2020年09月17日

コロワイド幹部が語った「大戸屋買収」の真意

東洋経済に以下の記事が掲載されています。

コロワイド幹部が語った「大戸屋買収」の真意 TOB後の子会社化で業績不振を払拭できるか

TOBの条件を見直したのは、子会社化を前提としていたからだ。コロワイドはIFRS(国際会計基準)を採用しており、51%の株式を取得しなくても役員を派遣するなど「実質的な支配」基準で子会社化することができる。当初は株式取得の下限を45%くらいだろうとみていたが、40%でも大丈夫だとわかったため、応募状況を踏まえて下限を引き下げた。結果的に(取得した株数は)47%になり、当初の下限を上回る応募が集まった。株主の方々の理解が得られたと考えている。

TOB条件の見直しについては、この道のプロならだれでも読めていたと思いますよ。以下の記事は当初有料記事にしていましたが、コロワイドがTOBの下限を引き下げたときに無料公開しました。

(無料公開)コロワイドの敵対的TOBは実に巧妙です

「どうですか!ボクの予想が当たりましたよ!」なんて申し上げるつもりはありません。はっきり言って敵対的TOBの経験があるアドバイザーなら誰でも予想できることです。だからこの勝負はホワイトナイトがいなければ勝てなかったのです。大戸屋はホントに下限引下げの予想をしていなかったのでしょうか?だとしたらかなり不思議ですね。。。

まあ、いまごろは別の方法を考えていると思いますが。

https://ib-consulting.jp/newspaper/2743/

だが、あくまでも(買収を)友好的に進めたいという思いは今でも変わらない。上場企業なので、そうした経緯も含めてすべてオープンにしなければならず、敵対的に見えてしまったのかもしれないが決してそうではない。

いえ、これは完全に敵対的TOBです。しかし、だからと言ってコロワイドが「敵対的に見えてしまったのかもしれないが決してそうではない」などと言う必要はありません。だって誰がコロワイドのことを「敵対的買収者!」「乗っ取り屋!」と非難しましたか?誰もコロワイドを非難などしていません。コロワイドは堂々と「敵対的TOBの何が悪い?」と言っていいと思います。

コロワイドは3,081円という魅力的な価格を大戸屋株主に対して提示しました。少なくとも株主にとっては友好的TOBであり、コロワイドの経営陣にとってのみ敵対的TOBなのです(もちろん私は、全株買収ではないという条件においてある意味株主にとっても敵対的とは思いますが)。

一部の個人株主は「大戸屋の味を台無しにする!」とおっしゃってはいますし、TOBに応募しなかった株主もいます。そういう意味では全株主にとって友好的ではないと言えますが、まあいろんなステークホルダーがいますから全員を納得させる条件を提示するのは不可能です。一定の株主を満足させたら、経営陣にとっての敵対的TOBは成功するのです。

日本の経営者はここに早く気づくべきです。そして大戸屋に対する敵対的TOBは決して他人事ではないという点にも気づくべきです。これまで敵対的TOBを仕掛けられた会社は、おそらく全社「うちに敵対的TOBなんて仕掛けられるわけがない」と考えていたことでしょう。いや、それすら考えておらず、敵対的TOBや企業防衛についてこれまで何も検討してこなかったのでしょう。

だから敵対的TOBを仕掛けられ、経営の独立性を失ってしまったのです。今年は敵対的TOBがたくさん発生しました。いや、まだあと3か月ありますからまだ発生する可能性があります。昨年、12月にHOYAがニューフレアテクノロジーに対して敵対的TOB提案をしましたから。まだ何がおきるかわかりません。

このような時代において何を考えておく必要があるでしょうか?2005年頃、日本において第1次敵対的TOBブームがありました。でも昨今の敵対的TOBはあのころとは違っています。最近の敵対的TOBは事業会社によるものがほとんどなのです。本格的な敵対的TOB時代が到来したと言っても過言ではありません。

今何を考えておく必要があるか?それは企業防衛、企業価値向上です。それを普段から常に考えておく必要があります。そういったことを常に考え続け、適切な行動をとった会社だけが独立した上場会社として生き残っていくことができる時代です。

 

 

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