2020年03月06日

TOB拒否の前田道路社長、「子会社と言われるのが一番カチンとくる」

日経ビジネスに以下の記事が掲載されています。

TOB拒否の前田道路社長、「子会社と言われるのが一番カチンとくる」

ちょっと抜粋しながらコメントします。前田道路の今枝社長の発言です。

前田建設さんには「交渉はしたけれど、決裂しました。だから敵対的TOBですよ」という既成事実を作られてしまいました。子会社化によるシナジーについて具体的な内容の説明もなしに、「TOBをお願いします」とばかり言われても、なかなか「うん」とは言えないでしょう。それにTOBの説明でこちらに来られたのは12月4日ですが、子会社化の是非の返事を12月20日までにしろと。一部上場企業の返事を待つのがたった16日間ですよ。それはできませんと。

それが敵対的TOBの怖さです。一部上場企業であっても、敵対的TOBを仕掛けられたら30営業日で会社の命運が決まってしまうかもしれないのです。前田道路は、前田建設工業に株式の24%強を保有されている状況ではありますが、買収防衛策の導入などを含めた企業防衛体制について検討しておく必要があったと思われます。

前田建設さんから「ファンドがTOBをかけようとしているから、自分たちがホワイトナイトとして友好的なTOBをするよ」と伝えられました(編集部注:前田建設側は否定)。でも、別に僕らはファンドから「TOBをかける」なんてことは言われていない。それはちょっと違うんじゃないのとは思いました。

でも、これってよく資本上位会社とか親会社がよく言うことなんですよ。アクティビスト・ファンドに狙われたら大変だ、オレたちも迷惑するんだ、だから何もない状態のときに100%化しておこう、って。こういうことを以前から言われていたのであれば、やはりちゃんと防衛体制を整えておくべきでした。

岡部さんは「自分たちで稼いで独立独歩で行く。建設を頼らないというのがおれたちの道だ」ということを常々言われていた。今までもありましたが、僕らにとって「前田建設の子会社」という言い方をされるのが一番カチンとくる。子会社じゃないという自負がある僕らはずっと配当を出してきました。再上場してから一度も赤字に陥ったことがなく、納税もしている。労働組合ともうまくやってきたと思っています。

そういう自負があるからこそ、今回の敵対的TOBに対しては怒っているでしょうね。それがゆえに対応が感情的になってしまうことがあります。敵対的TOBを仕掛けられたときに最も重要なことは、社長やCFOが感情的にならないことです。判断が狂ってしまいますから。敵対的TOBを仕掛けられても冷静に対処できるようにするためには、やはり平時からちゃんと「自社に対して敵対的TOBや株主提案がなされた場合にどう対処するか?」を議論しておかないといけないということです。平時から企業防衛体制をきちんと検討しておく必要があるのです。

前田建設のTOB開始を知らせる資料の取り下げ事由として(前田道路の純資産の10%以上が減少する場合、TOBを撤回できるという条項を)きちっと明記してあった。これしかないというのは、みんな承知していたんじゃないかな。「前田建設さん、もう一回ちょっと冷静になって考えてくださいよ」と。考え直す機会とチャンスはわれわれが与えなければならないと考えました。金額のうんぬんはあるかもしれないけど。そういう意味合いです。

今回の特別配当は前田建設工業が前田道路に対する敵対的TOBを「考え直す機会とチャンス」にはなりません。それはここにも書きました。前田建設工業はこういう戦略を実施してくるのではないでしょうか?

特別配当を出して仮に前田建設工業がTOBを撤回したとしても、価格を変えてまたTOBを仕掛ければよいだけなんですけど・・・。どうしてこの策を選んだのでしょうか?特別配当を出してTOBに応募が集まらないようにする策は昔からやっています。けどフィナンシャル・バイヤーには通用しても、ストラテジック・バイヤーには通用しません。こんな議論は10年以上前に終わっています。ホントにどうしてこの対抗策を取ったのか不思議なんです。私の知らない前田建設工業の裏情報でもあるのでしょうか・・・。

(前田建設に対して、いま伝えたいことはなんですか。)差し当たり振り出しに戻していただきたい。リセットして欲しい。社員や株主にとって何がプラスになるのか。改めて自分たちの資本政策や会社の将来をきちんと見つめ直していただきたい。前田建設と前田道路、それぞれの会社として成長戦略は何なのかを考えるいい機会だと、前向きに捉えてくれればありがたい。振り上げた手を下ろしてほしい。

仮に特別配当議案が4月に予定されている臨時株主総会で可決されたら、前田建設工業は振り上げた手を下ろすと思います。でも、その後、また手を振り上げますね。TOB価格を変えて仕切りなおすと思いますよ。普通は、ですけど。当然、前田建設工業も前田道路がこのような対抗策を打ってくることは想定しているでしょうし、対策も事前に検討済でしょう。

 

 

 

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