2022年11月25日

ジャフコによる自己株TOBを詳細解説~野村さん、こんな価格の決め方でいいの?~

今回のジャフコによる自己株TOBの価格の決め方、ちょっと違うんですが、発想としてはイノテックがやったトストネットによる旧村上ファンドからの自社株買いに近いですね。ただ「こんな価格の決め方でいいの?これで旧村上ファンドに多額のキャッシュが入り、またターゲットになる上場会社が増えるのでは?」と危惧しますし、こういうやり方が横行しますよ。本当にこんなやり方でいいの?と私は思っています。

想定どおり、ジャフコが自己株TOBを公表しました。以下の有料コラムで私は「ジャフコも来年の総会まで持たれたくないでしょうし、年内・年度内には決着させたいでしょう。」と書いていました。まあ、早めに決着させたいでしょうからね。ただ、私は自己株TOBの金額を「300億円くらいに」を想定していました。なぜならジャフコは有事型買収防衛策を導入しましたし、当然、それを使って旧村上ファンドと交渉し、自己株TOBの金額をおさえようとすると思ったからです。のちほど以下のコラムを無料公開します。

https://ib-consulting.jp/column/4533/

では今回のジャフコの自己株TOBを詳しく見てみましょう。以下ジャフコのプレスです。なおNRI=野村総研です。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/8595/tdnet/2210540/00.pdf

ジャフコは当初「現預金と当社が所有するNRI 株式の時価評価額(税引後)を合わせて1,200億円程度を維持し、この金額が1,200 億円を一定程度超えることとなった場合には、自己株式の取得を検討する」という方針でしたが、今回「現預金とNRI株式を合わせて1,200億円としていたところ当面現預金を600億円に減少させ、これを超える現預金については自己株式の取得を行い、それにより純資産を減らしROEを高めていくこと」に変更したようです。

そしてジャフコは「NRI株式売却の対価520億円(3,370 円で試算。税金及び諸費用等控除後の手取り額概算)の一部420億円を原資として」自己株TOBをします。ジャフコはNRI株を売出しします。以下はNRIが公表したプレスです。売出しの主幹事は当然ですが野村證券です。野村さん、ジャフコのFAと売出しの主幹事でウハウハですね。

https://ir.nri.com/jp/ir/news/auto_20221122570104/pdfFile.pdf

なお、旧村上ファンドは保有するジャフコ株全株(13,904,500株・所有割合19.53%)を応募することをジャフコと契約しました。

自己株TOB自体は12月16日から開始される予定なのですが、TOB開始の前提として、以下の全ての条件が充足されたこと又はジャフコにより放棄されたことが規定されているそうです。これ、ちょっとわかりにくいかもしれません。なぜなら「ん?旧村上ファンドが今の株価水準だとTOBに応じないから、わざわざTOBを実施することや価格レンジを公表することで、自分たちで株価を上げにいっているということ?」だからです。ヘンでしょ?わかりやすいように私が少し書き加えたり、省略したりしているので、詳しくは本文P2~P3をご覧ください。

本応募契約においては、自己株TOB開始の前提条件として、本応募契約の締結日(本日)及び本公開買付けの開始日(12月16日)において、以下の全ての条件が充足されたこと又は当社により放棄されたことが規定されております。

①NRI株式売却に係る受渡しが完了していること(これは12月14日に自動的に充足される予定)

②2022年11月30日から12月7日の期間(価格決定期間)での当社株式のプライム市場における売買高加重平均価格(VWAP)が 2,525円以上 2,828円以下(本価格レンジ)となること。なお、価格レンジは、

(i)TOB開始予定日に近接した時点において当社及び旧村上Fの想定外の範囲まで当社株式の市場価格が上昇又は下落した場合にまでTOBを実施することを避けること

(ii)本日時点における当社株式の市場価格を基礎とした金額では旧村上Fとの間で本応募契約を締結できない見込みであり、一方当社としては旧村上F以外の当社の株主への配慮の観点や、旧村上Fに当社株式の手残りが生じないようにする観点で、当社株式の市場株価を上回る水準でTOBを実施することはできないことから、応募契約の締結と当社株式の市場価格を下回る水準でのTOBの実施の両者を達成するためには価格レンジの設定が必要であったこと

(iii)TOBの目的が、旧村上Fの当社株式の所有割合を低下させることによって、事業遂行、特にファンド募集の円滑化等による経営の安定化を図ることを目的とするものでもあることから、 これまでの他社実例において、旧村上Fによる売却価格がPBRの1倍程度が中心であること

(iv)2022年9月末日時点の当社株式1株当たり純資産が 2,651円64銭であること

※TOB価格のレンジ2,525円~2,828円は11月24日時点のジャフコ株価2,391円を134円~ 437 円上回るが、これについてジャフコは(以下、だいぶ要約しています)、

・旧村上Fは当社の適正価格をPBR1倍程度と考えており、本日時点の株価をベースにしたTOB価格だと自己株TOBに応じてもらえない。だから9月末のBPS2,651円64銭を基礎としてTOB価格を検討。

・今後の当社の事業運営を考えると旧村上ファンドには出て行ってもらいたいこと(現にジャフコの募集するファンドに旧村上ファンドが株主としていることで、資金が集まりにくくなっていること)

・BPS2,651円64銭に対し上下5%程度の幅であれば、今後の成長戦略の推進と資本効率の向上のための本株主価値向上施策及びNRI 株式売却を決議したことも踏まえ、価格決定期間において実現可能性がある価格レンジである

・価格レンジは本日時点における当社株式の市場価格を上回るが、TOB開始予定日に近接した価格決定期間における VWAP から1%ディスカウントした金額として定めるから、TOBは旧村上F以外の当社株主にとっても株主還元の提供機会となる

・価格レンジ及びTOB価格の設定は、TOBの目的に適い、 かつ少数株主の利益にも配慮されたものであり、取締役の善管注意義務の観点からも問題ないものと判断

③村上氏らの表明及び保証の全てが、重要な点において、本公開買付けの開始日に真実かつ正確であることが合理的に見込まれること

④村上氏らが本応募契約に定める自己の義務に重要な点において違反していないこと。

読むのに疲れました・・・。ジャフコは旧村上ファンドに出て行ってもらいたいけど、今の株価をベースにした自己株TOBだと旧村上ファンドは「出て行かない!価格が安いから!」と言っているから、なんとか株価を上げて自己株TOBを実施して出て行ってもらいたいと考えた。そして、NRI株の売却や株主還元方針を公表し、「では自己株TOBをします!TOB価格は今回の公表を受けた11月30日~12月7日の平均株価で決めます!ただし、価格のレンジは2,525円以上 2,828円以下ですよ!」と言っています。

出て行ってもらいたいから、自分で株価を上げて、その上がった株価をベースにして自己株TOBをやる、と・・・。村上さんも大喜びですなあ。なんと村上さんに最大限配慮し、気を使った価格設定でしょうか!すばらしい!

ようこんな価格の決め方するわ・・・。

まだ全部読めていませんが、ちょっと疲れたので休憩します。契約先の皆様に本日メールをお送りするのはこれが最後です。ただ、ジャフコ関連の情報はまだアップします。

なお、VWAPから1%ディスカウントした価格とすることを予定しており、VWAPが価格レンジの枠内である場合には、TOB価格は2,500 円~2,800 円のレンジの枠内の価格になる予定だそうです。

臨時株主総会に出ようと思ってジャフコ株100株を2,003円で取得した私にとっては非常にありがたいです。

 

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