2022年08月15日

ジャフコによる旧村上ファンドを対象とした有事型買収防衛策を解説

旧村上ファンドがジャフコの大量保有報告書を提出したのは8月9日で保有割合は6.54%だったのですが、その後、光通信から再度相対で取得し、保有割合は11.87%になりました。以下のとおり、旧村上ファンドと面談したジャフコはすでに把握しており、本日、旧村上ファンド対策として有事型買収防衛策の導入を公表したという経緯のようです。

2022年08月09日 旧村上ファンド、今度はジャフコの大量保有報告書を提出

2022年08月15日 ジャフコが旧村上ファンドに対して有事型買収防衛策で対抗

2022年08月15日 旧村上ファンドがジャフコの変更報告書を提出

本日公表したジャフコの有事型買収防衛策の内容は以下のとおりです。

https://www.release.tdnet.info/inbs/140120220815520509.pdf

概要を簡単に説明します。ジャフコが有事型買収防衛策を公表した時点では、旧村上ファンドはまだジャフコ株を6.54%しか保有していないのですが、以下のとおり、ジャフコは旧村上ファンドと面談し、・8月5日時点で15%弱の株式を取得したこと、・ジャフコ株を51%取得する可能性があること、を示唆されたため、有事型買収防衛策を導入したようです。

当社は、2022年5月頃以降、村上世彰氏の影響下にある野村絢氏(村上氏の実子)、株式会社南青山不動産及び株式会社シティインデックスイレブンスによって、当社の普通株式を市場において急速かつ大量に買い集められており、2022年8月9日にシティインデックスイレブンスが提出した当社株式に係る大量保有報告書によれば、シティらは、2022年8月2日時点において、株券等保有割合にして6.54%に相当する当社株式4,793,600 株を保有している旨が確認されておりますが、後記のとおり、村上氏らによれば、シティらは、2022年8月5日時点において、当社株式を15%弱保有するに至っているとのことです。

当社は、要請に基づいて、2022年8月4日に野村絢氏及びシティインデックスイレブンスの代表取締役である福島啓修氏と、同月5日に村上氏、野村絢氏及び福島氏と、それぞれ面談し、同月5日の面談において、村上氏らから、シティらが当社株式を15%弱取得したことについて知らされるとともに、当社株式を今後も買い増し、当社株式の51%を取得する可能性があることを示唆されると共に、当社保有に係る株式会社野村総合研究所の株式を流動化等した上で、当社の株式時価総額の約3分の1、連結株主資本の40%にも相当する約500億円もの自社株買いを行うべき旨を要請されました。しかし、シティらが本株式買集めを開始したのは直近の2022年5月であり、かつ、当社が本株式買集めの事実を知ったのも8月5日に至ってからであって、本株式買集め及び本株式買増しについて、当社との間で何らの実質的な協議も行われておらず、その諸条件について当社にほとんど情報共有がなされておらず、また、本株式買集め及び本株式買増しの諸条件や、本株式買増し後の当社の経営方針等について、何ら実質的な説明を受けておりません。

まだ具体的な買収提案を受けている状態ではありませんが、ジャフコとしては

・(プレスP2冒頭)シティらに強い影響力を有している村上及び村上氏の影響下にあるファンド等の 過去の投資活動に関する裁判所の認定等に鑑みると、本株式買集めの目的ないしその結果が、当社の企業価値ないし株主の皆様共同の利益の最大化を妨げるようなものであるおそれは否定できないものと認識

・当社取締役会は、本株式買増しにより、シティらの議決権割合を 20% 以上とすることを目的とする当社株式の買付行為が行われる具体的な懸念があると合理的に判断できることを受け、また、シティらによる当社株式を対象とする大規模買付行為等が行われる具体的な懸念がある状況下において他の当事者による大規模買付行為等が企図されるに至る場合も想定

して導入するようです。

で、ジャフコが導入を公表した有事型買収防衛策ですが、、、

・本対応方針は、既に具体化している本株式買集めを含む大規模買付行為が行われる具体的な懸念への対応を主たる目的として導入されるものであり、平時に導入されるいわゆる事前警告型買収防衛策とは異なる

・独立した社外取締役4名で構成される独立委員会を設置

・買収防衛策の対象は旧村上ファンド ※正確には「①具体的な懸念のあるシ ティらによる当社株式を対象とする大規模買付行為等及び②シティらによる当社株式 を対象とする大規模買付行為等が行われる具体的な懸念がある状況下において企図さ れるに至ることがあり得る他の大規模買付行為等」ですが、まあ特定標的型とやらなんでしょうね。

・20%以上の株式を取得しようとする場合は買収防衛策の対象

・20%以上の株式を取得しようとする場合、その行為の60営業日前までに大規模買付行為等趣旨説明書を当社取締役会に提出してもらう

・大規模買付行為等趣旨説明書には、実行することが企図されている大規模買付行為等の内容及び態様等に応じて、公開買付届出書に記載すべき内容に準じる内容を日本語で記載してもらう

・当社は、買収者に対して、遅くとも大規模買付行為等趣旨説明書を受領した日から 5 営業日以内に、株主が株主意思確認総会において大規模買付行為等がなされることを受け入れるか否かを判断するための「必要情報」の提供を求める。不十分な場合は適宜期限を決めて追加的に情報提供を求める

・当社取締役会は、大規模買付行為等趣旨説明書を受領した日から60営業日以内で取締役会が合理的に定める期間を、大規模買付行為等の是非を評価・検討するための「取締役会評価期間」として設定する

・当社は大規模買付行為に対して反対で、対抗措置を発動すべきであると考える場合には、大規模買付行為等趣旨説明書受領後60営業日以内に株主意思確認総会を開催する。過半数の賛成が得られたら対抗措置発動。対抗措置は差別的行使条件のついた新株予約権の無償割当。

⇒つまり、大規模買付行為等趣旨説明書提出から60営業日以内に、買収者との質問と回答のやりとり、取締役会による評価、株主意思確認総会の開催を行う、ということ。

・対抗措置発動議案が承認されなかった場合は発動せず。ただし、ルール違反をしたら発動する。

はい、だいたいわかりました。たぶん東洋建設と同じですね。仕組みとしては平時型買収防衛策と同じで、今のところ発動議案はかけないようです。ただ、東洋建設と違うのは、おそらくですが、この有事型買収防衛策の導入を株主総会にははからない、ということではないかと思われます。臨時株主総会の基準日にかかる公表もしていますが、導入議案をかけるとは書いていません。

https://www.release.tdnet.info/inbs/140120220815520517.pdf

そして有事型買収防衛策のプレスP23「株主意思の尊重」を見ても、発動時に株主意思を確認するとあるものの、導入議案を臨時株主総会の議案としてかけるとは書いていません。また、P24「本対応方針の廃止の手続及び有効期間」を見ても「本対応方針は本日から効力が生じるものとしますが、その有効期間は、本日から1年間(2023年8月15日まで)とします。」と書いてあります。

東洋建設の場合は「当社は、本対応方針の導入を本議案としてお諮りすることを通じて、株主の皆様のご意思を確認させていただき、株主の皆様のご承認が得られなかった場合には、本対応方針を廃止するものとします。」「本対応方針の有効期間は、2022年5月24日から1年間とします・・・株主の皆様から本議案のご承認を いただけない場合には、当社取締役会は本対応方針を直ちに廃止いたします。」とあります。

東洋建設では実質否決されたのでしょうから、東洋建設よりも安定株主比率がかなり低い(というか安定株主がいない)ジャフコでは、同じような導入手続きを踏んだら否決されると考えたのでしょうね。取締役会決議によるルールの導入という点をどう評価するか、がポイントになると考えられます。

これ、機関投資家は「平時型買収防衛策を取締役会限りで導入するのと同じだよね?」と判断する可能性があります。そしてその場合、経営トップの選任議案に反対される可能性があります。

いろいろなリスクがあります・・・。今週木曜日のコラムでまとめます。

 

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