2019年07月25日

住友不動産の保有目的

今日の日経17面に今どき持ち合い、住友不動産の我が道という記事がありました。記事には、

住友不動産は2019年3月期に約290億円を投じて政策保有株式を49銘柄も増やした。このほとんどは株式を相互保有する、いわゆる「持ち合い」とみられ、同社の株主となっている上場企業は200社を超えたようだ。18年改訂のコーポレート・ガバナンスコード(企業統治指針)に逆行するような新たな持ち合い構造の構築は、連続最高益の業績があってこそだが、投資家は冷めた目でみている。

へえ、今どきすごいですねえ。290億円も投じて持ち合いをあらたにやる「気合の入った会社」がいらっしゃるんですねえ。すごいです。

住友不動産は「一概に好ましくないと断じるべきではない。安定的に継続して事業を進めるために、当社にとって持ち合いは有益と判断している」(副島伸一広報部長)と説明する。

いいですねえ。「持ち合いは有益!」 すばらしい!住友不動産は「安定的に継続して事業を進めるため」に持ち合いをしているのですね。では、住友不動産は有価証券報告書で保有目的をどう書いているのでしょうか?一部抜粋します。

ほんの一部を抜粋しました。もっとたくさんあります。「賃貸事業、販売事業ほか各事業に関する取引関係の維持・強化を通じて、当社の中長期的な企業価値向上に資するため」という目的ですね。ま、投資家は「株式を保有することで、なぜ取引関係の維持・強化につながるのか?」といういつもの質問をしてくるでしょう。

つながる場合もあるでしょ。業務資本提携とか。業務提携だけではなく、お金もちゃんと入れることで真剣に提携の中身を検討し、着実に実行する効果があると思います。ただ、持ち合いという業務資本提携でもない行為が本当に中長期的な企業価値向上に資するかどうかはわかりません。むしろ住友不動産の広報部長さんがおっしゃっているように「安定的に継続して事業を進めるために、当社にとって持ち合いは有益」のほうがしっくりきます。

つまり、会社の短期的な利益や株価上昇を狙ったよからぬ投資家の声に惑わされずに、安定的に事業を継続させ、中長期的な企業価値向上に経営陣がまい進できるようにするために持ち合いをしている、ということです。まともな投資家の声であればちゃんと聞く必要があります。聞いたうえで経営に反映させるかどうかは別ですが。そういうまっとうな投資家の声さえもシャットアウトする目的で持ち合いをやっているのならやめたほうがいいです。でも、一部の、しかし声のデカイよからぬ投資家はいます。会社に対して、いやがらせではないか?といった行動をとる投資家もいます。そのような投資家対応のために経営者の時間を割かれるくらいなら、ちゃんと持ち合いをやって会社同士で会社を守った方が得策と言えます。投資家に冷めた目で見られてもかまわないでしょう。結果さえ出していれば。

持ち合いは悪か?悪ではありません。必要悪でもありません。会社を守るために編み出された術です。

 

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