2019年12月11日

キリンHD 持ち合い株360億円売却

2019年12月10日の日経19面にキリンHD、持ち合い株360億円売却 1~9月 自社株買い原資にという記事がありました。記事によると、

1~9月に持ち合い株360億円分を売却した。2021年までの3年間に500億円程度の売却を目安としており、この7割を達成した計算だ。売却資金は11月に発表した1000億円の自社株買いの原資とし、資本効率を高めながら、株主還元を強化する。1~9月には19銘柄を売却し、このうち13銘柄の保有はゼロになった。18年12月末時点で39あった政策保有株を26まで削減した。キリンHDは三菱系だが、売却した銘柄の中には三菱系も含まれるという。

だそうです。では皆さんも「よっしゃ!うちも持ち合い株を売却して株主還元強化やー!」と行動するのが正しいでしょうか?

会社によりけりです。キリンの時価総額は約2兆3,000億円です。株主構成は以下のとおりです。

外部から見た安定株主比率は、法人株主7.29%、明治安田生命3.75%の合計11.04%です。上位に登場していない銀行や生損保、持株会などもいるでしょうから、実際にはもう少し高いでしょう。が、15%もないでしょう。時価総額を考えればこれくらいの水準だと思います。

キリンは安定株主で防衛できない会社です。持ち合いによって安定株主比率を1%高めるには、時価総額2兆3,000億円×1%=230億円の資金が必要です。たった1%高めるために230億円です。ムダですね。その金を還元に使って株価を高める方が防衛効果はあると思います。

でも時価総額がキリンほどない会社にとって安定株主対策は重要です。自社がどういうステージにある会社なのか、持ち合いをやめて還元に回したほうが防衛効果が高いのかなどなどをよーく考えてから持ち合いをやめるかどうか決めるべきです。

なお、これからは安定株主比率があと1%高かったら!と1%に泣く時代になるかもしれません。自社にとって最低限確保した安定株主比率は?その根拠は?安定株主対策以外の防衛手段は?を日々議論していくことが重要ではないでしょうか?

 

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