2020年01月20日

東芝機械をめぐる今後の展開

東芝機械に対して村上ファンドがTOBを通告していますが、これからの展開を解説します。

まず、村上ファンドがTOBを強行してきた場合ですが、東芝機械が公表した「対応方針」https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200117447931.pdfによると、ルールを守らずに強行した場合は独立委員会の意見を最大限尊重したうえで対抗措置が発動されます。対抗措置の内容は新株予約権の無償割当で、村上ファンドが行使できないという設計です。ですから村上ファンドがTOBを強行して株式を大量に取得したとしても、希釈化されるおそれがあります。※ただし、TOBを強行した結果、過半数の株式を取得したとしても対抗措置を本当に発動するのかはわかりません。過半数の株主がTOBに応じたのですから、本当に発動してよいのか?という論点です。

対抗措置を発動する場合、村上ファンドもぼーっと見ている訳ではなく、村上ファンドは新株予約権の発行差止請求を裁判所に対して行います。最終的には裁判所がどう判断するかによります。参考になるケースはニッポン放送やブルドックソースでしょう。

では村上ファンドがルールを遵守して、TOBを強行するのではなく、東芝機械に対してTOBをしたいと打診した場合はどうなるでしょうか?東芝機械の対応方針に則って進んでいくことになります。

まず村上ファンドは東芝機械に対して「大規模買付行為等趣旨説明書」を提出します。大規模買付行為等趣旨説明書は、ざっくり言うと、TOBの詳細を説明した書類です(公開買付届出書に記載するような内容です)。

そして東芝機械が大規模買付行為等趣旨説明書を受領後、5営業日以内にTOBを受け入れるかどうかの判断に必要な情報の提供を村上ファンドに対して求めます。この情報に関してはすでに「対応方針」の「別紙」として公表されています。情報受領後、東芝機械が「TOBを受けいれるかどうかを検討するに当たって不十分」と判断した場合、追加での情報提供を要請します。

東芝機械はTOBを検討するに当たって、取締役会評価期間を設定します。これは大規模買付行為等趣旨説明書を受領してから60営業日以内に完了します。すべての情報提供が村上ファンドから提出された時点をスタートとしているのではなく、大規模買付行為等趣旨説明書を受領した日がスタートです。一般的な買収防衛策ルールだと、情報提供が完了してから取締役会評価期間がスタートするパターンが多いのですが、東芝機械はそうしてはいません。たぶん、むやみやたらと長引かせるつもりだ!と批判されないような仕組みにしたということでしょう。

また、対抗措置発動に関する株主意思確認総会を開催するかどうかもこの60営業日の期間内に決定されます。株主意思確認総会が開催されるのは、60営業日の期間が終わってからということになるのでしょう。ですから株主意思確認総会を開催するのに相応の準備期間が必要ですので、全体として終了するには60営業日+2~3か月くらいはかかりそうですね。ただ、仮に村上ファンドが大規模買付行為等趣旨説明書を明日1月21日に提出したとしたら、60営業日が終了するのは4月17日(金)あたりになります。このタイミングで株主意思確認総会を開催するとなると、おそらく定時株主総会を利用することになるのでしょうね。

そして東芝機械が対抗措置発動に関する株主意思確認総会を開催した結果、対抗措置発動が認められなかった場合、村上ファンドがTOBを実行することになるのでしょう。しかし、株主意思確認総会で対抗措置発動が認められた場合(普通決議による可決)、新株予約権の無償割当ができるようになりますが、実行した場合、村上ファンドが発行差止請求をしてくるでしょう。後は裁判所の判断です。

ざっとこんな展開になると思われます。細かい話などは割愛していますし、法律専門家ではありませんので、詳細は弁護士にご確認ください。

 

 

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