大戸屋の理念に共感して株を買っているのではありません。大戸屋の株を買ってもうけることを期待しているのです。

ーコロワイドに対抗するために友好的な第三者であるホワイトナイトを探すつもりはないのですか。

窪田氏:今のところその考えはありません。今はとにかく中計で掲げたことを実践することが大戸屋の未来をつくると信じています。それを株主にもご理解いただくことが肝要です。

この勝負はホワイトナイトがいないと負けます。

ーコロワイドは仮に株主提案が否決されても、TOB(株式公開買い付け)などの手法により、大戸屋HDを子会社化することを諦めないと明言しています。

窪田氏:まずは次の株主総会で会社提案の取締役候補を承認いただくことが先決です。株主提案で負けた後にコロワイドがTOBをすること自体は法律違反ではありませんが、非常に不誠実だと思います。そうした点でも我々とは価値観が真っ向から異なる会社であると感じています。我々が逆の立場であれば、相手の考え方を聞きつつ、事を進めます。そうした協議もなく、拙速にM&Aありきの態度を見せるのは我々の考えとはかけ離れています。

不誠実どころか、株主にとっては適切なプレミアムをのっけて、適切な株数を買ってくれるのであれば誠実な行動です。上場している以上、敵対的TOBはどの会社にもしかけられるリスクがあります。そのリスクをお家騒動のときから放置してきた大戸屋の経営陣の責任です。私から見れば、敵対的TOBが起きるリスクはお家騒動時からあったのに、それを放置してきた大戸屋の経営陣のほうが「会社」に対して不誠実です。

大戸屋はお家騒動のときから、敵対的TOBをしかけられるリスクをずーっとかかえていました。私、以前から指摘しています。かならず大戸屋には敵対的な買収者があらわれる、と。なぜかというと、過去、そういうケースがあったからです。ドン・キホーテvsオリジン東秀とそっくりな状況だったからです。

大戸屋の経営陣がそのリスクに気付き、適切な防衛行動をとっていたら、このような状況にはならなかったのです。そのリスクに気付かず、リスクを放置してきた経営陣に責任があります。

 

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