2022年03月25日

東芝って買収防衛策を導入していた会社です

今となってはもう知らない方のほうが多いと思いますが、東芝もかつては買収防衛策を導入していたのです。2006年に導入し、2015年5月に廃止しました。コラムでも何度か言及したことがあります。

https://ib-consulting.jp/column/125/

東芝は以下の理由で買収防衛策を導入していました。2012年5月に継続を公表した際のプレスです。P4にこう書いてあります。

https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20120508_1.pdf

どうやら東芝は買収防衛策の廃止とともに、企業価値の源泉すら忘れてしまったようです。今の東芝ははつぃて従業員一人ひとりが熱い情熱を持って行動し活躍できる環境にあるのでしょうか?アクティビスト以外のお客様、取引先、従業員、地域社会等のステークホルダーの利益を十分に配慮した経営をしているのでしょうか?

私は日本企業が導入している平時型買収防衛策は買収提案の情報と検討するための時間を確保することが目的のルールであって、決して買収防衛策などではないと考えていますが、どうやら東芝の経営陣は買収防衛策を経営者の保身の道具と思っていたのではないかと疑わざるを得ません。

そしてこうも書いています。

どうして東芝はたくさんのグループ会社や事業部門を売却してしまったのでしょうか?国内有数の事業規模を有し、事業範囲も広範囲であり、買収提案を受けた場合には会社の中長期的な利益におよぼす影響を適切に判断しなくてはならないと書いてあったのに、どうしてこうも拙速に事業売却を進めてきたのでしょうか?

東芝の企業価値の源泉を忘れ、本来ならそういった事業売却が与える中長期的な企業価値への悪影響を慎重に検討しなくてはならないのに、アクティビストの圧力に屈してしまったということです。

買収防衛策プレスに書いてあることを無視した経営をしてきました。東芝は買収防衛策をやめてはいけない状態の会社だったのですよ。ただし、買収防衛策を継続させるべきであったとは思うものの、当時および現在の東芝経営陣のもとにおいて継続すべきではありませんでした。なぜなら保身として利用するおそれがあるからです。経営陣を刷新し、石坂泰三や土光敏夫のような名経営者に来てもらった上で、買収防衛策を継続しながらすべてのステークホルダーが幸せになる経営をすべきでした。

買収防衛策を廃止した際の理由もたいしたないようではなく、通り一遍の内容ですね。全然真剣に考えてないです。不正会計をやっちゃった手前、投資家受けのよくない買収防衛策は廃止してしまおうという安易な発想でしょうね。だからこんなことになっちゃったんですよ。株価が大幅に下落し、中長期的な企業価値と乖離しているのだから、不当に安く買われてしまうリスクがあったわけですから、ちゃんと継続すべきだったのです。

本当に買収防衛策の精神を理解している経営者だったらあんな廃止はしませんよ。安易に買収防衛策を廃止したり、一方で敵対的TOBリスクが増大しているのに導入しない経営者は、それこそが経営者の保身ですよ。わかりにくいかもしれませんが、導入しないことも経営者の保身なんですよ。これはまた後日解説します。

 

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