2020年10月28日

なぜ価格の高いTOBに賛成しないのか?

簡単です。「会社は株主だけのものではないから」です。以下日経ビジネスの記事です。

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00804/?P=2

島忠はTOBに対し賛成推奨を出しているDCMから、「引き続きうちとやってほしい」と言われているもよう。だが、TOB価格がより高いであろうニトリの案に反対できるのだろうか。島忠には物言う株主、村上世彰氏が自ら率いるファンドを通じて8%強を出資している。仮にニトリのTOBに反対推奨する場合、村上氏が「なぜ、より高値を提示したニトリ案に賛成しないのか」と言い出すだろう。

村上さんが「なぜより高値を提案したニトリ案に賛成しないのか?」と言われたら、島忠は「従業員や取引先がニトリと一緒にやることを嫌がっているからです」と答えればよいです。村上さんは「なにー!TOBは株主に対して提案されているものだ!貴社は身売りすることを決めたんだろ?だったらより高値で買ってくれる先の提案に賛成すべきだ!レブロン基準を知らんのかー?」って言うと思います。

島忠は身売りすることを決めたのではなく、DCMと今後一緒にやっていくことを決めたのです。たしかにTOBは株主に対する提案ですが、取締役会が賛成意見を出すかどうかは価格だけで決めるものではありません。会社のステークホルダーが株主だけであれば当然価格だけを見て決めればよいです。でも会社を構成しているステークホルダーは株主だけではありません。

従業員、取引先、地域社会、金融機関などなどいろいろといらっしゃいます。例えば従業員が「ニトリの傘下になるのは絶対にイヤだ!一緒になるくらいなら全員やめる!」って言ったら?島忠の経営は実質ストップします。取引先も離れていくかもしれません。TOBは価格がもっとも大切ですが、TOBを仕掛けられた会社の経営陣は価格だけでは決められないのです。あらゆるステークホルダーの考え方を整理し、利害を調整し、その上でどのTOBに賛成するのかを決めるのです。

ただしニトリのTOB価格が高い場合、安定株主以外の株主はニトリのTOBに応募してしまい、成功するかもしれません。だから島忠の経営陣は情に訴えた意見表明だけでは勝てないということです。これらをごちゃごちゃにしてしまうのはよくありませんよ。TOBはたしかに価格が重要、でもそれだけで勝敗が決まるものではありません。でも価格は重要と立ち返ることも大切です。

さあDCMはどうするか?一般的に見て圧倒的にニトリが優勢なのでしょう。だからこそ私はDCMの一発逆転が見てみたいですね。DCMは覚悟を決めれば勝てる余地はまだまだあるのですから。


 

 

 

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