2020年02月14日

No.494 百年兵を養うは一日これを用いんがためである を無料公開

コラムNo.494(2018年12月28日に掲載)を無料公開します。ちょっと表現をマイルドにして無料公開します。

原版は以下↓をご覧ください。

No.494 百年兵を養うは一日これを用いんがためである

今年最後のコラムです。「百年兵を養うは一日これを用いんがためである」とか「百年兵を養うは、ただ平和を守るためである。」という言葉があります。山本五十六の言葉でしょうか?詳しくないので深くは掘り下げません。

いざ敵が攻めてきてから慌てて兵隊を訓練しても対応できません。これが、私が買収防衛策は必要だし、日々敵対的買収や株主提案、ガバナンス関連事項などについて情報収集し、いざ当社に仕掛けられたらどうするかを検討しておくことが必要と考える理由です。今年1年、日本の株式市場で何が起きたでしょうか?最も象徴的な出来事は、やはり村上さんたちの実質的な復活であると私は考えます。2017年、村上さんたちは約38%の株式を保有していた黒田電気をMBKパートナーズに売却しました。これにより400億円のキャッシュが入ってきました。2018年はこのキャッシュをもとに、日本の株式市場で暴れまわったと見ることができます。もちろん、キャッシュを使い切った訳ではないでしょうから、まだまだ来年も大暴れすることでしょう。当然、黒田電気で得たキャッシュ以上のものをもっているはずです。

2018年は三信電気がターゲットになりました。他にもたくさんの企業がターゲットになりました。2017年末から2018年にかけて日本郵船がターゲットになりました。誰も三菱グループの中核企業が村上ファンドに狙われるなど想像しなかったでしょう。そもそも日本郵船自身が想定していなかったのでは?なぜなら日本郵船はかつて買収防衛策を導入していたのに廃止してしまいましたから。たぶん「買収防衛策、継続できなさそうだなあ。みんな廃止しているし、うちも廃止して問題ないだろ?」と考えて廃止したのでしょう。真剣に検討して導入し、必要性を日々検討していたら、廃止するなど考えなかったと思いますよ。まあ、アクティビストのターゲットになったことのある会社でも廃止する例はありますが、そういう会社は「もう来ないだろ?」と安易に考えたのでしょう。二度あることは三度あるという言葉を知らないのでしょうか・・・。

企業防衛体制を構築するには、ある程度のお金はかかります。多額にはかかりません。買収防衛策を導入したり、日々市場で発生するケースの情報収集をしたり、社内体制を整備したり、といったことにお金がかかるということです。弁護士やアドバイザーにかかるコストなどです。または、株主還元強化にかかるお金もあるかもしれません。しかし、このようなことにお金をかけておかないと、後で本当に痛い目を見ます。

三信電気は今年大博打を打ちました。三信電気はそうは言いませんが、外部から見ると明らかに村上さんたちに出て行ってもらうために自己株TOBを実施しました。200億円をかけて。200億円をかけたのに、村上さんたちは出て行ってくれませんでした。一部保有株を売ってくれたものの、自己株TOB後、また買い増し始めました。三信電気は自己株TOBにかけた200億円以外にも多額のアドバイザリーフィーを弁護士やアドバイザーに支払っていることでしょう。まさにドブに捨ててしまいました。

来年はどういう年になるでしょうか?「NY市場も日本市場もクラッシュしているから、アクティビストの動きも沈静化するのでは?」と思っていませんか?それがダメなんです。アクティビストの動きが沈静化するのは一時的なものです。彼らは決していなくなりません。皆さんの経営や財務が非効率である限り、ずーっと存在し続けます。ちなみに、皆さんの経営や財務がアクティビストの望む形になることはありません。なぜなら皆さんはアクティビストの主張する経営や財務にすることは「極端すぎる」と思っていらっしゃるでしょうし、ある程度の株主利益を犠牲にした非効率性はまともで中長期的な息の長い経営をしていく上でしょうがないと思っているからです。僕もそう思います。アクティビストの主張は極端な面があります。持ち合い株をすべてなくすことなど、多くの日本企業にとって不可能なことです。借入を増やして極端にレバレッジをきかせる財務体質になど怖くてできません。経営はゲームじゃありません。株式市場、株価だけを見て経営をしている訳ではありません。数多くの従業員と取引先を抱えている経営者にとって博打は打てないからです。

経営者とアクティビストの溝は、狭まることはあっても埋まることはありません。だからアクティビストがいなくなることなどあり得ないのです。だから経営者は強欲なアクティビストから従業員や取引先の利益を守るために、日々、企業防衛体制について考えておく必要があるのです。

だからと言って「よしわかった!経営企画や財務、総務のみんなに声をかけて勉強することから始めよう!」ではないのです。失礼ながら、皆さんは企業経営のプロではあっても、企業防衛のプロではありません。皆さんがやるべきことは社内で一から防衛の人材を育てることではありません。プロ中のプロを味方につけておくことです。そのために、皆さんがプロ中のプロを見極めるだけの力をつけておくことです。いろんなプロと称するアドバイザーの話を聞いてみてください。聞いているうちに、アドバイザーごとの良し悪しがわかるはずです。

皆さん、年末年始に以下のことを考えてみてください。

・当社を買いたいと思う想定バイヤーは?

⇒ストラテジックバイヤー、フィナンシャルバイヤー別に。

・株価+30%TOBを仕掛けられたとき、株主が応募しないよう説得するにはどういう材料で説得するか?

⇒どういう経営戦略、財務戦略を打ち出すか?

・究極、ホワイトナイトを頼むとしたらどの会社か?

⇒その会社と平時のうちからコンタクトをとり、究極的には平時のうちから経営統合することを考えてはどうか?

最後に、当社の今年を表す漢字は「飛」です。今年、コラムの無料配信を止め有料といたしました。皆さんは当社のコラムに価値があると考えてくださり、お金を支払ってくださいました。無料から有料にして顧客が一切集まらなかったらどうしようと不安に思いましたが、皆さんのおかげで今年当社は「飛躍」することができました。皆さんあっての当社です。やはりそう考えると「会社は誰のものか?」「経営者は誰のために経営をするのか?」についての答えは、株主のものでもあるけれど、顧客・従業員・役員・それらの家族のものでもあるし、顧客のために経営・よりよいサービスの提供をし、その結果の利益が株主に配分される、ということではないかと思います。株主と経営者がそれぞれをリスペクトしている会社がうまくいく会社ではないでしょうか?会社規模は小さいながらも、自分で経営してみて少しだけわかったような気がします。

皆様、今年1年、本当にありがとうございました。来年は今年以上に皆様の会社の企業価値向上に資するサービスを提供していくつもりですので、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

カテゴリからニュースを探す

月別アーカイブ