2020年03月16日

東芝機械の日経ビジネス記事を深堀してみましょう

日経ビジネスの焦る東芝機械、余裕とジレンマの村上氏側 新型コロナで戦況変化を少し深堀してみましょう。

買収防衛策導入の是非を巡る臨時株主総会を3月27日に控え、東芝機械が焦りを強めている。敵対的TOB(公開買い付け)を仕掛けている村上世彰氏が関与するファンドへの度重なる批判を公開書簡で繰り広げ、その様子はまさに「なりふり構わず」(銀行関係者)。一方、村上氏側はここにきて東芝機械の経営陣を評価するコメントを出すなど、「大人の対応」(同)を見せている。両者の違いはどこから来るのか。

東芝機械の村上さんたちへの批判は、私にはあまり「なりふり構わず」といった感じには見えないのです。むしろ、外為法に関する指摘など非常に冷静な批判のように見えます。一方、当初、村上さんたちの東芝機械に対する批判のほうが「なりふり構わず」のように見えましたが、最近は確かに大人の対応のように見えます。単に、本音ではTOBを撤回したくなってきたから、批判を抑えているように見えます。ISSの対抗措置発動への賛成推奨に対しても、村上さんたちは反論していません。対抗措置発動議案が可決されてくれることを望んでいるようにすら見えます。

買収防衛策導入の是非を巡る臨時株主総会を3月27日に控え、東芝機械が焦りを強めている。敵対的TOB(公開買い付け)を仕掛けている村上世彰氏が関与するファンドへの度重なる批判を公開書簡で繰り広げ、その様子はまさに「なりふり構わず」(銀行関係者)。一方、村上氏側はここにきて東芝機械の経営陣を評価するコメントを出すなど、「大人の対応」(同)を見せている。両者の違いはどこから来るのか。

性格には村上さんたちを対象とした対応方針の導入と対応方針に基づく対抗措置発動が今回の臨時株主総会の議案ですが、機関投資家はISSが賛成推奨を出しているからといっても、賛成しにくいと想定されます。東芝機械も、特別決議はムリだろうし、普通決議もどうなんだろうかと思っていることでしょうから、今必死に株主に対して呼び掛けているのでしょう。

東芝機械は少しでも不利な状況を挽回しようと、2月ごろから経済産業省や財務省にロビー活動を展開。TOBを実施しているファンドがシンガポールに居住する村上氏の実質的支配下にあるとして、外為法に照らしてTOB手続きに不備があると訴えてきた。しかし新型コロナウイルスの影響で財源確保や経済対策などの対応に迫られる両省の意向を知る関係者は、「彼らも東芝機械どころではない。外為法を行使してまで救う会社ではない」とけんもほろろだ。

外為法で助けた会社で有名なのは電源開発(J-Power)ですね。TCIという投資ファンドに9.9%を買われ、10%以上の株式取得に関する申請をしたものの、中止命令が出されたケースです。

一方の村上氏側。当初こそ応戦していたが、最近の公開書簡では「貴社経営陣の皆様が企業価値及び株主価値に対する責任を真摯に捉え始めたことを評価しております」、「経営改革プランを策定し、『不退転の決意と覚悟を持ってまい進する所存』と表明され、これまでの不誠実な経営や、それによるリストラの実施に対して役員として責任を取られ、役員報酬の一部を自主返上されたことは大きな前進です」と東芝機械を評価するコメントが増えた。

これを大人の対応と見るか、本音としてはTOBを撤回したいから東芝機械に対する批判を控えていると見るか、ですね。さすがにこの相場状況では3,456円で買いたくないと思っているかもしれません。東芝機械と村上さんたちの双方にとって、平時の事前警告型買収防衛策があったほうがよかったと思われます。

今度こそ中計をきちんとやり遂げる。つまり、自己資本利益率(ROE)8.5%を達成し株主還元強化、人員リストラによるコスト構造改善、経営陣の報酬削減などの施策を東芝機械はTOB発動後に表明した。TOBは終わっていないものの、企業価値向上策を実行に移してもらうという目的は果たしたことになり、村上氏サイドは東芝機械の株式をもはや買い集める意味がないかにも思える。プレミアム(上乗せ)が付いたTOB価格での株式取得にはコストがかかるからだ。

TOBに応じてほしくないから「禁じ手」の買収防衛策まで繰り出した東芝機械。当初の目的を達成しつつありTOBに応じてもらわなくてもよくなってきた村上氏サイド。両者の思惑ははからずも共通してくるわけだ。

なるほど。これを読めば読むほど、本当に平時の事前警告型買収防衛を継続しておけばよかったのにとつくづく思います。

だがそうは問屋が卸さないのが足元の株価だ。新型コロナウイルスで株式市場が全面安となり、東芝機械株の13日終値は2120円まで急落。TOB価格は1株あたり3456円なので、普通に考えれば一般株主はTOBに応じたいところだろう。

今の株価状況がTOB最終日の4月16日まで続き、村上氏サイドがTOBを撤回しない場合、TOBには上限の44%まで応募が集まる可能性が高い。一度発動したTOBは制度上、簡単には撤回できない。しかし村上氏サイドは3月に入り、買収防衛策が可決された場合は事前に申請した撤回条項に該当するためTOBを撤回する、と開示資料で明言した。

TOBを撤回すれば高コストで東芝機械株を買わなくてもよくなるが、それには臨時総会で買収防衛策が可決されることが条件となる。コーポレートガバナンスの改善をライフワークとする村上氏にとって、買収防衛策の発動を認めるのは本来、許しがたいことのはず。しかしそうならないとTOBを撤回できない。果実を得たはずの村上氏側にとっても、ジレンマを抱えるという皮肉な展開になっている。

双方の思惑が非常にわかりやすく説明されている記事ですね。普通に考えれば、今の相場状況で東芝機械株を(上限が付いているとはいえ)3,456円で買ってくれるなんてラッキーですし、対抗措置発動議案が否決されれば、村上さんたちのTOBが実行されると見て、東芝機械の株価は上昇するかもしれません。普通に考えれば上昇するでしょう。だとすると、株主はやはり対抗措置発動議案には反対票を投じる可能性が高いと言えます。

事前警告型買収防衛って、誰にとって必要で、何を守るためのものなんでしょうか?これ、経営陣の保身のための策ではないんですよ。かと言って、株主、従業員、取引先、地域社会だけを守るためのものでもないんです。買収者を守るための策でもあるんです。敵対的買収って、デューデリをしませんよね?相手先の経営陣ともしっかりとした話し合いをせずに実行しますよね?相手先の経営陣や従業員のことを知らずに実行しますよね?会社の本当の中身がわからずに実行しますよね?

買収防衛策って、買収者にとってもあったほうがよいルールではないでしょうか?

 

 

 

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