2020年09月08日

大戸屋がコロワイドに敗北した理由

株主提案の勝因分析を間違えたことが大きいと思います。株式掲示板などを見ていると、「大戸屋側からTOBに応募しないでくれと電話がかかってきた」といった書き込みをよく見かけました。

おそらく株主提案時も同じことをしたのでしょう。IR業者が株主の電話番号を入手します。うまーく株主の電話番号を入手するのです。ま、ここでは書きませんが。そして「TOBに応募しないでください!」と電話攻勢をかけます。よくあることです。

おそらく大戸屋は「株主が我々の主張に耳を傾け、コロワイドの株主提案に反対してくれたぞ!敵対的TOBを仕掛けられても同様のやり方で対抗しよう!」と考えてしまったのかもしれませんね。大間違いです。

大戸屋がコロワイドの株主提案に勝てた理由は、電話をかけまくって大戸屋の主張を株主に説明し、株主が納得してくれたおかげ、ではありません。大戸屋の株主が「今コロワイドの株主提案に山菜するのは損だ」と冷静に考えたからです。

株主提案時点でコロワイドは、大戸屋を子会社化する意向を示してはいたものの、その手法や条件を明らかにしていませんでした。おそらく冷静な株主は「コロワイドの株主提案が可決されたら、コロワイドに大戸屋を実質支配されてしまう。実質支配されたら、コロワイドは株主にとってではなく、コロワイドにとって都合のよい子会社化の条件を提示するだろう」と考えたでしょう。

だから「子会社化の条件=TOB価格とその他の条件、を明示しない限りは株主提案に反対」したのです。そしてコロワイドが敵対的TOBを仕掛け、その条件を明示したからこそ、応募する株主が出てきたのです。

当初のTOB条件である下限45%(コロワイド分を含む)を達成できなかったのは、コロワイドにとっても誤算だったとは思われるものの、コロワイドにとっては「想定内」だったでしょうね。45%の下限ってけっこう高いんですよ。それは私も以下のとおり指摘しています。

では私がコロワイドのTOBが不成立になるリスクを指摘する1人目になりましょう!

コロワイドも十分認識していたはずですし、今回の敵対的TOBが不成立となる可能性は「ホワイトナイトが登場することのみ」と考えていたでしょう。だから以下で指摘したとおり、微妙な下限を設定し、大戸屋が本腰を入れてホワイトナイト探しをしないように仕向けたのだと思われます。

(無料公開)コロワイドの敵対的TOBは実に巧妙です

大戸屋は、そもそもコロワイドが創業家から約20%の株式を取得した時点でホワイトナイト探しをしなければならなかったのです。さらに言えば、創業家とのもめごとが発生した時点で、コロワイドのような買収者が登場しないよう、登場したとしても時間をかけて対応できるよう、事前警告型買収防衛策を導入すべきだったのです。

No.119 ひどいというより戦略か?・・・大戸屋HDの総会議案 など2コラム

No.680 コロワイドに株式を取得された大戸屋について

大戸屋はコロワイドに敵対的TOBなど仕掛けられるはずもないくらい、十分な時間を確保していました。創業家ともめはじめた時点で、いずれこうなることは簡単に予測できました。あますぎますね。

しかしあまいのは大戸屋だけではありません。このご時世、どんな会社に対しても敵対的TOBが仕掛けられる可能性は等しくあります。にもかかわらず、何も対応を準備していな会社は世の中にたくさんあります。

どういう会社が狙われるのか?敵対的TOBに対して危機感を持たず「うちには関係ねーだろ?」と根拠なく経営者が思いこんでしまっている会社です。大戸屋だってコロワイドに仕掛けられるとは思ってもいなかったでしょう。デサントもそうでしょうし、前田道路もそうです。敵対的TOBを仕掛けられた会社は「なんでうちがターゲットに?」と驚きます。

ちゃんと勉強している会社だけが独立した上場会社として生き残ることができるのです。常在戦場、日々勉強!

 

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