2019年08月30日

持ち合い株を削減すべきか否か

今日の日経の社説「企業は政策保有株の説明責任を果たせ」にはおもしろいことがいろいろと記載されています。まず紙面ではなく、電子版で見ると、住友不動産がデカデカと出てくるのには笑いましたが・・・。持ち合いの代表企業にされてしまったのですねえ。でもいいと思いますよ。だって住友不動産はポリシーを持って正々堂々と持ち合いしてるんですから。

No.639 我が道を行く住友不動産

No.641 住友不動産を批判する人は自社の企業防衛方針を明確に答えられるでしょうか?

記事を抜粋しながら私のコメントを記載します。

日本の上場企業が取引先の株式を持つ政策保有株の慣行に対し、投資家から疑問の声が強まっている。収益上のメリットが見えづらく、相手と互いに持ち合えば経営者の自己保身につながるからだ。企業は保有する合理性を数字で説明するとともに、説明のつかない株は削減を急ぐべきだ。

そもそも持ち合いは収益上のメリットを考えてやっている行為ではありません。よからぬ株主対策としてやっていますから、投資家から疑問の声が上がるのはわかります。

定量的な保有効果は、例えば取引先からの受注額といった具体的な数字で示す必要がある。それがわかれば、保有を続けるコストやリスクと比較しながら政策保有株の合理性を判断できる。6月末に出そろった3月期決算企業の開示をみると、不十分と言わざるを得ない。多くが「事業関係を維持するため」といった曖昧な理由にとどまっている。主要企業の開示内容を調査したゴールドマン・サックス証券は「ほぼ全ての企業が定量的な保有効果を記載していない」と指摘した。

持ち合いの定量的な効果を測るのは不可能ですね。なぜなら定量的な効果を期待して持ち合いをしている訳ではないので。私は持ち合いの定量的効果を記載するのは、虚偽記載ではないかと思います。

多くの企業は「営業秘密にあたる」として定量効果を記載していない。経営者は株主から預かった資金で事業を営んでいる。その使い方としての政策保有株の合理性が問われているのに「効果は秘密だ」では、株主は納得できない。企業は定量効果を明確に開示し、説明責任を果たすべきだ。

持ち合いの定量的効果が営業秘密にあたるのではなく、取引先との取引金額が営業秘密にあたるのではないでしょうか?効果は秘密だと言っているのではなく、個別の取引先との取引金額を開示することはできないと言っているのでしょう。でも企業サイドの言い方も悪いと思いますけどね。

さて、本当に事業会社は持ち合いをやめるべきでしょうか?なぜ持ち合いを始めたのかを、この機会にきちんと考え直すべきだと思います。定量的な効果を期待して持ち合いをしている会社など聞いたことがありません。「うちと取引してください!」と言って接待します。接待の定量的効果などありません。取引を獲得するのに接待がどの程度貢献したかなどわかる訳がありませんし。持ち合いも接待と一緒です。「接待もするし持ち合いもする」という全方位営業なんですよ。

もちろん、営業取引以外の目的もあります。単に持ち合いです。何のための持ち合いか?会社をよからぬ株主から守るためです。買収防衛のために持ち合いをやっている会社は、今は少ないです。なぜなら持ち合いで過半数の安定株主を確保している会社などほとんどありませんから。買収防衛目的ではなく、全ステークホルダーの利益のためではなく、自分だけの利益のために会社を食い物にしようとする株主対策です。

さて、本当に持ち合いをやめますか?持ち合いをやめた後の会社経営について想像したことがありますか?けっこう悲惨ですよ。

持ち合いは経営者の保身ではありません。もう一度言いますが、会社を守るための行動です。

 

 

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