2022年06月17日

東洋建設の有事型買収防衛策議案に対してISSとグラスルイスが反対推奨

ヤマウチナンバーテンファミリーオフィス(YFO)の買収提案に対して、有事型買収防衛策の発動で対抗しようとしている東洋建設ですが、発動議案に対してISSとグラスルイスが反対推奨をしました。

まずISSです。ちなみにISSのレポートではなく東洋建設の公表資料です。東洋建設が主張しているISSの反対理由を抜粋します。

第100回定時株主総会第5号議案に関するISSレポートに対する当社見解について

①本議案が、ISS社がいわゆる一般的なポイズン・ピルの議案に賛成推奨するために必要と考えている複数の要件のうち、(他の要件は満たすとするものの)特定の1要件(具体的には、招集通知が、株主総会の開催日の4週間前に開示されていること)を満たしていないとした上で、その場合でも、本件が YFOらによる大規模買付行為等を対象としたものであること(いわゆる特定標的型であること)から、本議案を賛成推奨するに足りる特段の事情があれば賛成推奨することもあり得るものの

②公開買付けにより発行済株式の全てを取得しようとする特定の買主が出現した場合に、当該買主に対抗して、より有利な公開買付価格で応募する潜在的な機会を株主から奪うこととなるポイズン・ピルを導入することは適切ではないと考えられること

そしてグラルスイスです。

第100回定時株主総会第5号議案に関するグラスルイスレポートに対する当社見解について

①本対応方針が取締役会により延長できること

②取締役会が過半数の独立社外取締役で構成されていないこと

③当社が提供を求めている情報が不合理であること

④本対応方針の条項に東京高等裁判所で認められている範囲を超えた条項が含まれていること

ISSのほうは、そもそもインフロニアHDによる友好的なTOBが実施された状態であり(すでに不成立で終了)、そしてYFOの提案が現金による全株買収だから、発動議案には反対推奨するってことでしょうかね。グラスルイスは「?」ですね。東洋建設も反論していますが、独立委員会も設置しているし、④の理由はよくわかりませんね。やっぱりグラスルイスって感じだな。

なお、東洋建設の主張は理解できるところがある一方で、以下の内容は「それは違うでしょ」と思いますね。

本対応方針は、当社の中長期的な企業価値ないし株主の皆様共同の利益を最大化するための、いわば「対等交渉力確保目的スキーム」であって、本対応方針は、YFOの提案する公開買付けを含む当社株式の買収を阻止することを目的とするものではなく、また、買収防衛を目的とした一般的な「買収防衛」策ではなく、その意味で、一般的な「ポイズン・ピル」でもありません。したがって、本対応方針は、ISSレポートにおいてISS社が不適切であるとする、より有利な公開買付価格で応募する潜在的な機会を株主から奪うこととなるポイズン・ピルには該当せず、この点においても、ISSレポートは全く適切ではないと言わざるを得ません。

は?買収防衛を目的とした一般的な「買収防衛」策ではない、ってどういうこと?平時型買収防衛策のことを「買収防衛を目的とした一般的な買収防衛策」って言ってます?

平時型買収防衛策こそが情報と時間を確保し、買収者との交渉ツールとして機能する買収防衛策ですよ。有事型こそまさに「買収防衛策」です。一般論として、有事型買収防衛策の主目的こそ買収防衛策の発動であり、平時型こそが時間と情報を確保することが主目的です。なお、正確には今回の東洋建設の買収防衛策は「有事に導入した平時型買収防衛策」だと思われます。あまりに内容が長いのでちゃんと読めていませんでしたが、これよく読むと、YFOをターゲットにした平時型買収防衛策ですよね?ルール違反したら独立委員会の勧告をもとに取締役会決議で対抗措置を発動するけど、ルールを遵守している場合、対抗措置を発動するには株主意思確認総会を経る流れですよね。招集通知のP67別紙4に流れが書いてあります。

一方でYFOは以下のような主張をしています。P5です。

東洋建設の株主の皆様へ:東洋建設の買収防衛策に関する追加情報提供

■東洋建設は、本対応方針は「買収防衛策」ではないとご主張しておられますが、本対応方針はこれまでの有事導入型の買収防衛策と枠組みは異なるところはなく、これを「買収防衛策」ではないという強弁は受け入れることはで きません

◼ これは、東洋建設以外の客観的な第三者、例えば、多くのメディア(2022年6月10日の日本経済新聞の朝刊18面等)や議決権行使助言会社であるISS及び Glass Lewis等が、本対応方針を「買収防衛策」と記載・評価していることからも裏付けられます

◼ YFOも、これに倣い、本対応方針を「買収防衛策」と呼んでいます

あの~、有事型買収防衛策を導入・発動することはもちろん会社の自由ですが、有事型買収防衛策のことを買収防衛策ではない、平時型が買収防衛策である、などという間違った主張をするのはやめていただきたい。平時型買収防衛策のどこが買収防衛策なのでしょうか?時間と情報を確保することが主目的である一方、有事型買収防衛策はまさに対抗措置を発動することを株主総会にかけることが主目的ではないでしょうか?

買収防衛策というのは、対抗措置を発動して買収提案の実現を妨げる策のことを言います。まさに一般的には有事型買収防衛策がそれにあたるのです。ただ、YFOが「東洋建設の買収防衛策はまさに買収防衛策だ」という主張は、ちょっと当たらないかなと思います。今回の東洋建設の買収防衛策は、ターゲットをYFOに限定した平時型買収防衛策ですから。平時じゃないんですけど、仕組みとしては平時型を特定のターゲットに適用しているように見えます。

さてこの買収防衛策の発動議案は株主総会で可決されるでしょうか?月曜日のコラムでまとめます。

 

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