2022年08月17日

ジャフコの現状を整理

旧村上ファンドのターゲットになったジャフコが有事型買収防衛策での対抗を公表しましたが、現状までを整理しておきましょう。

まず旧村上ファンドがジャフコの大量保有報告書を提出したのは8月9日(火)です(義務発生日は8月2日(火))。保有割合は6.54%(シティインデックス4.71%、野村絢氏0.64%、南青山不動産1.19%)、保有株数4,793,600株、取得資金の総額7,918,795千円です。この時点では1株あたり1,652円で取得していたことになります。

そしてジャフコは8月15日(月)15:15にジャフコは以下を公表しました。

株式会社シティインデックスイレブンスらによる当社株式を対象とする大規模 買付行為等が行われる具体的な懸念があることに基づく当社の会社支配に関す る基本方針及び当社株式の大規模買付行為等に関する対応方針の導入に関する お知らせ

独立委員会の設置及び独立委員会委員の選任について

臨時株主総会招集のための基準日設定に関するお知らせ

一番上のタイトルが長いヤツがいわゆる「有事型買収防衛策」です。その中でジャフコは有事型買収防衛策を導入するに至った経緯を以下のように説明しています。

https://ib-consulting.jp/newspaper/4399/

5月頃~    旧村上ファンドがジャフコ株の取得を開始

8月4日(木)  野村絢氏・シティ社代表福島氏と面談

8月5日(金)  村上世彰氏・野村絢氏・福島氏と面談。このとき、15%弱を取得したことが伝えられ、51%を取得す 

       る可能性があることを示唆された。そして野村総研株を流動化し、株式時価総額の約3分の1、連結株

       主資本の40%にも相当する約500億円もの自社株買いを行うべき旨を要請

8月9日(火)  旧村上ファンドが大量保有報告書を提出(議決権割合6.73%)

8月15日(月)  15:15に上記の有事型買収防衛策の導入などを公表

8月15日(月)  16:01に旧村上ファンドが変更報告書を提出(議決権割合12.21%)

いろいろと気になりますねえ。8月5日の時点では議決権ベースで12.21%しか持っていなかったのに、ジャフコとの面談時には「15%弱取得した」と・・・。12%は15%弱じゃなくて10%強だと思うのですがねえ。。。そしてなぜわざわざ「51%買う可能性を示唆」したのかねえ・・・。

で、現在以下のような「旧村上ファンドが敵対的買収か!」といった記事を目にするのですが、さすがに現時点で敵対的買収!と考えるのは、ちょっと気が早いかなと思います。

VCに異例の敵対的買収!「旧村上ファンド vs. ジャフコ」勃発に投資家大コーフン ジャフコ側、村上氏側の買収事例列挙に「ファンドらしい反撃」の声も

旧村上ファンドにとってのジャフコですが、規模が大きいと言えば大きいのですが、旧村上ファンドはコスモエネルギーHDやクレディセゾン、日清紡HD、住友大阪セメント(すでに売却した模様)をターゲットにしています。ジャフコの時価総額は旧村上ファンド登場前はたしか1,500億円くらいだったので、「まあこれくらいの時価総額だとターゲットになっちゃうよねえ」という規模ですね。一昔前の旧村上ファンドは時価総額1,000億円未満をターゲットにしていましたが、最近だと2,000億円以上の企業もターゲットにしています。

まあ、そもそも全株買収するつもりなどないでしょうし、20%~30%程度買い集めて会社にプレッシャーをかけて大規模な株主還元をさせたり、第三者に売却したりして利益を得ることが目的ですから。ジャフコを全株買収するつもりはないでしょう(有事型買収防衛策対策のテクニックとして全株買収を提案する可能性はあります)。そもそも投資スタイルが真逆ですしね。狙いは野村総研の株ですね(キャッシュ化させて還元に充てさせる目的)。

今回旧村上ファンドは比較的早いスペースで持分を高めていますが、これはジャフコ株を持っていた光通信から相対で取得したことが影響しています。ちなみに、ジャフコについては香港のオアシスも大量保有報告書を提出しています。大量保有報告書を提出したのは2021年2月12日で保有割合は5.26%です。

おそらく旧村上ファンドの登場に加えて、以前からオアシスに株を持たれていることも影響し、なるべく早めに有事型買収防衛策を導入しておこうという判断に至ったのではないかと推測します。

で、今後のポイントになるのが、この有事型買収防衛策です。いくつか疑問点がありますが、それは当HPでまとめたニュースをご覧ください。多くの買収防衛策導入企業が株主総会決議をとって導入している中、今回ジャフコは取締役会決議で導入しています。もちろん取締役会決議での導入を企業価値研究会は否定していませんが、取締役会決議のみで導入された買収防衛策の手続きを破って買収を仕掛けたケースはたしかないので、旧村上ファンドがルールに従うのかどうかがとりあえずのポイントです。旧村上ファンドが「取締役会決議のみで導入された買収防衛策なんて従う必要がない。株主に対して買収防衛策を導入してよいかどうか意思確認をしていないじゃないか!」としてルールを破って、20%以上の株式を取得してくる可能性があります。

その場合、ジャフコは取締役会決議で買収防衛策を発動(差別的行使条件のついた新株予約権の無償割当)することになり、旧村上ファンドは発行差止請求をすると思われますが、裁判所がどう判断するかです。

ちなみに上記記事の中で

また、ジャフコが適時開示で村上氏側の過去の投資事例について“行状”とばかりに指摘している点も異例で、投資関係者の注目を集めた。リリースは全51ページもあり、新明和工業や東芝機械など近年、世間を賑わせた買収も含めた12のケースを列挙。さらには村上氏にとって“古傷”とも言えるニッポン放送株の買収事例をも余録で記載する念の入れようだ。

とありますが、村上さんの過去の投資事例をまとめて指摘したのはジャフコが初めてではないです。以下のとおり、東芝機械(現芝浦機械)です。よく見ると、この別紙はまったく同じですので、おそらくリーガルアドバイザーが当時の東芝機械と同じ西村あさひなのでしょう。

ジャフコと東芝機械のプレスリリース別紙を見てみると

以上です。

 

 

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