2020年01月21日

割安と考えたから買うの?東芝機械の株主はそれに応じていいの?

村上ファンドは東芝機械へのTOB価格を3,456円に設定しました。しかしその価格は村上ファンド自らが「割安」と宣言した価格です。以下の通り公開買付届出書で村上ファンドが記載しています。

「公開買付者グループとして役員の選任等の株主総会の普通決議を単独で可決したいという意向はなく、公開買付者グループにおいて対象者の議決権の過半数を取得する必要はないと考える一方で、対象者の株価が、解散価値と等しい株価純資産倍率(PBR)1倍である本公開買付価格であれば十分に割安な取得価格であると考えており、対象者の議決権の過半数を取得しない範囲でできるだけ多くの株数を保有した上で、株主として対象者の株主価値向上についてコミットメントしたいことから、他の株主にとっては本公開買付け成立後の所有割合よりも売却機会がどの程度のものか、すなわち、新規に買い付けられる対象者株式が何株かということの方が重要であろうと判断し、買付予定数の下限と同様に買付予定数を切りの良い分かりやすい株式数にした方が良いと考えたことも合わせて、7,500,000株(所有割合:31.07%)に設定(公開買付者グループの合計で10,576,200株。所有割合:43.82%)しております」

東芝機械の株主の皆さんは本当にBPS1倍である価格、村上ファンドが十分に割安と考えている価格で応募するんでしょうか?買収者自身が「東芝機械の株主の皆さん!この割安なTOB価格で応募してください!僕たちは十分に割安な取得価格と考えています!」と言っている価格です。このメッセージはいったい誰に対するメッセージなのか不思議です。こんなこと言っちゃったら、東芝機械の株主は誰もTOBに応募しないでしょ?

それとも村上ファンドは東芝機械の株主が囚人のジレンマに陥ることを期待しているのでしょうか?

東芝機械の経営陣は、こういった市場価格にはプレミアム(前日株価終値に対してはディスカウント)を付けているけど、本質的な企業価値に比べて割安なTOB価格で株主が応募せざるを得ない状況にならないよう、買収防衛策っぽい対応方針を導入し、村上ファンドに対して買収提案の詳細な条件、情報とそれらを株主らが検討するための時間を確保したかったのではないでしょうか?

私は、東芝機械の経営陣が株主をはじめとしたステークホルダーのために情報と時間を確保するための対応方針を導入した行為については、称賛に値する経営判断だと考えます。

やっぱり買収提案があったときに情報と時間を確保することは大切なことです。特にTOBを提案された株主が、その価格で本当に売却してよいのかどうかを検討するための時間と情報です。

 

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