2020年01月08日

敵対的TOBを仕掛けるということ

東芝が完全子会社化を目的にTOBをかけているニューフレアテクノロジーに対して、HOYAが敵対的TOB(予)を仕掛けていますが、中には「HOYAが東芝に嫌がらせをしているだけ?」「東芝がYesと言わないと成立しないのになんで?」というご意見があります。

さて皆さん。敵対的TOBって簡単に仕掛けられるものだと思いますか?ちがいますね。敵対的TOBを仕掛けた会社は世間から「乗っ取り屋」「敵対的買収者」と日なされるリスクを覚悟したうえで仕掛けています。ま、最近では乗っ取りと非難する声は少なくなっていますので、以前ほどのリスクはないと言えますし、買収者の腹の括り方次第と言えます。

しかし最も重要なことは、敵対的TOBに協力してくれるアドバイザーがいるかどうかです。TOBをかける際には証券会社がTOB代理人を務めますが、敵対的TOBにおいて証券会社が協力するかどうかもポイントなのです。今回HOYAがニューフレアテクノロジーに対して仕掛けた敵対的TOB(予)において、FA及びTOB代理人は大和証券が務めています(正確にはTOB代理人は務める予定ですね)。

当然ですが、HOYAが東芝と敵対関係になるのと同時に、大和証券も東芝とは敵対関係になるでしょう。今後、大和証券は東芝との間でビジネスをすることは困難になるでしょうね。M&A、エクイティファイナンスの引き受け、社債引き受けなどなどのビジネスが飛ぶ可能性があります。ま、大和証券はそのようなビジネスが飛んでも構わない、もしくは、飛ぶほど東芝との間でビジネスは発生していない、と考えたのでしょうね。

また、大和証券は主幹事をつとめる会社からも「おたくは敵対的TOBに加担するのか!」と非難されるリスクもあります。「乗っ取りに手を貸すのか!」とおっしゃる古いタイプの経営者もいらっしゃることでしょう。

敵対的TOBを仕掛ける際には、いろんな登場人物がいます。それら登場人物がいろんなリスクを背負って敵対的TOBを実行し、協力しているのです。生半可な経営判断ではありません。コストもかかります。嫌がらせなどで実施するようなもんではありません。

以下の記事をご覧ください。

大和証券・中田社長「セゾン会員にスマホ証券」 「敵対的M&Aの支援も」

記事で大和証券の中田社長は「「会社は経営陣だけのものでない。買収が結果的に双方のステークホルダー(利害関係者)にとって望ましいと判断できるのであれば、外形的に『敵対的TOB』とみなされる案件も引き受けることはある」とおっしゃっています。証券会社も敵対的TOBに対して躊躇なく協力する時代になりました。

この記事について詳しく書いたコラムは以下のとおりです。申し訳ありませんが、有料記事です。証券会社が敵対的TOBに協力するに至るまでなどをまとめています。

No.742 大手証券が敵対的TOBを支援する時代~もうずいぶん前からです~

 

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