2019年04月29日

マクセルHDは買収防衛策を導入できない会社です

なぜならばマクセルHDは自ら「買収防衛策は導入しない」と宣言しているからです。以下はマクセルHDが公表しているコーポレートガバナンス・ガイドラインです。

http://www.maxell.co.jp/ir/pdf/corporate_governance_guidelines201812ja.pdf

マクセルのコーポレートガバナンス・ガイドライン第26条に以下の記載があります。

第 26 条(買収防衛策)

  当社は、買収防衛策は導入しない。

2.当社株式が公開買付けに付された場合には、取締役会は、公開買付者等に対し、当社グルー プの企業価値の向上策の説明を求めるとともに、当社グループとして中長期的な企業価値の向上施策を株主に対し表明し、株主が適切に判断できるように十分な情報と時間の確保に努める。

まず、そもそも買収防衛策の定義がわかりません。コーポレートガバナンス・ガイドラインに定義が書いてありません。では、買収防衛策の定義を東証が定めているものだとすれば、以下のとおりです。

・ 「買収防衛策」とは、株式会社が資金調達などの事業目的を主要な目的とせずに新株又は新株予約権の発行を行うこと等により自己に対する買収の実現を困難にする方策のうち、経営者にとって好ましくない者による買収が開始される前に導入されるものをいうこととします。

https://www.jpx.co.jp/files/tse/rules-participants/public-comment/data/060124jojo.pdf

マクセルは確かに今回買収防衛策を導入した訳ではありませんが、明らかに今回の特別配当の実施は村上ファンド対策ですよね?一種の買収防衛対策だと思いますけどね・・・。

このようなルールを自社で定めて、自社をがんじがらめにしていたのですね・・・。マクセルHDは自社に対して村上ファンドなどが買収を仕掛けてくると想定していなかったのでしょうか?していなかったからこのようなルールを自社で定めてしまったのでしょう。

あとそもそもですが、マクセルHDさんは買収防衛策を誤解しています。買収防衛策とはマクセルのコーポレートガバナンス・ガイドライン第26条2項で書いてある通り、株主がTOBに応じるかどうかを判断するための時間と情報を確保するためのルールです。マクセルHDさんが言っていることは実は「当社は時間と情報を確保するための事前警告型ルールは導入しない。でもTOBが仕掛けられたら買収者に対して説明を求めるし、我々も株主に対して説明する。そして株主が判断できるよう十分な情報と時間の確保に努める」ということです。時間と情報を確保するための買収防衛策を導入しないけど、いざとなったらちゃんと時間と情報の確保に努めます、と言っています。

言っていることが支離滅裂です。平時に導入しないけど有事になったらちゃんとやる、ってことですか?どうやって?どうやってやるのか教えていただきたいですね。TOBルールをご存知ですか?20営業日で仕掛けられた場合は延長請求公告をすることで10営業日延長されて30営業日確保できます。質問権が認められていますが、1回だけです。このTOBルールでどうやって時間と情報を確保することができるのでしょうか?

マクセルHDは書くとしたら第26条2項で「当社にTOBが仕掛けられた場合、株主のためにTOBルールの範囲内で時間と情報の確保に努める」なんですよ。ちなみに、マクセルHDさんは自社に対してTOBが仕掛けられた場合のことを書いてはいますが、大量に市場買付けをされた場合の対応は書いていません。想定していなかったんでしょ?違いますか?

マクセルHDさんは現状、公開買付けに付されている状況ではありませんが、村上ファンドに大量に市場で株式を買い付けられています。この状況においてマクセルHDさんは村上ファンドに対して、株主のために情報を提供しろと交渉したのでしょうか?時間を確保したのでしょうか?していないでしょ?

なんでこんなことを書いてしまったのでしょうか?投資家受け、株主受けだけを考えて書いたのではありませんか?そのせいで、従業員や取引先を不安にさせているのです。会社は株主のものではありません。株主も重要なステークホルダーですが、従業員や取引先も重要なステークホルダーです。会社を構成するすべてのステークホルダーの躊躇貴的な利益を確保、向上させるためにも買収防衛策を含めた企業防衛体制をちゃーんと考えないといけないんです。

 

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