2020年03月04日

やっぱり持ち合いですかね

昔の人はよく考えていたのでしょうね。会社の中長期的な利益のことや国家の中長期的な利益のことを。

まだまだ会社の競争力や国家としての競争力がない時代において、不当に割安な価格・不当な条件で買収されて会社を乗っ取られ、技術開発力や研究開発力が国外に流れてしまうことのないよう、また、従業員の安定した生活の確保ができるよう、会社同士で持ち合うことによって企業防衛を工夫して行ってきました。

もう一度、持ち合いを復活させましょうか?まあ、できる会社もあればできない会社もあります。例えば今、フランチャイズ・パートナーズから株主提案をされているキリンHDが持ち合いを復活させることができるでしょうか?できなくはないですが、時価総額が約2兆円であることを考えると、持ち合いで安定株主比率を1%高めるためには200億円必要です。たったの1%安定株主比率を引き上げるために200億円必要なんです。しかも1%引き上げたところで何の効果もないでしょう。10%引き上げるには2,000億円必要です・・・。

持ち合いを強化できる会社はやったほうがいいでしょうね。何のために?企業が多角化することにNoを突き付ける強欲で自分たちだけの利益しか考えていない特定の株主から、従業員や地域社会といったステークホルダーの利益を守るためです。中長期的な成長を確保するためにです。

でも持ち合いで企業防衛体制を強化できる会社には限りがあります。時価総額が大きい会社は現実的にはムリです。じゃあ時価総額が大きい会社は企業防衛体制を強化するに当たって、どういうことができるのでしょうか?

なかなか難しいですね。基本中の基本ではありますが、やはり株価を高めておく必要はあるでしょう。そして、これまで「うちは時価総額が大きいから大丈夫!」「うちは外国人株主比率が高いから買収防衛策の可決はムリ!」と考えてきたことを改めたほうがよいと思います。時価総額が大きくても買収の対象や株主提案の対象になることはあり得ます。ソフトバンクだってエリオットのターゲットになっています。

買収防衛策を今すぐ導入するかどうかはさておき、まずは企業防衛体制の勉強から開始したほうがよいと思われます。買収防衛策はかつて研究したかもしれませんが、時代は変わっています。導入はムリと考えていた会社だって工夫すれば導入できる余地はあります。工夫次第なんです。政府への働きかけだってしたほうがよいかもしれません。まっとうな外国人投資家がたくさん投資してくれるのは喜ばしいことですが、そうではない投資家もいます。自分たちだけが儲かればよく、従業員や取引先など知ったことか!と考える投資家も残念ながらいます。

経営者は株主だけではなくすべてのステークホルダーの利益の最大化を考えなくてはなりません。そのためには、会社が有事に陥ることは避けたほうが良いと思われます。なぜなら有事に陥ってしまうと、経営者が本業に専念できなくなり、会社の中長期的な成長に悪影響をおよぼすかもしれないからです。

買収防衛策とは、買収提案の実現を阻害するための策ではなく、あくまで会社の危機管理ツールの一つなのです。

 

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