2019年09月06日

持ち合い株~なぜ意義が見えないのか?~

本日9月6日の日経15面に持ち合い株27兆円の行方、見えぬ意義 「物言わぬ株主」保有効果示さずという記事があります。

企業が保有する政策保有(持ち合い)株への注目が高まっている。金融庁などの統治指針で解消を促され、開示も強化されたことで、売却の動きが本格化し始めた。それでも依然として日本株全体の約5%にあたる約27兆円が残る。各企業の持ち合い株を読み解くと、関係性や保有の意義が外からは分からないものが多い。

なぜ持ち合い株の保有の意義がわからないのでしょうか?それは、上場会社の皆さんが本当の持ち合いの意義を開示しないからではないかと私は考えます。記事によると有価証券報告書では持ち合い株を保有する理由を、

「営業政策等の取引関係の維持と強化」(凸版)、「営業取引の関係強化」(大日印)、「企業価値向上のための事業関係及び取引関係の維持強化」(日清食品ホールディングス)など、すべての銘柄に同じ記載をするなど、お互いにどのような取引があるのかすらわからない開示がほとんどだ。

と指摘されています。営業取引の関係強化という理由もわかります。持ち合いって接待と同じでしょ?取引を取るために取引先を接待するのと同じで、取引を取るために「うちは貴社の株も持ちます!」ってセールストークをするのです。でも、持ち合いは営業取引確保のためだけではありません。何のための持ち合いでしょうか?

それは「会社を守るため」です。従業員や取引先などのステークホルダーの中長期的な利益を考えず、ひたすら短期的な株価という自分たちの利益しか追求しない特定の株主対策として行っているのが持ち合いです。また、自分たちの利益のために会社をなかば脅すようなことをする総会屋や莫大な資金を使って株価を釣り上げて一般株主を巻き込み、高値で自分たちだけが売り抜けて利益を得ようとする仕手筋対策です。そのような特定の投資家、株主から従業員、取引先、ひいては一般株主を守るために行っている持ち合いの何がいけないのでしょうか?

そもそも持ち合いで過半数の安定株主を確保している会社などほとんどありません。持ち合いで敵対的買収対策をしている会社はないのです。不当な要求をする株主から会社を守るために、最低限の会社の資産を使って持ち合いをやっているに過ぎないのです。

「持ち合いは株主の権利を阻害している」という指摘が記事にはありますが、正しくは「持ち合いは会社に対して不当に過大な利益を要求するおそれのある特定の株主対策」として行っているのです。持ち合いによって株主の権利は阻害されていません。最低限の持ち合いしかしていないのですから。

上場会社の皆さんは、そろそろ持ち合いの正確な理由をきちんと開示しないととんでもないことになります。会社を守れなくなるのです。持ち合いの理由についてはNo.663 持ち合い開示~みんなで渡れば怖くない~をご覧ください。

買収防衛策と呼ばれてしまっている事前警告型ルールもダメ、持ち合いもダメ・・・どうやって会社を守るのか?きちんと検討しないとデサントやユニゾ、ソレキアみたいなことになります。今のうちから真剣に会社の守り方を考えている会社しか、これからの時代は生き残ることができません。

 

 

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