2020年01月28日

他人任せの防衛体制は終了です

今日の日経にまた銀行の株式保有に関する記事がありました。

3メガ銀の政策保有株削減、「岩盤銘柄」が壁に 金融庁、22年に資本規制強化

ただ、

金融庁が銀行の株式保有を厳しく評価する自己資本規制を2022年に始める。3メガバンクは5年ほど前から規制強化を見越した独自の目標を設けて政策保有株の削減を進めてきた。ただ、収益性などの観点から一段の削減を求める声は多い。保有上位には削減が難しい「岩盤銘柄」が残り、そこに踏み込めるかが焦点となる。

金融庁は保有株の損失リスクに備え、銀行が積むべき資本を現在の2.5~4倍に増やす方針だ。国内の大手行はすでに厳格なルールを適用し、影響は限られる。

国内の大手行はすでに対応済みなのか、影響は限られるそうです。

一段の削減は容易ではない。「売却交渉しやすい相手はほぼ手を付けた」(大手行幹部)ためだ。実際、メガバンクが政策株の開示を始めた11年から保有株数が全く減っていないか、増えた企業は19年3月時点で開示対象の約3割にのぼる。

ま、そうは言っても、銀行から「株を売らせてください」ってお願いが来るかもしれませんから、対応は検討しておいた方がよいのでしょうね。

「もし売却したいと言ってきたら、うちも銀行の株を売ると言ってやる!銀行だって安定株主が減ったら困るだろ?」 まず、銀行と貴社では持っている株式の額が違いすぎますね。事業会社単独で持っている銀行株なんて額がたかがしれています。それに銀行はもう安定株主比率なんて気にしていませんし、そもそも銀行株を20%以上買う場合、金融庁の認可が必要だと思います。ある意味銀行は守られています。

https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/regulation/07120301financial.pdf

https://www.fsa.go.jp/houan/151/hou151_01a.html

そもそも銀行やその他事業会社との持ち合いによる防衛って、あまり機能しなくなってきていると思います。銀行はドンドン株を売るし、それが今度は事業会社にも波及してくる可能性があります。というか、もう波及しているでしょう。安定株主だけで会社を守れる時代は終わったと言えます。そもそも安定株主による防衛は、いわゆる総会屋対策などがメインであり、安定株主だけで過半数を超えていた会社は少ないはずです。安定株主による防衛目的は敵対的買収では本来ないのです。

しかし現在は会社を攻撃してくるのは、総会屋といった存在ではなく、国内外のアクティビスト・ファンドや事業会社などです。このような買収者に安定株主対策だけ対抗しようとしてもそれはムリなんです。新しい敵対的買収時代を迎えるに当たっては、企業防衛体制も刷新する必要があります。

いわゆる事前警告型買収防衛策は2005年頃から導入が始まっており、また、最近では廃止する会社が増えていることから、旧態依然とした防衛方法と捉える方もいらっしゃるかもしれません。しかしよく考えてみると、事前警告型買収防衛策が本当に活用された場面って意外と少ないんです。有名なところだと、スティールパートナーズvsサッポロホールディングス、楽天vsTBS、日本電産vs東洋電機製造、エフィッシモvsセゾン情報システムズなどでしょうか?そんなには事例がないんですよ。

持ち合いでは対応できない時代になってきた以上、事前警告型買収防衛策の導入を真剣に考え直した方がよいと思われます。買収防衛策は決して買収提案の実現を阻害して経営者を守るための施策ではなく、情報と時間を確保して株主をはじめとしたステークホルダーの利益を守るための施策です。

 

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