2022年11月08日

上場の義務果たせますか

今日の日経17面の記事です。おもしろいのでまとめます。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC073FG0X01C22A1000000/

最近、3Dという投資家の動きが活発ですね。富士ソフトへの投資や臨時株主総会の開催請求をしています。かつてスティール・パートナーズに投資され、買収提案もされたサッポロホールディングスにも投資しているようです。富士ソフトって、かつては平時型の買収防衛策を導入していた会社なんです。でも2017年2月14日に廃止を公表しました。タラレバをいってもしょうがないのですが、もし買収防衛策を継続できていたら?このような状況にはならなかったかもしれませんね。ただ「できない」から廃止したのでしょうけど。

https://www.fsi.co.jp/company/news/170214_2.html

一方のサッポロホールディングスは買収防衛策を継続していますが、3Dの投資対象になりました。おそらく3Dは20%を超えて株式を取得するつもりはないのでしょうね。ただ、明日のコラムでまとめますが、油断は禁物です。サッポロHDには弱点がありますから、3Dがその気になれば攻略できなくはないのです。簡単に言えば「カネさえあればなんとかなる」のです。

ジャフコも大変ですね。私は以下の開示を見て「ジャフコは買収防衛策を発動するつもりだ」と読んだのですが、深読みしすぎました(笑) 11月8日ですから、おそらく11月中に買収防衛策を発動するための臨時株主総会の開催はないと見ます。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/8595/tdnet/2192927/00.pdf

本日(10月27日)現在、SV7シリーズの外部募集額は283億円(42社)、当社出資額を含めたシリーズ総額は500億円となっています。9月末のファーストクロージングにおける外部募集額につきましては、当初500億円近い金額を見込んでおりましたが、現状でもこれを大きく下回っています。村上世彰氏の影響下にある複数名義の株主が当社株式を買い進めているため、既存出資者を含む多くの投資家が、ファンド運用に影響を及ぼす可能性を懸念し、その動向を見極めるべく出資判断を保留していることが大きな要因となっています。

今日の記事では以下のように言われています。

市場では「出資を控える投資家も問題だが、募集金額が集まらない理由にアクティビストの存在を挙げるジャフコはお粗末」(ジャフコ株を保有する機関投資家)と厳しい声が聞かれる。ジャフコはアクティビストに対する備えが十分でなかった。

まあ、確かにちょっとねえ・・・という感じですね。はっきり言えば「自分で言うなよ」と言われるでしょうね。

最近、アクティビストの活動は活発化しています。旧村上ファンドはコスモHDやジャフコと言った時価総額のわりと大きな企業をターゲットにしてきました。東芝に投資していた3Dが富士ソフトに臨時株主総会の開催を請求したり、かつてスティール・パートナーズの投資対象になったサッポロHDに書簡を送付したりしています。ほかにもいろいろなケースがあります。

どうして日本の上場会社はこのような状態になってしまったのでしょうか?簡単に言うと「バレちゃった」のですよ。日本の上場会社は現預金や持ち合い株をたくさん保有し、株価は低迷している。たくさん買って株主還元などを強く要求すれば、応じてくれる、と。かつての日本の上場会社は持ち合いで守られていたけど、そんなのは単なる都市伝説で、確かに持ち合いをしていたけど、過半数の安定株主がいるわけではない。日本の上場会社はこれまでアクティビストに攻められたこともないから、株を持って強気で交渉されると、弱気な対応をしてしまう。

現預金をたくさん持っているけど株価が低迷してかなり割安状態、安定株主神話が崩れ去ったこと、強気のアクティビストに慣れていないこと。いろんなことが海外のアクティビストにばれてしまったのです。

そして平時型買収防衛策、有事型買収防衛策がさほど機能しないことも、いずれバレます。3Dは買収防衛策を導入しているサッポロHDを投資対象にしたのです。3Dの投資対象になった富士ソフトは有事型買収防衛策で対抗していないのです(今のところ)。買収防衛策の有無は、あくまで極論を言うと、アクティビストにとっては関係ないのです(当然あったほうがよいのは間違いないです)。

今日本の上場会社はこういう状態にあります。世界中のアクティビストに狙われています。しっかりと上場している義務を果たしていかないと、全社アクティビストのターゲットになる可能性があるのです。記事ではこう言っています。

株主から企業への要求は、もはや株主総会シーズンの風物詩ではない。どの企業にもいつでも舞い込む日常の出来事になった。本来、上場企業は自社の株主を選べず、当然のことといえる。だがアクティビストが自社の株主になることを想定する日本企業はまだ多くなさそうだ。

そうです。総会シーズンだけの話ではもうないのです。いつでもどの企業にも舞い込む日常の出来事になってしまったのです。この記事、うまいこと言いますね。そして日本の多くの上場会社はまだ「うちがターゲットになることなどないだろう」とだろう経営をしてしまっているのです。もしくは、アクティビストの活動が活発化していることすら知らない会社もあるでしょう。アンテナ、低すぎです。

そしてこの記事で私が最も重要だと思ったのは以下です。

自らの財産をかけて真剣勝負を挑んでくる株主とどう向き合うか。日本企業の経営者に覚悟はあるだろうか。

うちのお客様は上場会社がメインですが、機関投資家もいらっしゃいます。個別にご相談をいただくのですが、その方々と議論していて思うのは「行動・決断がはやい」ということです。個別企業への投資を決断するに当たって、様々なことを検討してらっしゃいます。そして短時間でいろいろな検討をして、投資の決断をしてらっしゃいます。まあスピードがはやい。いろんなことに対する知識欲も旺盛ですね。いろんな角度からのご質問をいただきますし、私も非常に勉強になっています。

上場会社が相手にしているのは、こういう人たちであるということをきちんと認識した上でどう義務を果たすかを「なるべく早い時間」で決めていかなくてはならないのです。

平時型買収防衛策について私は「とても大切だから全社導入すべし」と思っていますが、それだけやっていればOKという意味ではありません。しょせん買収防衛策というのは時間と情報を確保するためのルールであり、確保できた時間と情報をもとに「何をするか」が重要なのです。平時型買収防衛策を導入すれば、平時においてある程度の時間が確保できています。平時のうちに買収防衛策以外の企業価値向上策をうち、株価を上げておかなくてはなりません。

根拠もなく「うちは大丈夫だろ?」と思っていてはいけませんよ。

 

 

 

 

 

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