2019年12月20日

東芝のメッセージは誰宛のものでしょうか?

東芝がHOYAのTOBには応じないと正式に公表しました。またニューフレアテクノロジーに対するTOBの条件も変更しないようです。詳しくはこちら↓をご覧ください。

https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20191220_1.pdf

東芝(公開買付者である東芝デバイス&ストレージを含む)が公表したプレスに関して抜粋します。

ニューフレアテクノロジーは、当社グループにおける中核企業として非常に重要な役割を担っており、人材交流等も含めた良好な関係を構築してきました。また、ニューフレアテクノロジーにおけるマルチビーム描画装置の開発においては重要部品の共同開発を行っており、ニューフレアテクノロジーとの関係についてはより深化しつつあるものと認識しております。加えて、東芝デバイス&ストレージとのシナジー効果が期待されるエピタキシャル成長装置事業や、今後大きな成長が見込まれる新規事業も有しており、ニューフレアテクノロジーの重要性はより一層高まっていくものと考えております。

ニューフレアテクノロジーは東芝グループにとって、とっても重要な会社であることがわかりました。東芝グループの今後の成長において必要な会社なのでしょう?

ではなぜTOB価格を上げないのでしょうか?そんなに重要な会社で、かつ、HOYAが「東芝を含めた全株主から12,900円で買い取ります」と提示している状況において。

このため、当社は、本公開買付けの成立を目指す方針に変更はなく、東芝デバイス&ストレージが、2019年12月13日付でHOYA株式会社から公表されましたニューフレアテクノロジーの普通株式に対する公開買付けについては、上述の観点から応募しない方針とすることを本日開催の取締役会において決議し、東芝デバイス&ストレージとニューフレアテクノロジーとの一層の関係強化に伴う企業価値向上を図って参りますので、お知らせいたします。

これは東芝の株主向けのメッセージでしょうか?ニューフレアテクノロジーは東芝グループの成長に必要な会社だから、HOYAのTOBに東芝は応じないし、粛々とニューフレアテクノロジーに対するTOBを実施しますよ、ということですよね?

東芝は誰に対してTOBをしているのでしょうか?東芝機械という東芝グループから外れた会社を含めたニューフレアテクノロジーの一般株主に対して「あなた方が保有しているニューフレアテクノロジー株を11,900円で売ってください」とお願いしている状況ですよね?今回の東芝のメッセージはニューフレアテクノロジーの一般株主にどう響くのでしょうか?

ニューフレアテクノロジーの一般株主は東芝グループの今後の成長など知ったことではないのです。今保有しているニューフレアテクノロジーの株式をいったいいくらで買ってくれるのかにしか関心がありません。だって、ニューフレアテクノロジーは東芝のTOB後は完全子会社化され、上場廃止ですよね?ニューフレアテクノロジーの一般株主はTOB後、ニューフレアテクノロジーとの関係は一切なくなります。ですから、いくらで買ってくれるのか?にしか関心がありません。そりゃ当たり前です。

にもかかわらず、今回東芝が発信したメッセ-ジは「ニューフレアテクノロジーは東芝グループにとって必要不可欠な会社だ!HOYAにはくれてやらんぞ!」としか言っていないのです。これでニューフレアテクノロジーの「東芝機械」を含めた一般株主がHOYAより価格の安い東芝グループのTOBに応募しますかね?

本音はこうですよね?「だって東芝が応募しなければHOYAのTOBは成立しないよね?ニューフレアテクノロジーの一般株主の皆さん、どうします?HOYAのTOBに応募したくてもオレたち東芝が応募しないと成立しないぜ?おとなしく価格の安いうちのTOBに応募しときな!」ってことですよね?

これっていわゆる「強圧的なTOB」ではないですかね?

現在東証は上場子会社のガバナンスの向上等に関する上場制度の整備について「今回の見直しに加え、実質的な支配力を持つ株主を有する上場会社における当該株主と少数株主との間の利害調整の在り方、投資者が安心して投資に参加するために必要な少数株主保護の枠組み等について、「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」において引き続き検討を行います。」とあります。また「特に上場子会社のガバナンスに関して、上場子会社における独立した意思決定を確保し、少数株主の利益を保護するため」という記載もあります。

今回東芝はHOYAの提示したTOB価格については触れていません。高いのか、安いのか?にまさに親会社と少数株主との間の利害調整の在り方、少数株主の利益保護の観点から、TOB価格について一切言及しなくてよいのでしょうか?現在、ニューフレアテクノロジーの親会社である東芝と一般株主の利益は相反しています。にもかかわらず、東芝はHOYAのTOB価格には言及しません。私には東芝が暗に「もうニューフレアテクノロジーの一般株主は東芝のTOBに応募するしかないんだよ。あきらめなさい」と言っているように思えてなりませんねえ。

東芝にとってそれほどニューフレアテクノロジーが重要な会社で、かつ、HOYAが12,900円を提示している以上、TOB価格について何も触れない、一切引き上げないというのはさすがに厳しいんじゃないですかねえ・・・。

 

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