企業防衛は1日にして成らず このニュースはぜひ読んでください
日経ビジネスさんがとてもいい記事を書いていらっしゃいます。
コロワイドのTOB成立 大戸屋HD、企業防衛は1日にして成らず
そうです!企業防衛は1日にして成らずなのです。これは私が当社のHPを通じて何度も何度も、千回くらい言っていることです!おっしゃるとおり、企業防衛は攻められてから考えても遅すぎるのです。記事によると大戸屋はホワイトナイトを実は探していたようですが、いったいいつから探していたのでしょうか?株主提案がなされてから、でしょうか?それとも敵対的TOBが開始されてから、でしょうか?少なくとも、創業家が保有する株式がコロワイドに移った瞬間から考え始めないと遅いでしょう。
しかしこれは大戸屋に限った問題ではないのです。皆さんは最近、これだけ敵対的TOBが日本で起きているのに、買収防衛策の導入が盛んだった2006年~2008年頃ほど、企業防衛についての情報を集めているでしょうか?2006年~2008年頃ほどの熱量をもって企業防衛について議論しているでしょうか?してないと思います。
では証券会社が皆さんのところにあのころの熱量をもって企業防衛関連の情報提供をしているでしょうか?していないと思います。
ではなぜ皆さんが企業防衛についての情報収集をあのころほどしていないのでしょうか?それは以下のような理由ではないかと私は想像します。
①安定株主比率が低くて、買収防衛策を導入できないから議論してもムダ
②もう買収防衛策を廃止してしまった。そして廃止の議論のときに「もうみんな廃止している」って言っちゃったから、いまさら「やっぱり敵対的TOBが起きているからもう一度議論しましょう」とは言いにくい。
③もう買収防衛策を導入する時代ではない。時代は株主主体のコーポレート・ガバナンスだ!
④あのころ熱量をもって議論したけど、その後当社には特に買収提案の気配はない。当社がターゲットになるとは思えない。
⑤買収防衛の王道は株価向上だ!
⑥そもそも証券会社が情報提供をしてこない。
では、以下のとおりご説明します。
①安定株主比率が低くて、買収防衛策を導入できないから議論してもムダ
安定株主比率が低ければ買収防衛策を導入するのは確かにしんどいです。でもそこで思考停止していませんか?買収防衛策の導入方法の工夫を聞いたことがありますか?株主総会で通すための工夫を聞いたことありますか?ないでしょう。でも実際にはあります。アタマに汗をかいて考えれば工夫は思いつくのです。例えば以下。
No.493 三菱地所が買収防衛策を廃止するだろうと報道されていますが、こうすれば可決できる
それと以下のようなものもあります。工夫は一つだけではありません。
②もう買収防衛策を廃止してしまった。そして廃止の議論のときに「もうみんな廃止している」って言っちゃったから、いまさら「やっぱり敵対的TOBが起きているからもう一度議論しましょう」とは言いにくい。
いっときの恥をしのんで、もう一度議論を始めるべきです。そうしないと、後で痛い目を見ます。誰かに買われてからでは遅いのです。これだけ買収防衛策を廃止しているケースが増えている中、くわえて安定株主比率が低下する中、誰だって「もう買収防衛策を維持できない」と考えてしまいます。仕方のない判断です。誰も買収防衛策を継続するためのアイデアを提供してくれなかったのですから。
ただし、当時の廃止は仕方のない判断だったとしても、今議論を再開しないのはダメです。これだけ敵対的TOBが増え、アクティビストの活動が活発化しているのに、議論を再開しないのは無責任です。何もしないと、いずれ貴社がターゲットになり「あのとき議論しておけばよかった」ということになります。日経ビジネスの記事でも窪田さんが過去の判断を後悔しています。
③もう買収防衛策を導入する時代ではない。時代は株主主体のコーポレート・ガバナンスだ!
間違っています。買収防衛策の導入が盛んだったころよりも敵対的TOBが増え、アクティビストの活動が活発化しています。今買収防衛策の議論をしないでいつするんですか?という話です。ちなみに、買収防衛策は買収提案の実現を阻害するためのルールなどではなく、株主をはじめとしたステークホルダーが買収提案の内容を検討するための情報と時間を確保するためのルールです。経営者の保身のためのルールなどではありません。
正々堂々と議論し、必要に応じて導入すべきです。
④あのころ熱量をもって議論したけど、その後当社には特に買収提案の気配はない。当社がターゲットになるとは思えない。
そう思って買収防衛策を廃止したのが川崎汽船ではないでしょうか?「名門川崎汽船がアクティビストのターゲットになることなどない」「名門川崎汽船が敵対的TOBのターゲットになることなどない」と考え、買収防衛策を廃止したのかもしれません。廃止した直後にエフィッシモが大量保有報告書を提出し、あれよあれよと言う間に保有割合が38%になりました。そしてエフィッシモの方を取締役として受け入れました。
買収ターゲットになった会社のすべてが「うちの会社がターゲットになることなどないだろう」と根拠なく考えていたことでしょう。失礼ながら皆さんもそうではないでしょうか?
⑤買収防衛の王道は株価向上だ!
株価はいつ下がるかわかりません。そもそも株価は経営者がつけているものではなく、投資家がつけているものです。いくら経営をがんばっても、その結果が株価に反映されないことなどよくあることです。本来の企業価値と株価のギャップを見逃さないのがアクティビストです。
株価を未来永劫右肩上がりにできる経営者などいないと思います。いつか株価は下がることがあります。企業防衛、買収防衛策の議論は、現時点での会社のことを考えてするものでもあり、将来の皆さんの後輩役員や社員のことも考えてするものです。
⑥そもそも証券会社が情報提供をしてこない。
なぜ情報提供をしてこないのかを考えたことがありますか?昔に比べて買収防衛策を導入したほうがよいというアドバイザーが減ったと思いませんか?なぜでしょうか?
それは、皆さんに買収防衛策を導入してもらわないほうがよいからです。皆さんの会社が買収ターゲットになってくれたほうがよいからです。
以上です。私は「上場会社全社、買収防衛策を導入すべき!」と考えます。導入方法などいくらでもあります。