2020年12月09日

なぜオアシスは三井不動産のTOBに応じるのか?

オアシスが三井不動産のTOBに応募するそうです。オアシスは東京ドームに対して今年1月に1,300円で全株買い取る意向を示していたとされています。以下、三井不動産の公開買付届出書に記載されていることです(抜粋、要約)。

・そこで、2020年6月上旬に東京ドームの紹介を依頼するため、オフィスビルを賃貸し親交のあった読売新聞グループ本社に対して、東京ドーム株式の取得を検討する旨について表明。

・読売新聞グループ本社は東京ドームから2020年1月末に1月30日付でOasisよりレターを受領した旨の連絡を受け、重要顧客としてその対応について相談を受けていた。

 ⇒東京ドームが次期中計の検討をしていたところ、2020年1月31日に株主であるOasisより、Oasisが運営するウェブサイトを通じて「A Better Tokyo Dome」という経営改善提案が公表。さらにOasisより、DDの完了と買収資金の確保を含む様々な前提条件のもとで Oasisが1,300 円で全株買い取る意図がある旨の法的拘束力のない1月30日付のレターを受領

 ⇒東京ドームは2020年1月下旬にLAとして西村あさひ法律事務所を選任し、2月中旬にFAとしてGCAアドバイザーズを選任していた。

 ⇒2020年6月上旬から対象者自ら又はGCAを通じて、一定の事業シナジーが見込まれることが期待できる複数の事業戦略パートナー候補先企業に対して資本業務提携を行うことについての打診を行い、6月中旬から事業戦略パートナー候補先企業各社との間で資本業務提携への関心の有無の確認を目的とした面談及び協議を開始した。

三井不動産が東京ドームにTOBをかけた際、オアシスが取り得る行動に関しては以下のとおり想定されました。

三井不動産による東京ドームへのTOB~今後想定されることは?~

私は以下のとおり「①なにも起きない」と書いたものの、さすがにそれはないかなあと思っていました。

①なにも起きない

三井不動産によるTOB条件が株主にとって、特にオアシスにとって満足のいく内容であれば何も起きません。一方で、TOB価格がオアシスを中心とした株主にとって不満足な内容であれば以下のようなことが起きるかもしれません。ちなみにオアシスの東京ドーム株式の平均取得価格は1,032円/株です。

おそらく「TOB価格が安いんじゃい!」とネガティブキャンペーンは張るだろうな、と思っていました。しかし結果は何も起きずです。オアシスが何も行動を起こさなかったのにはいろいろと理由があるのかもしれません。しかし、オアシスが1月に東京ドームに対して1,300円での全株買い取りを打診していた以上、おそらく何かするだろうと考えるのが普通でしょう。現に株価もTOB価格である1,300円を超えていました。

しかしオアシスは何もせず、TOBに応募するようです。結局オアシスは「東京ドームに対して揺さぶりをかければ、東京ドームが自ら動いてホワイトナイトを見つけてくるだろう」と考えていたのでしょう。しかし私は以下のとおり「ホントに東京ドームってホワイトナイトが必要な状況だったの?」と思っています。

No.964 三井不動産ってホワイトナイトなの?東京ドームは本当にホワイトナイトが必要だったの?

東京ドームがオアシスの動きとは関係なく「中長期的な企業価値向上のために資本業務提携が必要」と考えてのことであればまったく問題ありません。ただオアシスの提案をきっかけとしての行動だとしたら、果たしてどうなのかなと思います。東京ドームって本当に有事だったのでしょうか?

No.958 うちの会社って有事なの???

これからの時代、アクティビスト・ファンドやライバル企業からのアプローチがドンドン増えてくるでしょう。日本で敵対的TOBがかなり起きています。貴社がターゲットになることもあります。しかし、貴社が仮にアクティビスト・ファンドに株式を取得され、経営改善要求をされたり、TOBをほのめかされたりしても、きちんと状況を見極めることが重要になってきます。

本当にTOBが実施されるのか?TOBが実施されたとして本当に買収されるのか?貴社の株主構成やアクティビスト・ファンドの属性、さまざまなことを検討し、見極める必要があります。

そして最も重要なことは「貴社の味方は誰なのか?」ということではないかと私は考えます。

No.968 東京ドームはなぜホワイトナイトを頼ったのか?

そしてやはり、平時の買収防衛策は重要とあらためて思いました。

No.969 最近の企業防衛行動から考えるとますます平時の買収防衛策が重要になる

 

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