2022年11月29日

「第1回 公正な買収の在り方に関する研究会」の議事要旨

「第1回 公正な買収の在り方に関する研究会」の議事要旨が登録されていました。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kosei_baishu/001.html

こちらです。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kosei_baishu/pdf/001_gijiyoshi.pdf

委員は以下のとおり。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kosei_baishu/pdf/001_02_00.pdf

ちょっと気になった発言を抜粋します。さすが日本生命さんです!

【反田様(市川委員代理)】 市川章人 日本生命保険相互会社株式部長 ※代理出席のようです。

全体像の見直しという観点からコメントしたい。当社は基本的なスタンスとして中長期的な視点で企業と対話しており、企業の自主性を尊重している。 平時導入型買収防衛策については経営者の保身につながるという考えで減少しているところ、平時導入型買収防衛策が本当に必要だと考えているが、議案が否決されてしまうという消極的な理由で廃止している企業もいる。買収防衛策が保身目的だと主張する投資家の 意見も理解できるが、マイナス面ばかりに注目されて杓子定規に判断をされているようにも思われる。企業側にも工夫が必要であるが、買収防衛策のプラスの側面にも焦点が当たるべきではないかと考えている。企業側として日頃から成長戦略等の開示やエンゲージメ ントに積極的に取り組む必要はあるが、平時導入型買収防衛策を入れることが買収提案対応の予見可能性を高めて買収提案が真摯に検討されることにも資するのではないか。一方 で有事導入型買収防衛策についても研究会での議論を通じた整理をすることも望ましいと 考えている。

長島大野の玉井先生のご発言の一部です。

【玉井委員】 玉井裕子  長島・大野・常松法律事務所弁護士

総論について、2005 年の買収防衛指針策定時から世の中も大きく変わり、 M&A 市場や企業価値の考え方も変化してきている。児玉様が指摘されたように、昨今、株主至上主義からステークホルダーキャピタリズムへのシフトといった議論がアメリカでも生じている。社会課題の解決と企業の存続意義とを企業価値の向上の観点から整合的に考える立場も踏まえ、今回ガイドラインを策定する際には、そのような背景事情や議論の推移も整理してアップデートした上で、今企業が公正な買収の在り方についてどのように考え、どのように振る舞うべきかがわかるようなものになれば良いと思う。日本で事前警 告型買収防衛策がうまくいかなくなってしまったことの背景として、ステークホルダーの利益を隠れ蓑として経営者の保身に利用しているのではないかとの資本市場からの一定の不信感があったのではないか。米国でもステークホルダーの利益の考慮が言われるような昨今の状況において、日本企業は従前から変わるつもりがないのではといった捉え方で誤解されることのないように、うまく説明することが重要でないか。

西村あさひの太田先生の発言の一部です。これも興味深いです。また、以下には書いていませんが「仕手筋ウルフパック」というのもいいですね。みんなが言えない言葉を言ってくださっている気がします。

8ページについて、買収に関して経営者の保身という点が指摘されるが、実務感覚では、 日本の場合、経営者は個人として保身に走るというより、経営者はいわゆる従業員共同体の中で出世してきた人で共同体全体の利益を守っているという意識が強いのではないか。 友好的買収も同様であるが、買収されることへの従業員の理解が得られていないので、買収件数が増えないのではないかと思われる。ドイツやフランスでは、制度的に従業員の意思を吸い上げるシステムがあるが、日本の場合はそのようなものがなくPMIがうまくいかないのではないかという懸念があることが、ストラテジックバイヤーによる「良い」同意なき買収が進まない背景としてあるのではないか。そのような中で、「良い」同意なき買収を活性化させるためには、労働分配率の維持・向上に向けた適切なコミットメントや人的資本への投資状況等を活用しつつ、丁寧に対象会社の従業員の理解を得ていくことが望まれる。また、対象会社側においては、同意なき買収の場合でも、買収者側に対して、従業員の不安を解消するために説明を行う機会を適切に提供することが期待されるほか、対象会社側においても、従業員に対する株式報酬を積極的に活用することで、株主の利益と従業員の利益とが適切にalignするように努めていくことが強く期待される。

以下の三橋委員の意見には賛同できません。まず平時型買収防衛策がどうして経営陣の保身につながって、有事型買収防衛策はつながらないのか?「いざとなったら有事型で対抗する」という考え方はまさに保身につながる可能性があるのでは?「有事型で買収の実現をなんとしでも阻止してやる!株主利益なんて関係あるかい!」これ保身でしょ?

じゃあ、三菱UFJ信託銀行さんは平時型買収防衛策の導入に反対した企業に敵対的TOBを仕掛けられた際、その買収が株主価値を毀損するようなものだった場合、平時に導入された買収防衛策に基づいた発動議案にはどう判断するの?「株主価値を毀損する買収提案だけど、我々が反対した平時型買収防衛策に基づく議案だから反対」ってするの??

平時型は保身として受け取られ企業価値がディスカウントされるって何ですか?株価じゃなくてなぜ企業価値なの?平時型買収防衛策を導入している会社の株価はディスカウントされていませんよね?ここでいう企業価値の定義は??

【三橋委員】 三橋和之  三菱 UFJ 信託銀行資産運用部副部長兼フェロー

機関投資家の立場で発言したい。買収防衛策をどう捉えているかについて、 平時導入型買収防衛策については、経営陣の保身に繋がる可能性があるとして否定的に捉えており、現在は独立社外取締役が取締役会の過半数を占めていなければ買収防衛策議案には原則反対する運用を行っている。直近は有事導入型買収防衛策が増えているため、平時導入型買収防衛策を導入している企業とエンゲージメントする場合に、平時導入型は保身として受け取られ企業価値がディスカウントされる可能性があるので、有事導入型買収防衛策を検討していただけないかと説明しているが、有事導入型買収防衛策は予測可能性に乏しいという点で足踏みされる企業も多い。そういう意味で、有事導入型買収防衛策の事例が増えていくと、予測可能性が確保されてきて事前警告型買収防衛策は減少していくのではないか。買収防衛策が濫用されることが保身の目的と見られることを回避するために、「買収」の定義を「経営支配権に影響を与える程度の株式を取得する行為」として以前の定義から限定されるという点で好ましいのではないかと思う。

ぜひ平時型買収防衛策がこれ以上貶められないような議論をお願いしたいです。

 

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