2022年05月31日

様変わりする「物言う株主」

これ、おもしろい記事ですね。まず冒頭が強烈です。

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/world/00483/?n_cid=nbpnb_mled_d

物言う株主(アクティビスト)として知られる米著名投資家カール・アイカーン氏は、「我々が彼らに立ち向かう時は、本気で立ち向かうのだ」と自信たっぷりにほえる。同氏は何十年も前から、企業経営者を悩ませる第一人者であり続けてきた。86歳になった今も、経営者を見下すその尊大さはほとんど衰えていない。

これ重要ですよ。アクティビストは上場会社に立ち向かうとき本気で立ち向かっているのです。何のために?株主利益のため、株価のためですね。

アクティビストが貴社株式の大量保有報告書を提出したら、皆さんはどう考えますか?「え?なんでうちの会社の株を?これからどうするんだろうか?売ってくれないかなあ」と考えませんか?そこがまずあまいということです。彼らは上場会社に対して真剣に立ち向かい、なんとか株価を上げる策をやらせようと考えています。

それに対して「早く出て行ってくれ」と考えたら初動を誤ります。彼らはそう簡単には出て行きません。旧村上ファンドは住友大阪セメントの大量保有報告書を提出しましたが、割と早く売却しました。でも一方でホシデンという会社に関しては、大量保有報告書を提出して早めに売却したけど、また大量保有報告書を提出し買い増ししています。

アクティビストは日々、上場会社の攻め方を真剣に考えています。いやな人たちですねえ。でもそれが彼らの仕事なのです。上場会社の隙を見つけ、そこをとことん攻撃し、株価を上げる策を実行させるのです。それが中長期的な企業価値の観点ではマイナスな施策であっても、株価にプラスに働く施策であれば実行させるのです。彼らは日々、真剣に攻撃方法を考えています。

一方で上場会社のほうはどうでしょうか?日々、真剣に企業防衛について考えていますか?企業防衛投資をしていますか?残念ながらしていませんよね。していないから、アクティビストに大量保有報告書を提出されるとアタフタします。そして平時のうちに特段の関係性も築いていないアドバイザーに会社の未来を託してしまいます。これ、けっこう恐ろしいことですよ。普段から企業防衛のことを議論していない相手に会社の未来を託すなんて行為は、ある意味バクチです。

そんなバクチ的な行為を有事になってしないように、日々真剣に上場会社の攻撃方法を考えているアクティビストに対抗するために、ちゃーんと平時のうちから企業防衛投資をしておかないとダメなんです。

物言う株主が企業宛てに送り付ける公開書簡も似たようなものだ。米ファンド、サード・ポイントのダニエル・ローブ氏は05年、ある経営者に書簡を送った。「長年に及ぶ価値の毀損と戦略的失策ゆえに、我々は貴殿を米国で最も危険かつ無能な経営者の一人と呼ぶことにした」

いくら日本でアクティビズムが活発化したとはいえ、こんな書簡を送りつけられた上場会社はまあいないでしょう。

つまりアクティビズムは、正確に言えば衰えたのではなく、目立たなくなったのだ。多くの物言う株主はひそかな活動を選び、企業の取締役会に内々で圧力をかける。公に不満を訴える手法は取締役会が抵抗する時のために取っておく。

アクティビズムは日々変化しています。それは彼らが真剣に上場会社への攻撃方法を日々考えているからです。でも日本の上場会社はそういったアクティビストの変化に対応できていないと私は考えます。これだけアクティビズムが活発化し、株主提案が増え、そして敵対的TOBが増えているのに、企業防衛投資を怠っている会社がほとんどではないでえしょうか?

企業防衛にかかるお金をコストを考えていてはもういけません。会社を守るための投資なのです。そしてその投資は有事になってからやっても遅いのです。有事になってからだと単なるコストになってしまいます。平時のうちに会社を守るための投資をしておかないと、いずれ会社の独立性がなくなってしまいます。

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

カテゴリからニュースを探す

月別アーカイブ