2020年07月09日

では私がコロワイドのTOBが不成立になるリスクを指摘する1人目になりましょう!

さっそく日経ビジネスさんがコロワイドvs大戸屋の件を記事にしていますね。

コロワイド、速攻のTOB 大戸屋は絶体絶命か

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00006/070900100/?n_cid=nbpnb_mled_enew

たしかに速攻でしたね。一部のお客様には伝えていましたが、私の経験に基づくカンでは「おそらく8月のお盆くらいに仕掛けてくるのではないか?」と予想していました。ただ「拍手事件でかなり恥ずかしかったので、それを打ち消すために速攻で仕掛けることもなくはない」とも。

私の予想はおいといて、日経ビジネスの記事の以下の部分です。

株主総会で敗れたコロワイドだが、今度の戦いはどうだろうか。いちよし経済研究所の鮫島誠一郎主席研究員は「90%以上の確率でTOBは成立するだろう」と指摘する。9日に日経ビジネスが取材した10人近い金融関係者でも、TOBの不成立を予想する人は誰もいなかった。なぜだろうか。

今回のTOBは買い付け上限の51.32%と同時に、下限が45%に設定されている。コロワイドは既に19.16%の株を持つ筆頭株主。つまりコロワイドは、あと26%弱の株を取得できさえすれば、今回のTOBを成立させられるのだ。

インタビューに答えた方は、敵対的TOBの実務をしたことがある方でしょうか?10人近い金融関係者も経験がある方でしょうか?たしかにこの条件であれば、合理的に考えたらコロワイドの敵対的TOBは成功する可能性が高いと言えます。

「合理的」に考えたらです。

一方、大戸屋の株主構成はどうなっているでしょうか?

https://ib-consulting.jp/newspaper/2187/

合理的に行動する機関投資家はほとんどおらず、感情的に行動する個人株主が多いです。大戸屋の個人株主の構成はどうなっているのでしょうか?もっと突き詰めると、日本の上場会社の個人株主ってどういう構成なのでしょうか?

正確ではありませんが、P13にあります。アンケート調査の結果のようですから、日本の個人株主の年齢構成を示しているものではありません。

http://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/files/kojn_isiki/20190131ishikichousa.pdf

日本の個人株主って高齢の方が多いですよね?そういう個人株主は一連のコロワイドの行動をどう捉えているでしょうか?「嫌がっている大戸屋を資本の論理でねじ伏せようとしている」「大戸屋の味を工場の味にしようとしている」「店内調理をなくすに決まっている」と捉える人も多いのでは?敵対的TOBを仕掛ける側はけっこう怖いんですよ。「価格が高いだけで本当に集まるのか?」とコロワイドは思っている可能性があります。

すでにコロワイドは19%の株式を保有しており、あと26%集めればよいだけではありますが、大戸屋にも安定株主がいます。外部から見て12%くらいですが、実際にはもう少しあるでしょう。仮に15%程度だとして、100%ー安定株主15%ーコロワイド19%=66%(残存株主)の株主から全体の割合として26%を集める必要があります。26÷66=約39%の応募ですね。

残存株主の中には、少なからず国内外の機関投資家もいます。今回のTOBは上場を前提にしていますから、インデックス運用の投資家は応募しないでしょう。ということは残存株主はもっと少なくなります。なんだかんだ言って、残存株主から半分近く集めないとTOBが成立しない可能性があるのではないでしょうか?

また、残存株主にはファン株主もいますよね?そして大戸屋の株をもって優待を受け取りたいという株主もいるでしょう。既述のとおり、高齢の株主もいます。敵対的TOBに対して「旧村上ファンドのようなやり方じゃないか!」と怒る株主もいます。あと、敵対的TOBに気づかない人だっていますね(笑)

ちなみにですが、2007年にスティールパートナーズがブルドックソースに対して敵対的TOBを仕掛けました。ブルドックソースのケースは買収防衛策を発動したことばかりが話題になりますが、注目すべきはスティールパートナーズの敵対的TOBにほとんど応募がなかったということなのです。

個人株主の行動というのは予測できません。高いから応募するという訳ではないのです。もちろん個人だって儲けたいから株を買っているのであって、高いTOB価格を提示されたら応募する株主であると捉えておく必要はありますが、そう捉えてよいのは買収される側です。買収する側が「個人は値段で動く」と考えて敵対的TOBを仕掛けてはいけないのです。

だからこれなんだと思いますよ。

https://ib-consulting.jp/newspaper/2548/

今回はちょっと定性的な観点で書きましたが、来週のコラムでやや定量的に分析します。

 

 

 

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