2020年07月09日

コロワイドのプレスリリースについて

ではコロワイドが公表した敵対的TOBのプレスリリースを詳しく読んでいきましょう。

https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200709459725.pdf

公開買付者は、これらの観点から、本公開買付けにおける買付予定数の下限を、公開買付者の要請等によって開催される対象者の臨時株主総会において公開買付者の指名する者が対象者の取締役となる場合に、当該事実と併せて、公開買付者が採用する国際会計基準に照らし、公開買付者による対象者への実質的支配が確立しているものとして対象者が連結子会社になり得る水準を目安に、所有割合にして25.84%(1,872,392株、公開買付者の現保有分を加味した所有割合にして45.00%) に設定する一方、対象者の連結子会社化とその後の事業再建を通じて公開買付者が得られるメリット及び公開買付者が本公開買付けに要する投資額の合理性を総合的に勘案し、上限を 32.16%(2,330,000株、公開買付者の現保有分を加味した所有割合にして51.32%)にそれぞれ設定することといたしました。

今回の公開買付条件として、下限を設定したのはこういう理由だそうです。しかし本当の狙いは以下のとおりと私はにらんでいます。

https://ib-consulting.jp/newspaper/2548/

2020年6月25日に開催された対象者の第37回定時株主総会における決議の結果としては、 公開買付者による株主提案の取締役候補者の選任は否決されました。当該結果は、対象者における公開買付者以外の株主の皆様によるご判断として公開買付者において真摯に受け止めつつも、対象者が2020年6月26日に公表した臨時報告書及び同年6月29日に公表した「当社株主総会における提案株主様の議決権行使について」によれば、同年6月25日開催の対象者の第37 回定時株主総会において、公開買付者による株主提案への賛同意思表示が確認できなかったことから、公開買付者が有する議決権数(13,879 個)は、公開買付者による株主提案の賛成割合の計算における議決権数の分母には含まれるものとされている一方で、公開買付者による株主提案の賛否いずれにも加算されていないとのことです。仮に当該株主提案の提案者たる公開買付者が保有する議決権を賛成として集計した場合、すべての議決権行使者に占める公開買付者による株主提案への賛成割合は40%を上回っているものと推計されます。

おっしゃるとおりですね。たしかにコロワイドによる株主提案は否決されましたし、拍手しなかったからコロワイド分は賛成個数に算入されなかったものの、コロワイドの分を入れたら42%程度の賛成率でした。けっして低い賛成率ではなかったのです。

なお、公開買付者は、対象者の少数株主との関係におけるいわゆる強圧性の問題について、 以下のとおり考えております。

強圧性(すなわち、上限を定めて本公開買付けを実施する場合において、本公開買付けの成立による不利益を回避するために、少数株主が本公開買付けに応募することにつき誘引される問題)が存在するためには、対象者の少数株主において、公開買付者グループの支配下では対象者の企業価値が毀損されるとの認識が必要になるものといえます。そして、一般に、このような認識が認められるのは、公開買付者において明確な経営方針を示さないなど、対象者の経営への関与の態様が全く不明瞭な場合であると考えられます。一方、本公開買付けにおいては、公開買付者は対象者と同業となる事業会社であり、本書においても、本公開買付け後における経営方針等について、上記のとおり明確に提示しております。なお、公開買付者としては、対象者の株主総会において公開買付者の株主提案が否決された上記事実からは、「対象者執行部による経営の方が、公開買付者による経営よりも「相対的に」対象者の企業価値向上に資する」と判断した株主が一定数存在することが伺えますが、公開買付者による経営方針の如何を問わず「公開買付者による経営により対象者の企業価値が毀損される」と判断したことが示されたとまではいえないものと考えます。 よって、本公開買付けにおける対象者の少数株主が、公開買付者が対象者の支配株主となった場合に対象者の企業価値が毀損すると考えているとまではいえないことから、強圧性が認められる事案とは異なるものと考えます。 換言すれば、上記強圧性の問題に対する配慮として、公開買付者は、そもそも公開買付者は 対象者と同業となる事業会社であり、本書においても、本公開買付け後における対象者の経営方針等について明確に提示しており、公開買付者が対象者の支配株主となった場合に対象者の 企業価値が毀損するものではないことを十分に説明しております。 以上のとおり、本公開買付けにおいて、強圧性は問題とならないものと考えます。

簡単に言えば「ボクたちは旧村上ファンドとは違います」ってことですね。東芝機械に対して旧村上ファンドが敵対的TOBをしかけたときも、TOBに上限を設定していましたから、強圧性については論点になりましたし、おそらくISSも強圧性を問題視して東芝機械の買収防衛策発動に賛成推奨をしたのだと思われます。

今回のコロワイドの敵対的TOBは上限を設定してはいますが、支配したのちの経営方針を明確に示していますから、まあ強圧的だとは言いにくいでしょうね。コロワイドは大戸屋が当然強圧性を指摘してくると考えたから、こういう反論をあらかじめしているのだと思われます。

しっかりとした内容だと思います。

公開買付者は、対象者の業績回復を通じて企業価値を向上させるべく、経営体制の刷新を含 むコーポレート・ガバナンスの再構築を企図しております。 具体的には、公開買付者は、本公開買付け成立後に公開買付者の要請により開催される対象者の臨時株主総会等において経営体制を刷新いたします。本日現在の想定としては、対象者執行部との間での協議の機会が得られず、又は協議が整わない場合においては、対象者の代表取締役を含む現取締役全員の解任議案と公開買付者の役職員2名を含む公開買付者が推薦する取締役7名の選任議案を提案し、これらの議案が承認された後に、公開買付者の役職員を対象者の代表取締役に選任することを考えております。なお、公開買付者は対象者に対して、本公開買付け開始後、対象者の本公開買付けに対する意見表明の内容その他の動向を考慮しつつ、当該株主総会の開催について、できるだけ速やかに、遅くとも本公開買付け成立後1か月以内を目途として請求する予定です。なお、当該株主総会において公開買付者が推薦する取締役選任 議案では、当初株主提案候補者のうち、対象者の現取締役5名を除いた候補者7名を対象者の 取締役候補者に指名することを中心に検討しており、本日現在、当該7名の候補者と個別に確 定的な合意はしていないものの、同人らに打診することを想定しており、同人らに対しては再 度打診する可能性について伝達しています。(当初の株主提案においては、窪田健一氏、山本匡 哉氏、三森教雄氏、池田純氏及び戸川信義氏についても取締役候補者としておりましたが、本 公開買付け成立後において対象者は公開買付者の連結子会社となり、公開買付者の連結財務諸 表に直接的な影響を及ぼすところ、公開買付者自身が強力なリーダーシップを発揮して短期間 のうちに対象者の企業価値を向上させる必要性がより一層高まることから、本公開買付け成立 後においてあらためて株主提案を行う際、対象者執行部との間での協議の機会が得られず、又 は協議が整わない場合においては、すべての取締役候補者を公開買付者が指名する方がよいと の判断に基づき、これらの5名のいずれをも取締役候補者として指名しない方針とすることを 想定しております。)

大戸屋と協議ができない場合は全役員を解任する予定のようです。新たな取締役は株主提案の内容と同じのようです。ということは創業家の方も???

また、公開買付者は、従前より、対象者グループが営む「大戸屋」の強みは、「店内調理」とこれにより担保される品質、及びこれらに対するお客様の信頼にあると考えており、本公開買付け成立後においても、公開買付者は、「店内調理」を継続し、お客様の信頼に足る品質を担保することで、対象者の第37回定時株主総会においては、公開買付者の認識によれば、対象者執行部のセントラルキッチンに関する恣意的な情報操作及び情報の歪曲とこれに基づく誤誘導の 影響により株主提案に反対されたと推測される対象者の一般株主の皆様の多くのご期待にも沿えるものと考えております。

店内調理はちゃんと続けますよ、株主提案のときは大戸屋による情報操作と歪曲で誤解した株主の期待にも沿えますよ、と説明していますね。

加えて、本公開買付けが成立した場合には、対象者は公開買付者の上場連結子会社となりますが、公開買付者は、対象者の上場維持を前提としている理由の一つとして、上場企業に止まることにより、一般株主の皆様及び市場からの適切な監視・牽制を 受けることが、対象者自体の企業価値向上に資すると見込まれることを掲げております。そこ で、公開買付者は、本公開買付け後においては、対象者の決算説明及び株主総会を一般株主の 皆様に対する貴重な説明及び対話の機会と捉え、これらを通じ、対象者の事業再建の状況につ いて、積極的に説明責任を果たしてまいりたいと考えております。

上場を維持する理由も丁寧に説明していますね。

公開買付者は、本公開買付価格を決定するに際して、公開買付者及び対象者から独立した第三者算定機関としての笠原公認会計士事務所(以下「本算定機関」といいます。)に対し、対象者の株式価値の算定を2020年6月上旬に依頼いたしました。なお、本算定機関は、公開買付者及び 対象者の関連当事者には該当せず、本公開買付けに関して重要な利害関係は有しておりません。

笠原公認会計士事務所?公開買付代理人といい、算定機関といい、大手証券会社を使っていないのですね。なぜでしょうかね?

いろいろと気になる点はあるものの、しっかりとしたプレスリリースですね。さて、大戸屋はどう反論するのでしょうか?当然、「賛同します!」ってことにはならず、敵対的TOBであるとは思われますが。

 

 

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