経営者と株主、真剣勝負 企業統治指針6年で総会一変
今日の日経朝刊1面に以下の記事があります。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC29BWO0Z20C21A6000000/
コーポレートガバナンス・コードが導入されて6年、株主提案は倍増し、会社提案に対して2割超の反対も相次いでいるそうです。そして「統治指針導入で企業は変わった」とあります。
20%以上の反対議案:2014年280社⇒2020年314社
株主提案:2014年25社⇒2020年48社
取締役選任案への反対率:2014年7.7%⇒2020年10.1%
議決権行使の個別開示:2014年31社⇒2020年58社
政策保有株:2014年1万1,198銘柄⇒2020年9,302銘柄
買収防衛策:2014年495社⇒2020年271社
・・・・そんなに変わりましたかね?20%以上の反対議案はたったの34社しか増えていませんし、株主提案も倍増したと言ってますが、25社が48社になっただけですね。取締役選任案への反対率も3%弱しか増えていません。
だいぶ変わったなあというのは持ち合いと買収防衛策ですかね?買収防衛策はほぼ半減ですし、ピーク時は600社くらい導入していますからずいぶん減りました。それもこれも「買収防衛策は経営者の保身だ!」「買収防衛策はコーポレートガバナンス重視に逆行している!」といった声にだまされてしまった結果でしょう。買収防衛策って経営者の保身には使えませんし、そういう仕組みになっていません。時間と情報を確保するためのルールです。
こう書くと「時間を稼いで買収提案をなかったことにするためのルールだ!」というとんでも発言をする人がいるのですが、時間を稼いだ結果なかったことになる買収提案ってなんなの???そもそもM&Aって時間がかかりますし、たった数か月の時間をかけただけで時間をかけすぎってのは乱暴な意見です。
記事にエーザイの内藤CEOの賛成率が67%しかなかったことが触れられています。この要因は以前から指摘されていることで、エーザイが取締役会決議で買収防衛策を導入しており、買収防衛策を総会議案にしない場合は経営トップの選任議案に反対するという基準を機関投資家やISSが設けているからです。
皆さん、覚えていないんですかね?そもそも日本の事前警告型ルールを初めて導入したのはパナソニックです。パナソニックも取締役会決議で導入し、役員選任議案に「各候補者は当社が導入した買収防衛策に賛成しています」と注を入れています。いわゆる間接承認タイプの買収防衛策の導入方法です。事前警告型ルールはそもそも取締役会決議で導入されることを基本観にしていたと記憶しています。だってそりゃそうでしょ?わざわざこれを株主総会にかける必要もないですし、経営判断の範疇でしょ?
買収提案時に時間と情報をくれと言っているに過ぎないルールすら認めないってのは、なんなんでしょうね?買収提案時に時間と情報があって、誰が損するんですか?時間と情報があればホワイトナイトを連れてこれるのに・・・て状況もあるでしょ?時間と情報があれば、BPSよりも安いTOB価格を引き上げられるのに、って状況もあるのでは?
アルツハイマー型認知症治療薬が米当局から承認され、10日間で時価総額は1兆円以上増えたエーザイのCEO選任議案に反対票を投じて株主は行動や考え方をあらためるべきでしょう。2014年の指針導入以降、経営者は株主に信頼されるために努力してきましたが、一方の株主が経営者に信頼されるための努力をしてきたように見えません。
この記事についてはまたいずれコラムで。