2023年03月01日

TOBルールの改正について

日経の速報ですが、TOBルールの改正について以下まとめます。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB28DFI0Y3A220C2000000/

今回TOBルールが改正されたら17年ぶりということになるのですが、前回は2006年でした。当時の主な改正内容は以下のとおりです。

・TOB期間20日~60日⇒20営業日~60営業日

・20営業日の期間でTOBが開始された場合、延長請求をすることで10営業日延長(最短でも30営業日は確保できる)

・質問権が与えられた(1回目に提出する意見表明報告書で行う)

・質問権が行使されてから5営業日以内に対質問回答報告書を提出(ただし、理由を付せば回答しないこともあり)

・TOB後の所有割合が3分の2以上になる場合の全部買付義務

・そのほか、市場内外の取引とか急速な買付けとか買収防衛策発動によるTOBの撤回などなど

2000年ごろから当時の村上ファンドが敵対的TOBを実施したり、2003年にはスティール・パートナーズが2社同時に敵対的TOBを実施したり、日本も本格的な敵対的TOB時代を迎えつつありました。事業会社による敵対的TOBも起きており、以前のルールでは対応しきれないところも出てきたため、上記のような改正がなされたと記憶しています。記事にもある通りライブドアによるニッポン放送買収も影響していましたね。

そして今回、日経が報道しているとおりTOBルールが改正されるようですが、主な内容は以下です。

今は市場外で所有割合が3分の1を超える買い付けを行う場合、公開買い付けをしなければならない。投資家への情報開示が義務付けられ、期間や条件を設定し、一般株主に不公平が出ないよう制限も加えられている。

今回の見直しでは市場の内外を問わず、3分の1を超える場合はTOBを義務付けることを検討する。会社法は3分の1以上の株主に株主総会の特別決議の拒否権を与えており、会社経営に影響力を行使でき、会社も無視できなくなる。

過去には、経営側や一般の株主が気づかないままに、買収側の保有比率が一気に高まったケースがあった。少数株主保護の観点からも、問題になっていた。

金融庁は非公式の勉強会を通じて、有識者の意見を集めている。市場内取引も一定の条件に抵触すればTOBを義務付ける必要があるとの意見が出ていた。

たぶんこれだけではなく、他にも細かい改正がなされるのかもしれませんが、今ある情報が上記だけなのでとりあえず「今回の見直しでは市場の内外を問わず、3分の1を超える場合はTOBを義務付けることを検討」について考えます。

先ほど以下のニュースでもまとめましたが、企業防衛上の効果はないと考えます。

https://ib-consulting.jp/newspaper/4720/

ないと書くと「市場内取引で3分の1を超えて取得された東京機械製作所があるじゃないか!」とおっしゃる方もいらっしゃると思いますが、ほかにあります?旧村上ファンドのターゲットになった大豊建設とか?エクセル?三信電気?黒田電気?

・・・・けっこうあるな・・・・

ただ、最近ってどうなんでしたっけ???最近、アクティビストに3分の1以上の株式を取得されたケースってありましたっけ?ないですよね?どうしてないのでしたっけ?

みんなアクティビストに買われたら有事型買収防衛策で対抗するからでしょ?仮にTOBルールが改正されたとして、市場内取引であっても3分の1を超える場合はTOBが必要となったとしても、上場会社は指をくわえてみているんでしたっけ?

そんなわけないでしょ。例えば旧村上ファンドに株式を取得され、ドンドン変更報告書が提出されるとします。保有割合が19%になりました。で、その上場会社は「大丈夫!3分の1を超えては市場で取得されない!」って安心するんですか?

しませんね。みんなアクティビストの保有割合が10%を超えてきたころから有事型買収防衛策の導入・発動を準備し、20%近くになったら有事型買収防衛策を取締役会決議で導入して、20%以上買えないようにするんでしょ?

だから仮に今回のルール改正で市場内取引であっても3分の1を超える場合はTOBが必要としても、現実的な企業防衛対応は何も変わらないということではないでしょうか?

さきほども書きましたが、これで怖いのは上場会社が「TOBルールが改正されたから買収防衛策は必要ない」と考えて配してしまったり、そもそも検討すらしなくなってしまったりすることです。特に規模の小さい会社は要注意です。得体のしれない方々による買収も横行する雰囲気があります。だからちゃんと事前警告型買収防衛策を導入しておくべきなのです。

この改正って、今の日本ではあまり機能しないと思いますよ。そもそも3分の1までは市場で買えるわけですから、3分の1も取られたら実質支配されたも同然です。最近は時価総額が3,000億円くらいあっても1/3程度なら買うアクティビストもいます。時価総額の大きい会社は買収防衛策を導入しにくいので、平時から株価をちゃんと上げるための抜本的な施策をやっておくべきです。

TOBルールが改正されるから安心だぜ!などと思わずに、自分の身は自分で守ると考えて、日頃からやるべきことをやっておくべきです。

 

 

 

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